君とボクの二度目の冒険 〜転生した少年と幼馴染の勇者が、魔王の孤独を救うまで〜   作:屠龍

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第二十七話 生存する為の装備――歩き、食べ、眠るために――

 第二十七話 生存する為の装備――歩き、食べ、眠るために――

 

 僕とミレーヌとシグレさんが最初に向かったのは、野外活動用品店だった。

 キャンプ道具を取り扱う店と思えばいいのだろう。

 

 店先には丈夫そうな縄や木製の杭、折りたたまれた布が吊るされていて、扉を開けた瞬間、乾いた木と革の匂いが鼻をくすぐった。

 中には棚が所狭しと並び、袋詰めされた干し肉や薬草、大小さまざまな革袋や水筒が整然と並んでいる。

 武具屋のような華やかさはないけれど、その代わり、ここには冒険者が生き延びるための現実がぎっしり詰まっているように見えた。

 

 「初心者が陥りやすいのは、武具に金をかけすぎて準備を怠る事だ。確かに武具は重要だが、冒険の大半は歩き、食べ、眠る事にある。これを疎かにしてはいざというときに実力を発揮できない」

 

 そう言って、まずシグレさんは僕とミレーヌに、野外活動道具を背負うのに手頃なリュックを見繕ってくれた。

 今回は森を抜ける予定で、砂漠地帯へ行くにはまだ先になる。だから網のついた緑色のリュックが選ばれたらしい。

 手に取ってみると見た目より軽く、肩紐の裏には汗を吸いにくい布が縫い付けられていた。こういう細かい工夫が、長旅では効いてくるのだろう。

 

 「この網はなんですか?」

 

 「木の葉を取り付ける為のものだ。ゴブリンや狼は体温や匂いで我々を判別するから、あまり効果はない。だが敵はモンスターばかりではないからな」

 

 なるほど、用心に越した事はないというわけだ。

 敵は山賊や盗賊のような人間も含むのだから。

 

 「それと、これが付いているかで生存率が劇的に変わる」

 

 そう言って見せられたのは、着脱式の魔法具だった。

 一瞬でリュックを背中から外せる道具らしい。

 小さな金具のような見た目なのに、指先で触れるとほんのりと温かく、魔力が込められているのがわかる。

 

 「リュックを背負って戦闘は出来ないだろう? 戦闘時は邪魔だから、すぐ離せるようにしたほうがいい」

 

 確かに、リュックを背負って戦うのは難しいだろう。

 重いだけじゃなく、手足の動きも阻害される。

 これはシグレさんに教わるまで気づかなかった。

 

 「テントは一人が代表して持つが、軽いに越した事は無い」

 

 そう言って取り出したのは簡易テントセットだった。

 強風にも耐えられるのに軽いという、夢みたいな装備だ。

 前世の軍隊なら即採用レベルの強靭な作りで、しかも手軽に組み立てられる折り畳み式。上手く梱包すれば二リットルのペットボトルほどの大きさに収まるらしい。

 手渡されて持ってみると、確かに驚くほど軽い。これなら長旅でも負担は少なそうだった。

 

 次に見せられたのは床に敷き、上からも被れる毛皮だった。

 外側は羊毛で濡れに強く、内側には毛皮が裏打ちされていて、地面からの冷気と上からの冷えの両方を防いでくれる。

 前世なら寝袋という便利な物があったが、敵襲に備えてすぐ動ける一枚もののほうが良いのだという。

 指先で触れると、想像以上に厚くて柔らかい。雨の夜や冷え込む山道では、こういう一枚が命を分けるのかもしれない。

 

 それから食事キット。

 ナイフとスプーンと飯盒。

 水筒も重要らしい。適切な水分補給がすぐ出来るように、取り出しやすいものを勧められた。

 さらに、防水加工された折りたためる革袋。こちらは水の補給が困難な時の予備の水入れになるらしい。

 

 食料も見せられた。

 燻製したソーセージや塩辛い干し肉、砂糖漬けの果物。

 塩だけでなく砂糖も保存に使えるらしい。

 塩と油と砂糖は短時間で補給できる高カロリー源で、行軍には必須だという。

 棚に並んだ干し肉や果物は地味に見えるけれど、きっとこういうものが一番頼りになるのだろう。

 

 さらに手斧、ナイフ、鉈。

 あると便利、ではなく、ほぼ必須らしい。

 薪を割り、草を掃い、地面に穴を掘るのにも使える。消毒すれば簡易手術も出来るし、最後の武器にもなる。

 

 医薬品も当然必要だ。

 乾燥した薬草、消毒薬、解熱剤などを小分けしたセット。

 どれも戦場で見たものに似ていて、思わずあの雨の村の光景が脳裏をよぎった。

 

 最後にトイレ用品。

 自然に戻るトイレットペーパーで、匂いもある程度遮断してくれるので敵に気づかれにくいのだという。

 

 「……まあ、こんなものだろう」

 

 「随分とあるんですね」

 

 思っていた以上に、冒険というのは生活そのものだった。

 戦う前に、まず歩き続け、飢えず、凍えず、病気にならない事が大切なのだ。

 

 「ト、トイレは……その」

 

 トイレ用品のところで、ミレーヌが口ごもる。

 ……まあ、そうだろうね。

 男は簡単だけど、女の子にはきつい。

 

 「心配するな。すぐ慣れる」

 

 「……はい」

 

 そう言って笑うシグレさんと、顔を伏せて恥ずかしがるミレーヌ。

 頬まで赤くなっているのを見ると、少し気の毒になる。

 けれど同時に、こういう現実まできちんと教えてくれるシグレさんは、本当に面倒見のいい先輩なのだと思った。

 女性冒険者が少ない理由の一つなのかもしれない。

 

 けれど、冒険者として生きるには、そういう不便さも越えていかなくてはならないのだろう。

 

 シグレさんは店の中をひと通り見回すと、あっさりと言った。

 

 「それでは、メインの武器と防具だな」

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