君とボクの二度目の冒険 〜転生した少年と幼馴染の勇者が、魔王の孤独を救うまで〜   作:屠龍

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第三十二話 機先を制する――夜襲の狼煙――

 第三十二話 機先を制する――夜襲の狼煙――

 

 戦いは主導権を握ったほうが勝ちだと、ロイド教官が口を酸っぱくして言っていた意味がわかる。

 敵襲に怯えながら進む旅路は嫌なもので、緊張が続いた。

 その横で相変わらずセシルさんは欠伸をしていて、緊張感のかけらもない。

 僕とミレーヌが、セシルさんほど豪胆になれる日は来るのだろうか。

 

 田園風景から森の道に入り、昼間でも視界が悪くなる。

 頭上を覆う枝葉が陽の光を遮り、道の先は薄暗く沈んでいた。

 湿った土の匂いと、風に揺れる木々の葉擦れの音が耳につく。

 僕は荷馬車の車輪が立てる音と、人間が歩く音の両方が気になって緊張状態が続く。

 ミレーヌも震えていて、しきりに辺りを見回していた。

 僕はミレーヌの手に手を重ねた。

 

 「ひゃっ!?」

 

 ミレーヌが可愛らしい悲鳴を上げると、皆の視線が僕とミレーヌに集中する。

 

 「大丈夫。僕も怖い」

 

 何が大丈夫なのか自分でも変だと思うけど、緊張しているというのはミレーヌと同じだよと告げると、ミレーヌが僕の手を握り返してくれた。

 その手も少し冷たく、僕と同じくらい力が入っていた。

 

 その日の夜。

 

 シグレさんと代わって商団の見張りに立つと、僕のほかに数人の見張りが、商団の荷馬車と商人を内側にして円陣を組み、夜の森を見つめる。

 焚火は小さく抑えられ、松明の火だけが赤く揺れていた。

 夜の森は昼とは別の顔を見せ、木々の隙間の闇がどこまでも深く見える。

 少し離れた場所で枝が鳴っただけでも、胸が跳ねた。

 

 見張りに慣れていない僕とミレーヌの時間を狙ってくるだろうとセシルさんが言っていたので、セシルさんとシグレさんとミレーヌは鎧と武器を付けたまま目を閉じている。

 この森を抜けると、襲撃したあと荷馬車を奪って逃げるには厳しい荒れた道になるから、今日か明日あたりとシグレさんは予想していた。

 

 僕はセシルさんを真似て欠伸をした。

 如何にも旅慣れていないように見せる為だ。

 僕がちらりとテントを見ると、山賊の仲間の反っ歯男がテントから出ていくのが見えた。

 一見、草むらでトイレに向かったと見えなくもないが、油断なく監視する。

 月明かりに照らされた横顔は、妙に落ち着いていて、それがかえって不気味だった。

 

 反っ歯男が月夜に向かって口笛を吹いた。

 

 それと同時に、森を走る物音。

 乾いた枝を踏む音がいくつも重なり、闇の奥から殺気が一気に近づいてくる。

 

 「山賊だ!!」

 

 僕が大声で叫ぶと、シグレさんとセシルさんとミレーヌがテントから飛び出し、寝ていた商人も手に武器を持って立ち上がり、松明を持って荷馬車の周りを明かりで照らす。

 橙色の火が一斉に揺れ、荷馬車の影が地面に長く伸びた。

 それと同時に山賊が森から飛び出してきたが、奇襲に失敗したのを見て愕然としていた。

 

 山賊は、攻撃の優位の確保に失敗したのだ。

 

 山賊の数は三十人ほどで、森で動きやすいレザーアーマーとショートソードで武装していた。

 こちらは金髪と大斧使いと反っ歯男が山賊側なので、それ以外を合計すると僕を含む護衛が七人と武装した商人が二十人。

 

 数だけなら互角だ。

 けれど戦いに慣れない商人は荷馬車を守るのに集中しているから、護衛七人で三十人を相手にする計算になる。

 

 「ユキナとミレーヌは援護に徹してくれ!! 山賊は私とセシルで片をつける!!」

 

 シグレさんが太刀を手に山賊へと突っ込んでいく。

 事前に決めた作戦では、人間を相手に戦った事のない僕とミレーヌは戦闘で足手まといになりかねないので魔法で援護。

 援護を受けたシグレさんとセシルさんが山賊のボスを見つけて倒す。

 そうすれば頭を失った山賊はばらばらになって逃げていくだろう。

 

 「群れで弱い者に襲い掛かるしかない賊など、恐れる事は無い!!」

 

 そう言って皆を叱咤するシグレさん。

 山賊のなかには昨日まで兵士だった逃亡兵も混じっているから腕前が劣る訳ではないが、山賊同士で訓練もしていない寄せ集めなので集団戦には弱い。

 

 「はああっっ!!」

 

 シグレさんが気合の叫びと共に刀を振るうと、山賊の一人が袈裟懸けに切り倒される。

 返す刀で背後の一人を切り殺すと、山賊が怯んだのか背を向ける者まで現れた。

 

 シグレさんは手練れの技で、山賊の着るレザーアーマーが覆っていない部位を切り、戦闘力を奪っていく。

 他の傭兵が泣き叫ぶ山賊を確実に仕留めていく。

 数こそ劣るものの、戦いに慣れた傭兵と冒険者によって山賊は一人ずつ倒されて行った。

 

 「おっと逃がさないよ」

 

 セシルさんが荷馬車の隙間から短弓を手に、逃げる山賊の背中を射る。

 商人達が松明で照らし、月明かりも明るいので標的がよく見えるのか、ほぼ外れる事無く射殺されて行く。

 他の傭兵達も慣れた様子で切り、叩き、魔法で吹き飛ばしている。

 奇襲失敗の時点で、山賊に勝ち目は無かった。

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