君とボクの二度目の冒険 〜転生した少年と幼馴染の勇者が、魔王の孤独を救うまで〜 作:屠龍
第三十四話 告白前夜――アルムからカク村へ――
第三十四話 告白前夜――アルムからカク村へ――
山賊の襲撃から十日後。
商団は目的のアルムの街に着いた。
商団はここで一晩休み、新しい護衛を雇う事になる。
ここで僕達は商団とはお別れだ。
山賊の奇襲を防いだという事で、僕達には元々の報酬に上乗せされた報奨金が支払われる。
「お陰で助かったよ。君たちを信用して良かった」
恰幅の良い商団長がそう言って笑顔で銀貨の入った袋をシグレさんに渡す。
シグレさんは笑顔で受け取り、セシルさんも愛想笑いを浮かべていた。
信用していなかったのはお互い様なので余計な事は言わない。
少なくとも当人の前では。
☆☆☆
「ぷは~仕事の後の一杯は最高だねえ」
そう言って木のジョッキ一杯のギムニを飲むセシルさん。
ギムニはかなり強い蒸留酒なのにジョッキはすぐに空になった。
その飲みっぷりを呆れた様子で見つめながら、つまみの塩豆を摘まみ、アクラという甘くて飲みやすいフルーツワインを飲むシグレさん。
「早速だが分配金だ。上乗せされた報酬を頭数で割るぞ」
「でも僕は何の役にも立てませんでした」
「誰でも初めはあんなものだ。私も初めて人を殺めたときは似たようなものだったぞ」
そう言って公平に分けてくれるシグレさん。
受け取ったあと僕とミレーヌは、シグレさんへの借金をいくらか返す。
本当なら一括で返済したいけど足りない。
魔法付与の武具は高いのだ。
だけど、あの武具が無ければ僕は死んでいたはずで、生きていないと何もできないと思い知らされた。
「本来なら何日か休みを取りたいが、ゴブリンの被害にあっている村の事を考えるとそうもいかん。食事のあと出発するぞ」
「はい」
「わかりました」
「ま、仕方ないか」
シグレさんの言葉に僕とミレーヌとセシルさんが答えた。
セシルさんはもっと不満を言うかと思ったけど言わない。仕事を引き受けたからには契約を果たすという、冒険者稼業の常識だからだ。
それなら最初から直接向かえばよかったと思うけど、途中で出てくる山賊も放っておけないし、何より荷馬車に重い荷物を乗せて貰って体力を蓄えるのも重要だ。
旅慣れない僕とミレーヌがいなければ、きっとシグレさんとセシルさんは馬に乗って直接村へ行ったのかもしれない。
「村は大丈夫でしょうか?」
僕が村に向かう遅れを気にしていると、シグレさんが頷きながら答えてくれる。
シグレさんは厳しい雰囲気だけど、本当はとてもやさしい人だとここ数日でわかった気がする。
「他の冒険者が先発しているから心配はいらない。村に着いてもほぼ決着がついた後だろう。ゴブリンの死体の後片付けに動員されるかもしれない」
なるほど。
確かに僕みたいなひよっこが行くより先に、仕事がない鉄級とか青銅級冒険者が先発しているはずだから、もう大勢は決しているだろう。
シグレさんとセシルさんは、旅慣れない僕とミレーヌを心配して付いてきてくれただけで、特に急ぎではなかったようだ。
こんなにして貰えるなんてありがたいけどいいのかな。
そう思っていたが、ミレーヌもいるので聞かない事にする。
僕は兎も角、ミレーヌは保護者同伴で冒険なんて嫌だろうからね。
ミレーヌは結構負けず嫌いだから、自分が未熟で気を使われたと知ったら無理をするかもしれない。
僕も前世でずっと病院の先生や看護師さんのお世話になるだけの人生だったから、気持ちは痛いほどわかるけど、シグレさんとセシルさんがいなかったら僕とミレーヌはあの夜死んでいた。
人を殺せない。
これはこの世界だと命取りなんだ。
冒険者だけでなく兵士も直接人間を剣や斧で叩き殺し、場合によっては拳で殴り殺す。
それが当たり前の世界。
この世界で生きていくなら避けては通れない道。
今一番必要な事は、生き残る術を学ぶこと。
この世界の戦い方を知る事。
その為には勉強が必要だ。
文字を覚え、計算を学び、地理を覚える。
武器の扱い方を学び、戦術を学ばなくては。
シグレさんとセシルさんがいつまでも面倒を見てくれる訳じゃない。
村への旅の間に学べることは学んでおこう。
☆☆☆
昼前にアルムの街を出発し、翌日の夕方には目的地のカク村にたどり着いた。
街道沿いにあったので思ったより早く着いた。
カク村の周囲には簡易的な柵があり、入口には見張り小屋がある。
中に入ると広い畑が広がっており、農作業をしていた村人達が僕らに気付いて駆け寄ってきた。
その中の一人の男性が前に出る。
歳は五十代半ばくらいだろうか。白髪交じりの髪の男性だ。
彼はこの村の村長らしい。