君とボクの二度目の冒険 〜転生した少年と幼馴染の勇者が、魔王の孤独を救うまで〜   作:屠龍

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第四十七話 これからの事――信頼できる仲間――

 第四十七話 これからの事――信頼できる仲間――

 

 異世界フォーチュリアは、地球より二時間くらい早く夜になる。

 自転の違いなのか、それとも世界の成り立ちそのものが違うのかはわからない。

 ただ、子どもの頃から夜の訪れが早くて、もっと遊びたいと不満に思ったことは何度もあった。

 

 夜が長ければ、夜行性のゴブリンのような魔物も活動しやすい。

 これも奴らが活発な理由の一つなのかもしれない。

 もっとも、人間の側も夜になれば休む。

 蝋燭や油は高価だし、早く寝るのは、前世のガス灯などが普及する前の時代と似ている気がした。

 

 ただ、冒険者の宿は少し違う。

 見習いの魔法使いたちが仕事として光の魔法を使い、宿屋や酒場を照らしているので、まだ宵の口だ。

 廊下にも食堂にも淡い明かりが満ちていて、窓の外が暗くなっても人の気配は途切れない。

 風呂上がりの温かい空気と、階下から漂ってくる肉料理の匂いに、ようやく旅が終わったのだという実感がわいてきた。

 

 一旦解散して風呂に入り、旅の汚れを落としたあと、僕とミレーヌ、シグレさんとセシルさんは夕食を一緒にした。

 

 「さっきの話の続きだけどさ。ユキナとミレーヌがよければ、あたい達と一緒に冒険にいかないかい?」

 

 セシルさんがそう切り出すと、シグレさんも頷いた。

 とても嬉しくてありがたい。

 でも、いつまでも面倒を見てもらっていて良いのだろうかという遠慮もあった。

 

 「私もセシルも、二人が良いなら共に冒険してもいいと思っている。青銅級になったとはいえ、まだ危なっかしい。青銅級は一番死にやすいのだ。受けられる依頼が増える分、力を見誤って命を落とす者が多い」

 

 「でも、鉄級のお二人にいつまでも甘えているのも申し訳ないですし」

 

 「ユキナとミレーヌは、もっと強くなれる。だがそれは生き残れば、の話だ。二人が強くなれば、私とセシルも安心して背中を預けられる。信頼できる仲間は、金塊よりも貴重だ」

 

 シグレさんの言葉は静かだった。

 押しつけがましさはなく、ただ当たり前の事実を告げているように聞こえる。

 だからこそ、その言葉の重みがよくわかった。

 僕たちはまだ青銅級になったばかりで、旅も戦いもようやく入り口に立ったにすぎない。

 それでも、そんな僕たちを仲間として見てくれているのだと思うと、胸の奥が少し熱くなる。

 

 「ま、すぐ答えを出さなくてもいいよ。あたい達も一週間くらいは休むしさ。その間に二人で相談して決めな」

 

 セシルさんはそう言うと、ギムニという芋で作られた強い酒を飲み干し、お代わりを注文した。

 ギムニは僕も一度飲んだことがあるけれど、強すぎてとても飲み切れなかった。

 セシルさん、本当にどれだけ酒豪なんだろう。

 

 シグレさんは呆れたようにその様子を見たあと、追加注文のために店員さんを呼び止めた。

 

 「ユキナもミレーヌも、初めての旅で疲れただろう。ゆっくり休むのも冒険者の務めだ。疲れは動きを鈍らせる。常に万全を心がけなくてはいけない」

 

 そう言って、僕とミレーヌの前に鶏のような鳥の丸焼きが、どんと一匹ずつ運ばれてきた。

 鳥の内臓を抜き、高価な香辛料で味付けした挽き肉を詰めて焼いた贅沢な料理だ。

 皮は香ばしく焼け、皿の上で脂がきらきらと光っている。

 湯気と一緒に立ちのぼる匂いだけで、思わず喉が鳴りそうになった。

 裕福な家でも、祝い事でもなければなかなか食べられない。

 

 「私とセシルからのお祝いだ。他にも頼んだから、たくさん食べるといい」

 

 「いっただきま~す♪」

 

 僕が遠慮する前に、ミレーヌがフォークを突き立てて切り分け始めた。

 焼けた鳥の胸から肉汁があふれ、香辛料の匂いが立ち上る。

 その香りに、僕も遠慮するのをやめた。

 

 「いただきます」

 

 肉汁のあふれる鶏肉と詰め物の挽き肉は、胡椒に似た香辛料が効いていてとても美味しかった。

 噛むたびに旨味が口いっぱいに広がって、思わず夢中になってしまう。

 旅の間は保存食や簡単な料理ばかりだったから、こうして温かくて贅沢なものを食べられるだけで幸せだった。

 食べ盛りの僕とミレーヌが勢いよく食べるのを見て、シグレさんとセシルさんが嬉しそうに微笑んでくれる。

 その目は、年下の子供を見守る姉のようでもあり、同じ冒険者を認める先輩のようでもあった。

 

 僕達は本当に良い人たちと巡り合えた。

 こういう縁は、大切にしないといけないだろう。

 安心できるし、学べることも多い。

 何より、僕は二人のことが好きだ。

 強くて、頼れて、でも厳しいだけじゃない。

 こうして何気ない食卓でさえ、僕たちを気遣ってくれる。

 そんな人たちと同じ道を歩けるなら、それはきっと幸運なことなのだと思う。

 

 だから、本当は今すぐにでも返事をしたかった。

 でも、ミレーヌの考えもある。

 僕一人で決めてしまうことじゃない。

 ここまでずっと一緒に来たのだから、これから先のことも二人で決めたい。

 よく相談してから答えようと思い、今夜はひとまず、このごちそうを味わうことにした。

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