君とボクの二度目の冒険 〜転生した少年と幼馴染の勇者が、魔王の孤独を救うまで〜   作:屠龍

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第六十九話 墓掘り人夫の正体

第六十九話 墓掘り人夫の正体

 

 ゴブリンの洞窟から飛行の魔法で一時間もかからずにホレ村に到着した。

 

 早速シムさんを探そうと広場に向かうが、空から飛んできた僕達を見ていたのだろう。

 シムさんと数人の村人が、すでに広場に集まっていた。

 

 「いったいなんじゃあの魔法は? あんたら何者じゃ?」

 

 人が飛ぶところなんて見たことが無いだろうし、僕だって空を飛んだのは初めての経験だった。

 本当なら、もっと感慨深く空を飛んだ感想を語るところだ。

 

 だけど、今はそんな余裕は無い。

 

 「僕達はただの冒険者です。それより大変な事がおこってるんですよ!!」

 

 シムさんの質問を遮って、僕は事情を説明する事にした。

 

 「この村で疫病で死んだ人は何人ですか?」

 

 「昨日また一人死んで十人じゃ」

 

 「その人は埋葬されたんですね。土葬ですか?」

 

 「うむ。疫病が流行ってるから火葬にしたいが、薪が足りないんじゃ」

 

 森にオーガが出没するから薪を取りに行けない。

 つまり病死した村人は、土葬で葬るしかない。

 

 もしオーガが森で発見されていなければ、薪を使って火葬にしたはずだ。

 

 これで全てが繋がった。

 

 オーガは、わざと村人に姿を見せたのだ。

 森へ行けなければ薪が手に入らず、疫病の死者は墓地に埋めるしかない。

 

 つまり、死体が墓に集まる。

 

 この村はオーガやゴブリンにとって、食料を蓄える場所にされていたんだ。

 

 「どうしたんじゃ、難しい顔をして」

 

 これをシムさんにどう説明すればいい。

 説明して納得してもらえればいいが、どちらにせよこの一件にオーガが関係している事は確かだ。

 

 それに、病気が収まらなければ土葬される遺体は増えていく。

 

 まずは病気をなんとかしないと。

 

 流行り病というと、水が影響している可能性がある。

 ここは異世界フォーチュリアだから前世の常識がどこまで通じるかはわからない。

 

 でも、一つずつ可能性は潰していこう。

 

 「流行り病にオーガが関係している可能性があります。水場を見せてもらえませんか?」

 

 「耕作と洗濯の水は沢から引いておる。飲み水は井戸を使っておるが」

 

 「では井戸をお願いします」

 

 まず疑うのは飲み水からだ。

 早速、広場にある井戸へと案内してもらった。

 

 井戸水を汲んで見るが、濁りや嫌な臭いはしない。

 

 「この水はそのまま飲んでいますか?」

 

 「いや、普段は煮沸して飲んでおる。しかし最近薪が足りないので、そのまま飲んでおる」

 

 ここでも薪が無い事が影響している。

 

 ただ、それだけですぐ病気が広がるだろうか。

 ギルドに依頼があった日から逆算して、今日でまだ二週間ほどしか経っていない。

 

 村の薪が、そんなにすぐ無くなるとも思えない。

 病気になるには早すぎる。

 

 僕がそう考えていると、横からクヌートが井戸水を覗き込んだ。

 そして顔を曇らせると、僕の袖を引っ張ってシムさんやミレーヌ達と離れていく。

 

 僕とクヌートの事を、ミレーヌ達が不思議そうな顔で見ていた。

 

 「どうしたのクヌート?」

 

 「あの井戸水には、魔の毒素を吐き出す魔法の微生物が含まれている。あの水を飲めばすぐ病気になる。自然界には発生しない生物だから、誰かが混入させたと見るべきだろう」

 

 「それはわかったけど、どうしてみんなの前で言わないの?」

 

 「ハーフエルフの言葉を人間が聞き入れると思うか?」

 

 「僕だって人間だよ?」

 

 「ユキナはハーフエルフってだけで俺とフェリシアを差別しない変わり者だからな」

 

 それは褒められているのだろうか。

 

 けれど、クヌートの声には諦めに似た響きがあった。

 僕はミリアちゃんの事を思い出す。

 

 ハーフエルフだから信じられない。

 そんな理屈を、僕はまだ飲み込めなかった。

 

 「だとすると、村人の誰かがオーガに殺されていて、その被害者にオーガが化けていると思っていいのかな?」

 

 「そう考えていいと思う。問題は誰がオーガに取って代わられているかだな」

 

 オーガは、殺した人間に化ける事が出来る。

 だが完全ではない。

 

 変身は長く維持できず、普段と違う行動を取れば周囲に怪しまれる。

 

 そう考えると、ほぼ一日農作業を行う農民は不自然だ。

 熟練の農民と同じ動きなど、オーガに出来るとは思えない。

 

 誰にも目を付けられない状態。

 村の中にいながら、ある程度一人で動いても不自然ではない人物。

 

 老人や浮浪者。

 あるいは、普段から人目につきにくい仕事をしている者。

 

 「村の人を全員広場に集めて貰っていいですか?」

 

 「どうしてだい?」

 

 僕のお願いに、シムさんが当然の質問をする。

 

 迷ったけど、僕には上手く嘘を付く演技力は無い。

 正直に言う方がいい。

 

 「もしかしたら、村人の中に魔物がいるかもしれないからです」

 

 広場にいたシムさん達がざわめいた。

 

 いきなり何を言い出すんだろうという顔だ。

 それはそうだろうと思う。

 

 だけど、ゴブリンの洞窟で何があったのか説明するだけでは信じて貰えない。

 村の皆の前でオーガの正体を暴くのが一番早い。

 

 僕の言葉に半信半疑ながら、村人が集まってきた。

 

 二百人以上いるので、一人ずつ調べて行くのは骨がかかる。

 そう思っていた時、クヌートが僕に耳打ちする。

 

 「俺なら簡単に見つけられる」

 

 「でも二百人以上いるよ。どうするの?」

 

 「魔法を使う。まず邪悪な考えを持つ者を選別しよう」

 

 オーガやゴブリンは邪悪な思考を持っている。

 人間にも悪意を持つ者はいるが、魔物ほどはっきりと反応する存在は少ないらしい。

 

 クヌートが全員を横一列に並ぶように言うと、嫌々ながら皆は横一列にならんだ。

 

 全員が横一列に並んだのを確認して、クヌートが魔法を唱える。

 

 「我に敵意を持つ者、汝の魂を示せ。センス・エネミー」

 

 クヌートが呪文と共に印を結ぶと、村人全員に光が吸い込まれる。

 

 殆どの村人には変化が無かった。

 だが、数人の村人の身体から黒い霧が発生した。

 

 「今、黒い霧が出た人は前に出てください」

 

 そう言った瞬間、一人の男が列から飛び出した。

 

 手にしているのは、墓掘り用の大型のショベルスコップだった。

 

 「クヌート!!」

 

 僕は剣を抜いて、クヌートを庇う。

 

 男は身体の大きさから見ても、かなり鍛えられている。

 墓掘り人夫は一見すると人間にしか見えなかったが、フェリシアがすかさず印を結び魔法を唱えた。

 

 「心を司る闇の精霊。汝の恐れる姿を成せ!! フィア!!」

 

 フェリシアが対象に恐怖を感じさせる精霊魔法を唱えた瞬間、墓掘り人夫が頭を押えて苦しみだした。

 

 彼の頭の中では、精神に異常をきたす程の恐怖が渦巻いている。

 つまり、精神集中が途切れる。

 

 精神集中が途切れた墓掘り人夫は、苦しみながらその正体を現した。

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