君とボクの二度目の冒険 〜転生した少年と幼馴染の勇者が、魔王の孤独を救うまで〜   作:屠龍

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第九十話 大手門奪還

第九十話 大手門奪還

 

 僕とミレーヌ、そして仲間たちは、城壁の上に敷かれた石畳の道を走っていた。

 

 目的地は、ルクス城で一番大きく、最も出入りしやすい大手門だ。

 

 大魔導士ベスパルが倒れたことで、ルクス城を覆っていた闇は晴れた。

 混乱していた守備隊も、ようやく統制と士気を取り戻している。

 

 その上で、ルクス侯爵ティニー嬢の命令は苛烈だった。

 

 「ルクス侯爵家とルクス城の名誉を傷つけた妖魔を、一匹残らず駆逐しなさい」

 

 その命令のもと、カチュアさん率いる青騎士団を中心とした精鋭が動き出す。

 

 僕達は、その先頭を走っていた。

 

 大手門を占領していたゴブリン達は、指揮官を失ったせいか、すでに緊張感をなくしていた。

 略奪にも破壊にも加われず、ただ門を守らされていることに飽きているのだろう。

 

 欠伸をしながら武器を肩に担いでいる者すらいる。

 

 「行くよ、ミレーヌ」

 

 「うん」

 

 僕とミレーヌは、貰ったばかりの雌雄一対の剣を抜いた。

 

 赤い宝玉と青い宝玉が淡く光る。

 その光を見た瞬間、不思議と心が落ち着いた。

 

 僕達は一気に踏み込む。

 

 大手門にいたゴブリン達が慌てて振り向いた時には、もう遅かった。

 僕の青い剣が一匹を斬り伏せ、ミレーヌの赤い剣がもう一匹の喉元を貫く。

 

 拍子抜けするほど容易く、大手門は奪還された。

 

 「全員、弓を構えなさい。逃げてくるゴブリンやオーガを殲滅するのよ」

 

 カチュアさんの号令が響く。

 

 青騎士達は大手門の内側へ向け、クロスボウとロングボウを構えた。

 そこは、もし敵に突破された時、四方から矢を浴びせるための空間だった。

 

 別動隊は、いったん陥落した第三砦を奪い返しつつあった。

 銅鑼と太鼓が鳴り響き、ゴブリン達の死体が砦の上から蹴り落とされる。

 

 その異変に、街中で略奪していた妖魔達がようやく気づいた。

 

 だが、遅すぎた。

 

 大魔導士ベスパルを失った時点で、彼らは撤退するべきだった。

 けれど、元々怠惰で衝動的なゴブリン達は、貴重な時間を略奪と破壊に費やしてしまった。

 

 その間に、ルクス城守備隊は息を吹き返していた。

 

 逃げ道を求めたゴブリンとオーガの群れが、大手門へ殺到する。

 

 だが、彼らを待ち受けていたのは、矢の嵐だった。

 

 「こりゃ射的の的だね」

 

 セシルさんがそう言いながら、短弓で矢を連射する。

 

 青騎士達のクロスボウが唸り、ロングボウが次々と弦を鳴らす。

 四方八方から絶え間なく矢を浴びせられ、脱出しようとしたゴブリン達が悲鳴を上げて倒れていった。

 

 大手門の内側は、瞬く間に緑色の血で染まっていく。

 

 「ギャアアア!!」

 

 「グオオオオオッ!!」

 

 逃げようとしたゴブリン達は、矢を受けて折り重なるように倒れた。

 後続の妖魔達は、その凄惨な光景を見て足を止める。

 

 だが、立ち止まれば今度は背後から迫る守備隊に追い立てられる。

 

 逃げ場を失った妖魔達は、城壁を内側からよじ登ろうとした。

 

 そこにも、矢と投槍が待っていた。

 

 体力自慢のオーガは、全身に矢を受けながらも城壁をよじ登ってくる。

 けれど、その先には僕達がいた。

 

 「ファイアボール!! ライトニングボルト!! ヴァルキリージャベリン!!」

 

 体力と気力を回復したクヌートとフェリシアが、大火球と電撃、そして戦乙女の槍を放つ。

 

 焼けただれたオーガの巨体が、次々と城壁の内側へ落下していった。

 さらに青騎士達が惜しげもなく投槍を投げ込む。

 

 流石のオーガも、何本もの槍を受ければよじ登ることなどできない。

 

 一部のゴブリンは家の廃材を盾代わりにして矢を防ごうとしたが、今度は火矢と燃える油を浴びせられた。

 悲鳴を上げながら転げ回るゴブリン達を見て、後続の足が鈍る。

 

 その時、ひときわ大きな影が城壁に取りついた。

 

 オーガの上位種、ハイオーガだ。

 

 身体中に矢と投槍を受けながらも、なお巨大な腕で石壁を掴み、よじ登ってくる。

 血飛沫を散らしながら迫る姿に、青騎士の一人がたじろいだ。

 

 「下がるな!!」

 

 カチュアさんが叫ぶ。

 

 だがハイオーガは、城壁の上の青騎士達へ向けて大きく口を開いた。

 その口の奥に、赤い光が集まる。

 

 「ファイアボールか!!」

 

 巨大な火球が放たれた。

 

 「うわあああっ!!」

 

 青騎士達に火球が命中しそうになった、その瞬間だった。

 

 フェリシアが前に出る。

 

 「マジックシールド!! ルーンシールド!! スピリット・ウォール・ノーム!!」

 

 重なり合う魔法の壁が、青騎士達の前に展開した。

 

 巨大なファイアボールは、フェリシアの作り上げた防御魔法にぶつかり、火花だけを散らして消滅する。

 続けて振り下ろされたハイオーガの腕も、土の精霊の壁に阻まれた。

 

 古代魔法と精霊魔法を同時に使いこなす。

 ハーフエルフのウィザードにしかできない芸当だった。

 

 兵士達は、最初何が起こったのか分からないようだった。

 

 だが、やがてフェリシアが守ったのだと気づく。

 その瞬間、城壁の上に歓声が上がった。

 

 「助かったぞ!!」

 

 「すごい魔法だ!!」

 

 「ありがとう、魔法使い殿!!」

 

 「え? え? ええ?」

 

 フェリシアは戸惑い、頬を赤くする。

 

 今まで蔑まれることの多かったハーフエルフのフェリシアが、人間の兵士達に感謝され、称えられていた。

 

 クヌートが一瞬だけ目を見開く。

 そして、誰にも聞こえないくらい小さく呟いた。

 

 「……よかったな、フェリシア」

 

 その光景を見て、僕の胸にも熱いものがこみ上げた。

 

 ここにいる者は、人間でもハーフエルフでもない。

 ルクス城を守るために戦う、同じ戦友なのだ。

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