影の航空機━ノベライズ━   作:紫 和春

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第13話 少女たちを出迎える

 業務車で基地の正門まで移動すると、守衛の警備隊員と一緒にいる少女3人を発見する。

 

「お疲れ様です、中里中尉」

「どうも」

 

 警備隊員に敬礼を返しながら、中里は女子たちの前に向かう。

 

「君たちが全日本航空高等学校金沢の生徒?」

「はい」

 

 一人が元気よく答える。

 

「んじゃ、自己紹介。俺は中里圭、肩書は中尉だ。そっちのボンクラは神崎、肩書は俺よりはるか下の曹長だ」

「中尉、そんな言い方はないでしょう……」

 

 文句は言うが、強くは出られない神崎。完全に力関係が出来上がっていた。

 

「君たちの名前を教えてほしい」

 

 神崎の発言を無視して、中里は少女たちに聞く。

 

「じゃあアタシから! 全日航(ぜんにちこう)金沢2年生、浜口アンリです! お母さんがイギリス人のハーフで、この髪は地毛です!」

 

 3人の中で一番背の高く長い金髪を持っている少女、浜口がそのように元気いっぱいに答える。

 

「元気があってよろしい。こういう場所では元気なヤツが必要とされているからな。次はそっちのお嬢ちゃんだ」

 

 隣にいた、茶髪のセミロングでニコニコとしている少女のことを指名する。

 

「はぁい。岡井ケイナで~す。うちは3年生で、一番先輩で~す。皆からナーちゃんって呼ばれてま~す」

 

 いわゆる「ゆるふわ」というジャンルの人間である印象を受ける。というより、もはやそのように受け取ってほしいと言わんばかりの発言と態度だ。

 

「……おう、よろしく」

(あの中尉がたじろいている……)

 

 中里の珍しい表情を見て、神崎は少しだけ目を見開いた。

 

「じゃあ最後。君」

 

 そういって3人の中では一番背の低い黒髪ボブの少女に話を振る。

 

「はい。私の名前は加藤ミズキで全日航金沢1年生です。父は自衛官でパイロットをしていました。そんな父に近づくために志願した次第です」

「ほう、お父さんは自衛官だったのか。それは期待してしまうな」

 

 そういって中里は、スマホと彼女らを交互に見ながら何かを確認している。

 そして後ろにいた警備隊員に声をかける。

 

「守衛、彼女たちの身分と荷物の検査はしたんだよな?」

「はい、もちろんです」

「よし。では基地司令に会いに行くとしよう。狭い車だが、乗ってくれ」

 

 そういって業務車を指さす。彼女たちの荷物は自衛官に比べればそこそこ大きい。年頃の女子なのだから、必要な荷物が増えてしまうのは仕方ないだろう。

 車で移動し、司令官室のある建物に入る。

 そして中里が先頭になって司令官室に入っていく。それを足立空将補はニコニコと迎える。

 

「君たちが全日航金沢から来てくれたパイロット候補だね?」

「はい!」

「はい」

「はぁい」

 

 三者三様の返事をする。

 

「こういうのもなんだが、君たちはこれから茨の道を進むことになる。時には堪えがたい深い心の傷を負うこともあるだろう。それでもいいかね?」

「もちろんです!」

「覚悟は出来ています」

「お空を飛べるのなら~」

 

 とにかく、3人は覚悟が出来ているとのこと。ならば追い返す必要もない。

 

「それでは、君たちには今日から国籍不明勢力に対抗するための航空機を使用した訓練を受けてもらう。その後は、そちらの中里中尉と神崎曹長が所属する防対本専従航空広報室の実働部隊として、実際に国政不明勢力との戦闘に加わってもらいたい」

「分かりました!」

「期待にそえるように努力します」

「わぁい」

 

 こうして3人は歓迎された。

 

「ところで、君たちを迎え入れるにあたって、一つ決めておきたいことがあるんだが……」

「なんでしょう?」

 

 今のところ、一番しっかりしている加藤が聞き返す。

 

「特殊な経緯ではあるものの、君たちは事実上自衛隊に入隊することになる。そこで必要となってくるのは……、階級だ」

「カイキュー?」

 

 浜口が頭をかしげる。

 

「自衛隊は主に階級で上下を判断する組織だ。普通の会社でいう部長や課長といった役職だね。それがないと、規律が乱れてしまう」

「へ~」

「なので、君たちにも階級を与えなければならないのだが……。困ったことに、予備自補ですらない民間人を迎え入れるのは初めてでね。どのような処遇にするべきか悩んでいるんだ」

 

 そういって足立空将補は、隣にいた准空尉からタブレットを受け取る。

 

「だが、防衛出動が発令され、さらに緊急事態宣言下にある現在。最高司令官である総理からは『全てを上げる必要はなく、現場が柔軟に対応せよ』と仰せつかっている。というわけで、私の独断により、君たちの階級を特務専任少尉とする。長いので以後特専少尉と呼称する」

「と、特専少尉……?」

 

 自衛隊基地に来て1時間もしていない少女たちに、神崎よりも高い階級が与えられてしまった。

 あまりの衝撃に、神崎は思わず頭がクラッとした。横を見てみると、そこには今にも吹き出しそうな表情をしている中里がいた。あまりにもイラつく表情をしていたので、ぶん殴ってやろうとも思ったが、神崎はとにかく心を落ち着かせることにした。

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