影の航空機━ノベライズ━   作:紫 和春

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第14話 実力を確かめる

 足立空将補との面会が終わり、中里たちは司令官室を後にする。

 

「そんじゃあこの後は……」

「私のほうで女性隊員に案内を引き継ぎ、女性宿舎へ移動することになっています」

 

 いつの間にか一緒に司令官室を出てきていた准空尉が、神崎の後ろでそのように話す。まるで忍者のような登場をしたので、神崎は思わずビクッとなる。

 

「うむ……。それに、まだ昼前だ。夕方までにやりたいことがある」

「やりたいこととはなんですか?」

 

 加藤が中里に聞く。

 

「君たちの今の実力を確認したい。浜口や岡井はすでに動力付き航空機の操縦経験があるはずだ。加藤はまだグライダーの経験しかないかもしれないが……」

「問題ありません。私は中学生の時に通常の小型航空機を操縦した経験があります」

「ミズキちゃんは優秀だもんね! アタシたちと実力はそんなに変わらないよ!」

「そうか、それは楽しみだ。それでは、1100(ヒトヒトマルマル)より実力確認のための航空実習を実施する。それまでに第7格納庫に集合するように」

「はい」

「はぁい」

「はい!」

 

 3人は荷物をもって宿舎の方に行く。

 

「そんじゃ神崎、俺たちは格納庫の方に行くぞ」

「はい。……ですが、高校生に高等練習機を操縦させるのは危険じゃないでしょうか?」

「お前……。俺が若者にいきなりジェット機を操縦させる馬鹿に見えるのか?」

「そうとは言っていませんが……」

「安心しろ。ちゃんと相応の航空機を用意している」

 

 そういって中里のT-2が置かれている第7格納庫に向かう。するとそこには、パイロット候補生なら見たことのある航空機も格納されていた。

 

「T-7初等練習機……!」

 

 これまた百里基地には存在しないはずのレシプロ機が鎮座していたのだ。

 

「これもどこから持ってきたんですか……!?」

「ま、俺ほどの階級のコネを使えば、このくらいはちょちょいのちょいだ」

(この男、一体どんな人脈とコネを持っているんだ……?)

 

 神崎の中で、中里の不気味さが増したのだった。

 数十分後。少女たちが格納庫にやってくる。

 

「それではこれより、航空機操縦技能評価試験を始める。試験と銘打っているが、そんな大層なものじゃない。俺の感覚でどの程度操縦出来るかを判断するようなものだ。では学年の順で……、岡井からやっていこう」

「はぁい」

「フライトスーツは予備の物を使ってくれ」

 

 そうして岡井はフライトスーツに着替え、T-7に乗り込む。同じように中里もレシプロ機用のフライトスーツに身を包んでT-7へ乗る。

 エンジンを始動させ、格納庫から滑走路へと移動する。そのまま管制塔と連絡を取り、許可を貰って離陸した。

 

(そういえば、事前の飛行計画とか提出したのかね……)

 

 神崎はそんな余計なことを考えながらも、持ってきたデジカメを構えて飛行の様子を撮影する。

 岡井の操縦は、まるで優雅に空を飛ぶ渡り鳥のようだった。旋回は優しくゆったりとした感じで、どちらかと言えば優しい曲芸飛行に近い感じだ。

 数十分の飛行の後、T-7は滑走路に着陸した。そのままエプロンに駐機してエンジンを停止し、燃料を補給する。

 その間に、パイロットが交代する。

 

「浜口、次行くぞ」

「はーい!」

 

 浜口は元気よくコックピットに乗り込む。燃料の補給が終わり次第、エンジンを始動して滑走路へ移動する。そして再び空に飛び上がった。

 浜口の飛び方は、どちらかと言えばアグレッシブなものであった。曲芸飛行で言うならば、サービス精神でいつもより多く回っています、という印象だ。大胆かつオーバーワーク気味な部分は、正直マイナス評価になり得るだろう。

 これまた数十分の飛行を行って着陸、エプロンへと戻ってきた。

 

「楽しかったー!」

 

 岡井は本当に楽しんでいたようだ。

 

「最後は加藤。準備はいいか?」

「はい。問題ありません」

 

 そういって加藤は、T-7に乗り込む。

 エンジンを始動。そのまま滑走路へと移動し、離陸をした。

 その一挙手一投足の所作を見るに、まさに教科書通りのきっちりとした操縦を行っている印象だ。模範的で優等生という操縦がにじみ出ている。

 こうして3人の技能評価は終了した。

 

「お疲れ様。君たちの技能はだいたい把握した。正直かつ簡単に評価するならば、君たちは並のパイロット候補生に引けを取らない技能を有している。正直このままパイロットになっても問題はない。ただしそれは、遊覧飛行や旅客機の場合だ。君たちになってもらいたいのは戦闘機のパイロットである。明日以降は実戦を視野に入れた訓練を行っていくぞ」

「はい」

「はぁい」

「分っかりました!」

 

 初日から大変なスケジュールではあったが、彼女らは無事にやり切った。今後の成長に期待である。

 

「そういえば、君たちの部隊名が欲しいね」

「部隊名ですか?」

 

 中里が急に話題を振ってくる。

 

「俺もずっと君たちと言ってるわけにはいかないしな。今ここで決めなくてもいいから、数日以内に教えてもらえると助かる」

「了解しました」

 

 真面目な加藤が返事をする。

 

「部隊名かぁ……。どんなのがいいかな!?」

「なんか~、ふわっとしたかわいい感じがいいよね~」

 

 浜口が興奮し、岡井はいつもの調子で話す。

 こんな3人であるが、意外とバランスがいいのだろう。そんなことを思いながら、神崎は3人の後ろ姿を撮影するのだった。

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