影の航空機━ノベライズ━   作:紫 和春

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第2話 国連

 チリ空軍が発見したのが最初、というわけではなかった。

 環太平洋地域に属している国家を中心に、国籍不明機に攻撃されたという報告が上がる。各国は仮想敵国に対して「貴国の仕業か?」という質問状をそれぞれの大使館に送っては、その分だけ「誤解である」という返答を受け取るのだった。

 そしてそのことを国連を通じて疑義照会すれば、あらゆる国家が該当の航空機を有していないことが分かってくる。

 OSINT有志が動く島を発見した時刻と、同時刻にチリ空軍が攻撃を受けた時から2時間も経過してなかった。

 事態は思った以上に悪い方向に転がっていることを憂慮した国連安保理のアメリカ大使が、緊急の会合を開催することを提案する。そのうち、ワラワラと環太平洋地域の国連大使やその秘書官らが集まってくる。そして不確かな情報をやり取りするだろう。

 

「どの国に話を聞いても、自国は関与していないという報告ばかりを受ける」

「南米諸国ならまだしも、ハワイでも謎の機体を見たという報告があるらしい」

「動く島の話も聞いている。それが関係していると睨む将校もいるが……」

「それに、南太平洋のど真ん中にこんなものがあったらしい」

 

 誰かがタブレットを持ってきて、人工衛星からの画像を共有する。

 

「これは……、なんだ?」

「とある情報筋によると、黒いドームをしているらしい。それ以上のことは何も分からないようだ」

「この座標……、ポイント・ネモじゃないか」

 

 そんな話で盛り上がっている中、日本の国連大使の秘書官がとある事務官から情報をヒソヒソと聞かされる。

 

「何っ、日本が国籍不明機に攻撃されている!?」

 

 203Ⅴ年4月23日午前9時4分、千葉県上空。ここを、百里基地から飛び立った第3航空隊のF-2戦闘機が2機飛行していた。

 

「青木。ブリーフィングで聞かされた、現在太平洋を中心に謎の敵性勢力からの攻撃を受けている件、正直どう思う? すでに千葉県の一部地域で爆発がいつくか発生しているそうだ」

『謎の勢力と爆発に何かしらの関係があるって話だろう? 正直この目で見るまでは無理のようにも思えるが……』

「だが、防空レーダーでは大量の航空機を発見している。先ほど第一波と思われる集団が去っていくのを確認した。ただの偵察行動では起き得ない事象と言える」

『確かにそんな話はしたが、そこまでのことをしているのかねぇ?』

「分からん。だが今は黙って任務を遂行するのみだ。それに、すでに民間の航空機が2機も攻撃を受けている。これは明確は敵対行動及び奇襲攻撃だ」

『それを確認するのが俺らの今日の任務か。さすがに空対空装備はやりすぎとは思うが……』

「そのあたりの見極めも、俺たちの仕事だよ」

 

 そんな通話をしていると、機体に搭載しているレーダーに反応が出る。

 

「前方15キロに国籍不明機多数。IFFが怒り狂ってら」

『内藤。カメラ準備して、さっさと仕事を終わらせようぜ』

 

 そういって2機のF-2は正体不明の飛行集団に接近する。飛行集団の中でも上の方を飛んでいる4発エンジンの大型機に近づいていった。その距離はおよそ1キロだ。

 そして内藤と呼ばれた方が、持ち込んでいたデジカメを構えた時である。

 数機の大型機から、点のような物が落下する。内藤は反射的にシャッターを切った。

 

「あれは……」

『まさか爆弾!?』

 

 それを確認した瞬間、大型機から銃撃のようなものが見えた。

 

「ブレイク! ブレイク!」

 

 カメラの電源を切る暇もなく、2機は一目散に大型機から離れる。幸い銃撃は当たっていないようで、警報音や異音は鳴っていない。

 それよりも、大事な情報が得られた。

 

「3SQ6より百里! 警告なしに攻撃を受けた! 明確な敵対行動と判断する!」

『こちら百里。本当に攻撃を受けたのか?』

「本当だ! 銃撃を受けた! その前に爆弾らしきものも投下している!」

『……了解した。国籍不明機を墜とすのは国際問題になりかねないが、致し方あるまい。正当防衛として、敵機の撃墜を許可する。ただし、攻撃をしてきた機体にのみ攻撃せよ』

「了解……っ!」

 

 そういって姿勢を戻し、シーカーで攻撃してきた大型機をロックする。

 

「FOX3!」

 

 左翼端に装備していた90式空対空誘導弾を発射する。ミサイルは真っすぐ飛翔し、簡単に大型機へと吸い込まれていく。

 そしてエンジンの一つに命中し、爆発する。簡単に機体や主翼が裂け、炎上して墜落していく。

 

『あーあ、ついに自衛隊が武力行使してしまったな』

 

 青木が悲しむような、ぼやくような感じで通信を入れてくる。

 

「今は緊急事態だ。とにかく、あの国籍不明機に警告するぞ」

 

 そういって内藤は後方を見る。国籍不明機の航行速度が遅すぎて、遥か後方に置き去りにしてしまったのだ。

 

『あれはレシプロ機だよな? どっからこんな機体を飛ばしてきたんだ?』

「知らんし、分からん。とにかく情報がなさすぎる」

 

 大きく旋回して、低速の飛行集団に後方から再び接近する。

 今度は青木の仕事だ。

 

『国籍不明機に警告。こちらは航空自衛隊である。貴官たちは我が国の領空を侵犯しようとしているのみならず、我々に対し攻撃をしてきた。即刻進路を反転し、領空から退去せよ。Warning. This is the Japanese Air Force……』

 

 相手が使っているであろう全ての無線周波数に合わせて呼びかけを行う。

 その時、小型機多数が反転してくる。

 

「話が通じるのか……?」

 

 内藤が考えていると、小型機のほとんどは2機に対してどんどん接近し、そして主翼の付け根や機首がパパパと小さく光らせる。

 同時にキャノピー越しにも聞こえる風切り音がなった。

 

「銃撃されたっ!?」

『ぶ、ブレイク!』

 

 2機は再び射線を切るために、勢いよく操縦桿を引いた。

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