内藤と青木は敵が来れないであろう高度まで上昇し、お互いの機体の状態を確認する。
「青木の機体に傷やオイル漏れは確認できない。無事らしい」
『内藤のほうも機体に損傷は確認できず。お互いに無事でよかったな』
「そうだが、今の状況はどう考えても最悪な部類に入る。とにかく司令部に報告だ」
そういって内藤は無線で通信を試みる。
「こちら3SQ6、大型機に続き小型機からも射撃を受けた。このことより、国籍不明機は我々に敵対していると判断。敵性勢力の壊滅を要請する」
『少し待て。上に掛け合う。決して攻撃せず、回避行動に専念せよ』
そういって一方的に通信が切れる。
『おいおい、上に掛け合うって……』
「おそらく防衛大臣、そして総理に話をつけに行ってるんだろうな」
すると、後ろから当たる確証のない銃撃が行われる。
『くそ、3キロは離れてるだろ』
「待機は司令部からの命令だ、仕方あるまい。今は目標の射程圏外から観察するに留めよう」
そういって2機は大きく旋回を始める。
だが場所が悪いのもある。もう数分も飛行を続ければ、国籍不明機の集団は第二波として領空を侵犯することになる。そうなれば再び国民に被害が出る可能性がある。
まだ爆撃機と思われる大型機が数機残っている。その腹には、まだ大型の爆弾を複数抱えていることだろう。
大型機のさらに上空で旋回しながら飛行集団を観察していると、内藤はあることに気が付く。
「あの大型機……。どこかで見たと思ったら、戦中のナチスドイツが開発していたメッサーシュミットのMe264じゃないか?」
『そんな馬鹿な。そいつが飛んでいたのは1世紀近く前の話だろ?』
「だが、その周りにいる戦闘機も、戦中ドイツのフォッケウルフに見えなくもない」
『そうだろうか……。じゃあ、今の内にカメラで撮影しておけば?』
「そうだな……」
そういって内藤は、いつの間にか電源が切れていたデジカメを起動させ、次々と撮影する。
しかし、こうしている間にも、着々と時間は過ぎていく。領空まで、あと数キロを切っている。
「司令部からの連絡は?」
『未だなし』
「もう領空だぞ。このままじゃあ、首都防衛の要である我々がいる意味がない」
デジカメをしまった内藤は、操縦桿を握る力が強くなる。いっそのこと、自分の判断で国籍不明機を墜としてしまってもいいのではないか、という邪な考えも浮かんできた。
その時である。
『こちら百里。総理から正式に防衛出動の命令が下された。目標とする航空機は、機体の色が黒く国籍マークとして一直線の白が描かれたレシプロ機のみとする。君たちの健闘を期待する』
正式に命令が下された。しかも防衛出動だ。
『そんじゃ、一気にいきますか!』
そういって青木はアフターバーナーを吹かして降下していく。それに内藤も追随した。
『シーカー、ロック。FOX3! FOX3!』
水を得た魚のように、青木は連続でミサイルを発射する。それによって、数機いた爆撃機は全て主翼が破壊され、墜落していく。
『さて、直接の問題は解決したな』
「問題は……」
そういって視線を下に向ける。そこには、上昇しようと踏ん張っている戦闘機の姿があった。
「あの戦闘機どもか」
『あれらも
「そうだな。このまま地上に向けて機銃掃射なんてされたら、それこそ混乱が広がることになる」
そういって2機は一度戦闘機を速度で引きはがし、そこから旋回してヘッドオンになる。
シーカーを起動し、目標をロックした。
「FOX3!」
残っているミサイルをまとめて発射し、数機をほぼ同時に撃墜する。
しかし、さすがに戦中の戦闘機は数が多い。確認出来るだけでも、残りは10機以上いる。
「ミサイルは撃ち切った。ここからは機銃で対応だな」
『ドッグファイトか。やっぱ戦闘機の花形だぜ』
そういって青木は意気揚々と戦闘機群に突っ込んでいく。
「いきなりヘッドオンは危険すぎるぞ」
『大丈夫だ』
青木は斜め上方向へ飛び、そのままフラップを出して旋回。速度を落とすと同時に旋回半径を小さくする工夫だ。
そして戦闘機群の真後ろに機体を持ってくる。
『ガンズ、ガンズ!』
操縦桿の引き金を引く。ヴォォォと腹に響くような唸り声を上げて、バルカン砲から弾丸が発射される。
あっという間に1機、2機と墜としていく。だが相手も黙って飛んでいるわけではない。青木が射撃で前方に集中している間に、横から別の敵機が狙ってくる。
そういったこざかしいヤツを撃ち落とすために、内藤がいるのだ。
「青木、出過ぎだ」
『ワリィ』
そうして内藤たちは圧倒的な速度で戦闘機を追い抜いていく。ジェット機とレシプロ機、巡航速度でさえ相当違う両者は、戦闘中の速度はさらに違ってくる。
ジェット機である2機は、いつぞやの戦争で使われていた一撃離脱戦法を行って敵機を墜としていく。
『まだ敵機がいるのに、すでに残弾が半分になってやがる。こういう時のバルカン砲は不利だな』
「仕方ないことだ」
そういって次々と敵機を墜としていく。そして残りは4機ほどになる。
「さて、残りを墜としていくぞ」
そういって内藤は敵機を捕捉して、引き金を引いた。しかし警告音が鳴るだけで、何も起きない。
思わず残弾を確認する
[GUN 0]
「しまった! 残弾がない!」
その間にも、敵機からの攻撃は続く。内藤と青木は、一度上空に退避する。
『どうする? 一度補給に帰るか?』
「いや、その間に敵が地上に接近するのは危険だ。敵の注意をこちらに向ける必要がある」
『じゃあどうするんだよ?』
「……最悪、ギアを下ろして車輪をぶつける」
『はぁ? 何考えてるんだ。そんなことしたら、確実に内藤の機体が失われるぞ!』
「だがそれをすれば、敵は確実に俺のことを狙うだろう」
『ダメだ。バディの俺が許さないし、司令部も総理も許さないはずだ』
「じゃあどうするんだ?」
『それは……』
その時であった。
通信に割り込みが入る。
『特攻まがいの行為をする必要はない』
「誰だ!?」
内藤が叫ぶように聞く。
『IFFを確認……。この機体番号は、三沢の第301飛行隊!』
青木が北方向を見上げる。そこには、最新鋭の機体であるF-35が複数機飛んでいた。
『よくここまで持たせた。あとは任せてくれ。エンゲージ!』
第301飛行隊はそのまま戦闘空域に入り、空対空ミサイルをぶっ放す。ものの10秒で敵機は撃墜され、第二波の飛行集団は壊滅したのだった。
『さぁ、帰ろう。我々には国民を守る義務がある』
状況が終了し、それぞれ自分の基地に帰還するのであった。