影の航空機━ノベライズ━   作:紫 和春

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第30話 丁寧に確認する

 その後、無事に梅香隊とT-2は百里基地に帰還。E-2Cおおとりも入間基地へと帰還した。

 エプロンに機体を駐機させ、神崎たちはすぐに庶務室に戻る。そしていつも出勤しているものの、大抵は庶務室のソファでゴロゴロしている事務員の1士にデータを渡す。

 

「これが国籍不明勢力がいるとされる人工島っすか……」

 

 そういって事務員の周りに神崎、中里、梅香隊の3人が取り囲み、撮影した写真や映像を確認する。

 

「確かに最初の方は対空火器のようなものは確認できませんねェ」

「これもっと拡大出来ないのか?」

「これが精一杯っすよ」

 

 中里も何かしらの情報は欲しいようで、画面をマジマジと見る。

 

「それで、これが対空砲と思われる攻撃が行われた瞬間に撮影されたものっすね。さっきまで存在していなかった対空砲と思われる物体が生えてきてます」

「全然分かんなくなーい?」

 

 浜口が口を挟む。

 

「輪郭を掴めばなんとなく分かるっすよ。ここに画像編集ソフトがあればなお良かったんすが、まぁこんな時に贅沢は言ってられないっすからね」

 

 そういって次のデータに移る。ここからは、神崎が中里とGに振り回されながら撮影した映像データである。

 残念ながら1士が使っているパソコンにはスピーカーがついていないので、無音状態での再生になる。

 

「うーん……。対空砲らしき物体は、確かに無人で動いているように見えるっすね」

 

 ところどころ映像を止めながら、対空砲と思われる物体を観察する。

 

「対空砲は、先の大戦末期ではありきたりな4連装のように見えますねェ。それが少なくとも……、20基以上。正直この規模の滑走路を有しているなら、もっとデカい口径の対空砲が欲しいところっすねェ」

 

 そんなことを言いつつ、1士は映像をコマ送りで再生し続ける。

 

「対空砲はもういいから、他に何か情報は掴めるか?」

 

 中里は1士に質問する。

 

「そっすねェ……。これはこの島全般に言えることなんすが、地上設備があまりにも貧弱ってところっすかね」

「それは誰もが思うところですね」

 

 神崎は同意する。

 

「ハンガーと思われるのが2,3個だけ。対空砲も小口径しかない。なのに滑走路は1級品。正直いろいろとつり合いが取れてないっすよ」

「それもそうですが、やはりあれだけの航空機を擁するような人工島に見えません」

 

 何度も指摘されてきたことを、加藤が改めて指摘する。

 

「そうだな……。物理法則を無視していないのなら、無から有を生み出すことは不可能だ。しかし、このルーマンがどこから出現したかを考えれば、正直物理法則を怪しんだほうが早い可能性もある。そのあたりは科学者の仕事だろうがな」

 

 中里は腕を組みながらそんなことを呟く。

 

「とりあえず、こんなところっすかねェ」

 

 すでに映像はルーマンから離れていく様子が映し出されている。

 

「とにかく、気になった点を上げていけば……」

 

 中里が庶務室にあったホワイトボードに、気になった点を書き上げていく。

 

「まずは……、大がかりな航空機部隊が見当たらないこと」

「どこにいるのかすら分からない状態ですね」

 

 神崎がそのように補足する。

 

「次に、少なくとも対空砲は無人で操作されている。それ以外にも人間のような存在は見られない」

「正直、一番意味不明な部分ですね」

 

 加藤が感想を述べる。

 

「それにも関わらず、航空機は稼働を続けている」

「どこにいるのかも分からないよー!」

 

 浜口が頭に手をやってウガーッとなる。

 

「これらから、敵は無人化技術を有している可能性がある」

「つまりAIってこと~?」

 

 岡井が手を頬に当てて首をかしげる。

 

「おそらくその通りだろうな。というわけで、今はこの四つが疑問点と言えるだろう」

 

 中里はホワイトボードに背を向けて神崎たちのいるほうを見る。

 

「それ以外にも考えるべき部分は多数ある。自生してきた対空砲の奇妙さ。仮に地面に穴を掘って、そこに対空砲を格納したと考えるのが一番の筋だが、正直そんなことをする必要が見当たらない。とにかく奇妙奇天烈なことばかりだ」

「我々の常識が通用していない辺り、別の思考を持った存在がいるような気がします」

 

 神崎がそのように考察する。

 

「異星人……、と考えるのも分からなくもないが、そうなると先の大戦で使われていた航空機に似た機体が使われているのかが分からない。それを言えば、対空砲の構造もかつてのそれと似ているのが気にかかる……」

 

 そういって中里がブツブツと考え始める。

 

「中里中尉、我々がここであれこれ話し合っても答えは出ないと思います。今回撮影したデータを足立空将補や防衛省に上げる必要があると考えます」

 

 そのように加藤が進言する。

 

「うむ、その通りだな。我々では頭脳が足りない。それに、情報は一か所に集めて解析したほうが、より多くの情報を得ることができる。これらの撮影データが機密情報扱いになるのは惜しいが……」

 

 中里は決断する。

 

「事務員の1士君。総務課経由で防衛省にデータを送ってくれ」

「うっす、分かりました」

 

 その後、送らなかった撮影データ━━つまり機密情報にならなかったデータを使って、SNSを更新する神崎であった。

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