日付が変わり、7月11日の早朝。天候は晴れ。南から若干の風あるが、フライトに影響なし。
朝日に照らされるように、滑走路には民間戦闘機が並んでいた。先頭には梅香隊、その後ろに各地から招集された民間飛行隊が並ぶ。
『え~と、うちがプラム1で、アンリちゃんがプラム2、ミズキちゃんがプラム3、であってる~?』
岡井が加藤と浜口に確認する。
『合ってますけど、慣れないですね』
『普通にいつもの呼び方しちゃいそー』
そんな話をオープン回線で話していると、別の飛行隊から通信が割り込んできた。
『君たちさぁ、仲良しごっこのつもりかい? こっちは自衛官から散々シゴかれてきたんだ。正直こんな任務なんか放棄して逃げたいくらいだよ』
『ほんとそう。このまま自宅に帰ったろうかな』
そういって笑い出す。
しかし梅香隊の3人は笑わない。
『だったら逃げたらいいんじゃないですか?』
『あ?』
『そーだよ! アタシたちだけになっても頑張っちゃうから!』
『うちら、割と本気で自衛隊の皆さんのことを信用してますから~』
梅香隊の3人は知っている。彼女らに真面目に指導してきた自衛官の姿を。そんな彼らの思いに報いるために、戦うことを3人は決めていたのだ。
『逃げてもいいですけど、せめて私たちの邪魔だけはしないでください』
『……チッ』
舌打ちで返されたものの、一切動揺しない梅香隊。それだけ本気なのだ。
『梅香隊、カソード隊、ショット隊、離陸を許可する』
管制塔からの通信だ。
『田子作戦の成功を祈る。無事に帰ってこいよ』
『ありがとう。梅香隊、発進します』
そういって一式戦闘機、三式戦闘機、ゼロ戦の順番に動き出す。
その後ろにいた民間戦闘機も、少し遅れて動き出した。そして順次離陸していく。
ギアを上げ、そのまま目標であるルーマンの方向に向かって飛行する。
『風に流される心配はなさそうだねー!』
『ルーマンが最後に確認されたのは、百里基地から方位1-5-5、距離400kmだったね~』
『そろそろおおとりからの情報が入ってくるはずですが……』
梅香隊がルーマンの位置を確認している時、別回線の通信が入ってくる。
『こちらE-2Cのおおとりだ。梅香隊の諸君、久しぶりだな』
『お久しぶりです』
『おひさー!』
『は~い』
『さて、再会の挨拶はこの辺にして情報共有だ。君たちの目標であるルーマンは事前に確認された位置から変わっていない。そのまままっすぐ進めば目的地だ』
『ありがとうございます。おおとりの皆さん』
『何、君たちはすでに立派な自衛官だ。日本を守るために、全力を尽くしてくれ』
そして回線が切れる。
『あんたら、なんで自衛官とそんなに仲良くなってるんだ……?』
カソード隊の隊長機がそう尋ねる。
『なんでって、一緒の任務をこなしてたから、ですかね?』
『協力しないと死んじゃうからねー!』
『死んでいいのはうちくらいだよ~』
ブラックジョークに近い発言が飛び出して、カソード隊とショット隊の面々はドン引きしている。
そんな時、後方から何かが接近してくるのが分かるだろう。
『ミズキちゃん、レーダーに反応あり! 多分中里さんたちだ!』
『正解だ。まぁIFFを確認すれば簡単だろうがな』
神崎と中里が乗るT-2と、第3飛行隊のF-2戦闘機、第301のF-35戦闘機が接近してきたのだ。空自の戦闘機はジェット機である。圧倒的な速度差を埋めるために、時間差で離陸してきたのだ。
『さて、おおとりの情報はこっちでも聞いている。このまま進めば問題ないはずだ。作戦通り、空自の戦闘機が先行して攻撃を加える。君たちはこのままゆっくり進んでいこう』
そういってT-2は速度を落とし、その間に空自の戦闘機群が追い抜いていく。
『おい、神崎。今のうちに広報用の写真でも撮影しておけ』
「あ、はい」
中里に言われ、神崎はデジカメを民間飛行隊に向ける。構図としては、右から左に向けて民間飛行隊が飛んでいるような感じだ。
数枚撮影し、その画像を確認していると、中里が賛嘆の声を上げる。
『第3飛行隊と第301飛行隊がルーマンに到着し、対地攻撃を開始したようだ』
田子作戦前半の正念場がやってきた。