F-2戦闘機群とF-35戦闘機群による空爆が始まった。通常爆弾による対地爆撃である。
JDAMによる精密爆撃で、移動する島であるためGPS誘導ではなくレーダー慣性誘導方式による空爆だ。
『爆弾の数はそんなに多くはないが、おそらくは対空砲のほとんどを破壊することが出来るだろう』
中里がそのように推測を話す。
実際には、作戦立案段階でこうなるように調整しているのだろう。
『それなら~、うちたちの出番はないかも~?』
岡井が聞く。
『どうだろうな。それは敵の出方次第だろうが……』
「しかし、敵も反撃能力を持っているのも事実です。ということは反撃のために敵機が出撃してくるのもあり得ますね……」
『あぁ。しかも、そういう話をしている時に限って──』
中里の話の途中で、通信が割り込んでくる。
『サムライ隊より民間飛行隊へ。敵のレシプロ機がハンガーより出現。数はおよそ30。至急応援求む』
『そら来た。フラグ回収早すぎるだろうが……』
『ルーマンまでの距離、およそ25kmです。間に合うでしょうか……』
加藤が地図と見比べながら言う。
『間に合わないこともないが、この速度のままだとあと30分はかかる。その間に状況が一変していなければいいんだがな』
「不吉なこと言うのやめてくださいよ……」
中里の考えに、神崎が文句を言う。
『ま、そんな心配するほどのことはない。向こうはレシプロ機、こっちはジェット機だぞ? 高度さえ取ってしまえばこっちのもんだよ』
『でもアタシたちはレシプロ機だよー? 一緒じゃ不利にならない?』
『可能性はあるだろうな。だが、君たちをそんな風に考えるように訓練した覚えはないぞ?』
『そうだったっけ~?』
岡井がとぼける。
そんな会話の様子を聞いていたカソード隊とショット隊は唖然としていた。
『なんでこいつら、こんなに自衛隊に馴染んでいるんだ……?』
『民間人っていうか、航空学校の生徒だったんだろ……? 最近まで……』
驚くのも無理はないだろう。梅香隊の3人は民間飛行隊の中核を成す存在だ。だからこそ、こうして自衛隊と密接に関わっているのだ。
そんな話をしていると、人工島のルーマンが見えてきた。空自戦闘機はかなりの高度で滞空し、少しずつ敵機を攻撃している。
「さきほどの報告よりも、かなり数が増えているように見えますね」
『おそらく次々と離陸してきているのだろう。どこにそんな数を収容出来るんだか』
「地下に格納庫のようなものがあるという話でしたが、そんな風には見えないですね」
『それを解明するためにも、後ろで控えている第1空挺団と水陸機動団には頑張ってもらわないとな』
民間飛行隊とルーマンの距離が5kmを切ってきた。
『梅香隊、カソード隊、ショット隊。
『了解!』
『プラム2、行きまーす!』
『頑張りま~す』
そういって梅香隊の3人は、スロットルレバーを最大まで押し込んで速度を上げる。
高度有利な状態で突撃していく梅香隊は、そのまま位置エネルギーを運動エネルギーに変換して強襲をかける。
対空砲はすでにあらかた潰されているため、かなりやりやすいだろう。
敵機の中を通過する時に、機銃で攻撃して敵機を墜としていく梅香隊。一航過で加藤は2機、浜口と岡井は3機を撃墜した。
『すげぇ……。敵の攻撃なんて無視して、敵集団の中に突っ込んでいきやがった……』
『あいつら本当に最近まで学生だったのか?』
カソード隊とショット隊は、敵集団からはぐれた敵機に対して攻撃を行いながら、そんなことを言う。
しかし、彼らも彼らで正しい戦闘を行っている。彼らが乗っている機体は、元は戦闘なぞ想定していないため装甲が存在しない。それを防弾ガラスを使用し、コックピット周りに幾ばくかの薄い装甲を施した、まさに突貫工事による簡易戦闘機なのだ。そんな機体が、敵集団のど真ん中を通過するのはリスクでしかない。
一方で梅香隊が乗っているのは、そういった被弾リスクを想定した本物の軍用機である。ならば率先して敵に向かっていくのは当然の帰結と言えるだろう。
『撃墜数5!』
『こっちは6ー!』
『うちは8機~』
『マジ!? ナーちゃん先輩スゴッ!』
『私も負けてられませんねっ!』
梅香隊の3人は調子が良いようだ。
加藤が前方にいる敵機を狙うために、その敵機の後方に張り付く。残弾も気になるタイミングであるため、じっくりと狙う。
すると、加藤の後ろに1機の影が接近してくる。
『はっ!』
加藤が気が付いた時には、すでに後ろの敵機は射撃を行おうとしていた。加藤は反射的に操縦桿を左手前に倒す。
そのままロールに入って、敵機から逃れようと旋回をする加藤。しかし敵機は一式戦闘機の動きを見定めるように、速度を落としてユラリユラリと照準を合わせる。
その時、敵機の横から銃撃が入り、右主翼の半分が吹き飛ぶ。そのままエンジンから火を噴きながら、操縦不能なスパイラル状態になった。
『ミズキちゃ~ん、大丈夫~?』
岡井による援護であった。
『ありがとうございます、ナーちゃん先輩』
『困ったときはお互い様~。敵機もだいぶ墜ちたし、そろそろいいんじゃないかな~? 中尉さ~ん』
岡井は中里に通信を入れる。
『そうだな。そろそろ田子作戦の後半段階に突入させよう』
そういって中里はさらに別動隊に連絡を入れる。
『おおとりへ、こちら第2飛行作戦群のミドルだ。敵の露払いが完了した。本隊の突入を進言する』
『了解。本隊に突入の合図を送る』
ここからが田子作戦の核となる行動になる。