影の航空機━ノベライズ━   作:紫 和春

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第38話 突っ込んでいく

 F-2戦闘機群とF-35戦闘機群による空爆が始まった。通常爆弾による対地爆撃である。

 JDAMによる精密爆撃で、移動する島であるためGPS誘導ではなくレーダー慣性誘導方式による空爆だ。

 

『爆弾の数はそんなに多くはないが、おそらくは対空砲のほとんどを破壊することが出来るだろう』

 

 中里がそのように推測を話す。

 実際には、作戦立案段階でこうなるように調整しているのだろう。

 

『それなら~、うちたちの出番はないかも~?』

 

 岡井が聞く。

 

『どうだろうな。それは敵の出方次第だろうが……』

「しかし、敵も反撃能力を持っているのも事実です。ということは反撃のために敵機が出撃してくるのもあり得ますね……」

『あぁ。しかも、そういう話をしている時に限って──』

 

 中里の話の途中で、通信が割り込んでくる。

 

『サムライ隊より民間飛行隊へ。敵のレシプロ機がハンガーより出現。数はおよそ30。至急応援求む』

『そら来た。フラグ回収早すぎるだろうが……』

『ルーマンまでの距離、およそ25kmです。間に合うでしょうか……』

 

 加藤が地図と見比べながら言う。

 

『間に合わないこともないが、この速度のままだとあと30分はかかる。その間に状況が一変していなければいいんだがな』

「不吉なこと言うのやめてくださいよ……」

 

 中里の考えに、神崎が文句を言う。

 

『ま、そんな心配するほどのことはない。向こうはレシプロ機、こっちはジェット機だぞ? 高度さえ取ってしまえばこっちのもんだよ』

『でもアタシたちはレシプロ機だよー? 一緒じゃ不利にならない?』

『可能性はあるだろうな。だが、君たちをそんな風に考えるように訓練した覚えはないぞ?』

『そうだったっけ~?』

 

 岡井がとぼける。

 そんな会話の様子を聞いていたカソード隊とショット隊は唖然としていた。

 

『なんでこいつら、こんなに自衛隊に馴染んでいるんだ……?』

『民間人っていうか、航空学校の生徒だったんだろ……? 最近まで……』

 

 驚くのも無理はないだろう。梅香隊の3人は民間飛行隊の中核を成す存在だ。だからこそ、こうして自衛隊と密接に関わっているのだ。

 そんな話をしていると、人工島のルーマンが見えてきた。空自戦闘機はかなりの高度で滞空し、少しずつ敵機を攻撃している。

 

「さきほどの報告よりも、かなり数が増えているように見えますね」

『おそらく次々と離陸してきているのだろう。どこにそんな数を収容出来るんだか』

「地下に格納庫のようなものがあるという話でしたが、そんな風には見えないですね」

『それを解明するためにも、後ろで控えている第1空挺団と水陸機動団には頑張ってもらわないとな』

 

 民間飛行隊とルーマンの距離が5kmを切ってきた。

 

『梅香隊、カソード隊、ショット隊。敵との邂逅(エンゲージ)の時間だ。存分に暴れてこい』

『了解!』

『プラム2、行きまーす!』

『頑張りま~す』

 

 そういって梅香隊の3人は、スロットルレバーを最大まで押し込んで速度を上げる。

 高度有利な状態で突撃していく梅香隊は、そのまま位置エネルギーを運動エネルギーに変換して強襲をかける。

 対空砲はすでにあらかた潰されているため、かなりやりやすいだろう。

 敵機の中を通過する時に、機銃で攻撃して敵機を墜としていく梅香隊。一航過で加藤は2機、浜口と岡井は3機を撃墜した。

 

『すげぇ……。敵の攻撃なんて無視して、敵集団の中に突っ込んでいきやがった……』

『あいつら本当に最近まで学生だったのか?』

 

 カソード隊とショット隊は、敵集団からはぐれた敵機に対して攻撃を行いながら、そんなことを言う。

 しかし、彼らも彼らで正しい戦闘を行っている。彼らが乗っている機体は、元は戦闘なぞ想定していないため装甲が存在しない。それを防弾ガラスを使用し、コックピット周りに幾ばくかの薄い装甲を施した、まさに突貫工事による簡易戦闘機なのだ。そんな機体が、敵集団のど真ん中を通過するのはリスクでしかない。

 一方で梅香隊が乗っているのは、そういった被弾リスクを想定した本物の軍用機である。ならば率先して敵に向かっていくのは当然の帰結と言えるだろう。

 

『撃墜数5!』

『こっちは6ー!』

『うちは8機~』

『マジ!? ナーちゃん先輩スゴッ!』

『私も負けてられませんねっ!』

 

 梅香隊の3人は調子が良いようだ。

 加藤が前方にいる敵機を狙うために、その敵機の後方に張り付く。残弾も気になるタイミングであるため、じっくりと狙う。

 すると、加藤の後ろに1機の影が接近してくる。

 

『はっ!』

 

 加藤が気が付いた時には、すでに後ろの敵機は射撃を行おうとしていた。加藤は反射的に操縦桿を左手前に倒す。

 そのままロールに入って、敵機から逃れようと旋回をする加藤。しかし敵機は一式戦闘機の動きを見定めるように、速度を落としてユラリユラリと照準を合わせる。

 その時、敵機の横から銃撃が入り、右主翼の半分が吹き飛ぶ。そのままエンジンから火を噴きながら、操縦不能なスパイラル状態になった。

 

『ミズキちゃ~ん、大丈夫~?』

 

 岡井による援護であった。

 

『ありがとうございます、ナーちゃん先輩』

『困ったときはお互い様~。敵機もだいぶ墜ちたし、そろそろいいんじゃないかな~? 中尉さ~ん』

 

 岡井は中里に通信を入れる。

 

『そうだな。そろそろ田子作戦の後半段階に突入させよう』

 

 そういって中里はさらに別動隊に連絡を入れる。

 

『おおとりへ、こちら第2飛行作戦群のミドルだ。敵の露払いが完了した。本隊の突入を進言する』

『了解。本隊に突入の合図を送る』

 

 ここからが田子作戦の核となる行動になる。

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