メガゾーン23 ― ガーランド計画 ― 作:tell M.G.
完成に至らなかった試作機群。
だがそれらは、失敗作として廃棄されることはなかった。
不完全であるがゆえに――
そこには、完成機には存在しない可能性が残されていた。
各機体は解体されることなく保管され、引き続き研究と検証に使用される。
その中でも、異質な存在が二機あった。
一機は、変形機構すら持たず、純粋な機動性能のみを追求した試作機。
「ガーランドゼロ」と呼ばれる機体。
完全マニュアル操作。
制御補助なし。
リミッターすら存在しない。
扱う者を選ぶ、危険極まりない機体。
そしてもう一機――
変形機構の実用化を目指した試作機、「ガーランドファイブ」。
理論上は完成に近い。
だが、その変形は極めて不安定だった。
成功したかと思えば、次の瞬間には変形不能に陥る。
同じ挙動が再現できない、不完全な状態。
対照的な二機。
だが、その両方を扱える者は、ほぼ存在しない。
ゆえに――
乗れる者自身が、機体を“飼い慣らす”しかなかった。
それが、この部隊における役目。
テストパイロット、榊原光一は――
その両機を任されていた。
ゼロの性能を“誰もが扱える領域”へ引き下げるための調整。
そしてファイブの変形機構を安定させるための検証。
本来であれば、開発チームの仕事だ。
だが、この二機に関しては事情が違う。
乗れる者が、いない。
だからこそ――
乗れる者が、すべてを背負う。
その日も榊原光一は、ガーランドファイブのテストを行っていた。
変形は可能。
だが安定しない。
原因と見られる箇所には、すでに対処が施されている。
その改修内容は、別機体として組み上げられていた。
後のガーランドシックスとなる機体。
だが、それはまだテストすら行われていない。
そして――その時だった。
警報が鳴り響く。
甲高いアラート音が地下施設全域に反響する。
演習ではない。
直後、全域放送。
「――敵性反応確認。デザルグ部隊、侵入――」
爆発音。
閃光。
現実が、一気に押し寄せる。
「榊原、聞こえるか。最寄り戦力として出ろ。繰り返す――応援に向かえ」
短い通信。
“テスト中の機体でも構わない”
そう言っているに等しい命令だった。
光一は迷わない。
選択肢は一つ。
――ガーランドファイブ。
未完成。
不安定。
それでも、“今動かせる機体”はこれしかない。
機体を発進。
爆発の方向へと加速する。
やがて視界に入る、異形。
三角形の機体。
滑らかな外殻。無機質なフォルム。
UFOのようなそれが六機。
敵性機動兵器――デザルグ。
友軍、フラッガ・ハーガン部隊はすでに劣勢。
次々と撃墜されていく。
火力、機動、すべてが上回っている。
「……やるしかないか」
低く呟く。
思考伝達装置、接続。
――変形。
上半身、応答。
変形、完了。
だが――
下半身。
応答なし。
遅延。
警告。
エラー。
「くそ……!」
その瞬間。
敵機が、こちらを捉えた。
三角の機影がゆっくりと旋回する。
標的変更。
「来るか……!」
ミサイル発射。
回避――不可能。
「――っ!」
直撃を覚悟した、その瞬間。
遅れていた下半身が、突如応答。
変形、完了。
機体が跳ねるように宙へ浮き――
爆炎をかすめ、ミサイルを回避する。
「……っ、今かよ……!」
だが、止まらない。
「行くぞ」
操縦桿を握り直す。
未完成の機体。
制御不能の可能性。
それでも――
背後にあるのは、まだ調整途中の“ゼロ”。
そして、守るべき開発施設。
「ここで止める」
ガーランドファイブは加速する。
圧倒的戦力差の敵陣へ――
真正面から突っ込んだ