メガゾーン23 ― ガーランド計画 ―   作:tell M.G.

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第3話 善戦の果て

ガーランドファイブは善戦していた。

 

だが――限界は、確実に近づいていた。

 

変形は成功している。

機動も、応答も、問題はない。

 

……はずだった。

 

「……遅い……?」

 

違和感。

 

脚部の応答が、わずかに遅れる。

思考と動作の間に、微細なズレが生じていた。

 

一瞬の誤差。

だが、それは戦場では致命的だった。

着地。

 

その瞬間――

 

脚部が、止まる。

 

「――っ!?」

 

バランスを崩す。

機体が傾き、そのまま地面へと叩きつけられた。

 

転倒。

 

警告音が一斉に鳴り響く。

視界の端に、赤いロックオン表示。

 

敵機。

 

ミサイル発射。

 

「くそっ……!」

 

回避は間に合わない。

咄嗟にバーニアを噴かす。

機体を無理やり跳ね上げ、頭上へと逃がす。

 

爆炎が、直下を薙ぐ。

 

間一髪――

 

だが。

 

「……っ!」

 

衝撃。

 

回避しきれなかった一発が、脚部をかすめる。

いや、直撃に近い。

 

ノイズ。

警告。

出力低下。

 

脚部、沈黙。

 

「動け……!」

 

応答は、ない。

 

完全に機能を失った脚部を引きずりながら、姿勢を維持するのがやっとだった。

 

このままでは――墜ちる。

 

「……撤退する!」

 

即断。

 

戦闘継続は不可能。

思考伝達――変形。

機体が応答する。

 

ガーランドファイブは、マニューバクラフト形態へと移行する。

脚部を畳み、推進へと全出力を集中。

加速。

 

背後から、追撃。

ビームが、弾丸が、かすめる。

 

「……っ!」

 

だが、迎撃はできない。

この形態に、攻撃手段は存在しない。

あるのは――速度だけ。

 

逃げるしかない。

それでも。

 

「まだ……いける!」

 

スロットルを押し込む。

機体が唸りを上げる。

 

バイクとしての性能は、完成している。

それだけは、この機体の確かな強みだった。

速度が、一気に跳ね上がる。

 

敵のロックが外れる。

距離が開く。

 

そのまま――基地へ。

 

滑り込むように地下施設内へと突入する。

ようやく、追撃が途切れた。

 

だが。

 

安堵する暇はない。

視線の先。

 

格納区画の奥に、それはあった。

 

無骨なシルエット。

変形機構を持たない、純粋な機動兵器。

 

ガーランドゼロ。

 

手に負えないジャジャ馬。

制御不能の塊。

誰も扱えない機体。

 

「……これしかないか」

 

呟く。

 

他に選択肢はない。

光一は、損傷したファイブから飛び降りる。

そのまま、ゼロへと駆ける。

コックピットへ乗り込み――

 

躊躇は、なかった。

 

「起動する」

 

スイッチを叩く。

沈黙していた機体が、低く唸りを上げる。

封じられていた獣が――

 

今、目を覚ます。

 

 

コックピットが閉じる。

静寂。

次の瞬間――

 

視界が、開ける。

ガーランドゼロ、起動。

 

「――行くぞ」

 

スロットルを叩き込む。

瞬間。

世界が、置き去りになる。

 

加速という感覚が消える。

ただ、景色が跳ぶ。

 

「……っ!」

 

視界が歪む。

Gが身体を押し潰す。

 

それでも――

 

「速い……いや、速すぎる……!身体が追いつかない――!」

 

思考に、機体がそのまま応答する。

ラグが、ない。

 

入力した瞬間に動くのではない。

思考そのものが、機体の挙動へと直結している。

 

人間の限界が、そのまま機動の限界になる。

いや――

それすら、超えている。

 

最初の一機。

デザルグが反応するよりも早く、懐へと踏み込む。

 

腕部固定武装、展開。

 

照準――不要。

 

引き金を引いた瞬間、敵機は既に射線上にいる。

 

閃光。

 

三角の機体が、内側から弾け飛ぶ。

 

「――一機」

 

止まらない。

旋回。

否。

 

向きを変えたと思った時には、すでに次の位置へいる。

 

二機目。

 

レーザーオーブガン、起動。

 

出力上昇。

 

警告が走る。

 

だが、無視する。

 

「合わせろ……!」

 

思考を叩き込む。

 

照射。

 

収束された光が、一直線に敵機を貫く。

 

回避は、不可能。

装甲ごと焼き切り、爆散。

 

残るは――二機。

 

距離を取るように、同時に後退する。

 

「……逃がすか」

 

踏み込もうとした、その瞬間。

 

動きが、止まる。

敵も、動かない。

わずかな静寂。

互いに、出方を窺う。

 

機械同士ではない。

獣同士の、間合い。

 

「……来いよ」

 

呟き。

 

次の瞬間――

 

三つの影が、同時に消える。

 

衝突。

 

閃光と爆音が交錯する。

 

ゼロは一瞬で間合いを詰め、片方へ肉薄する。

 

腕部武装、連射。

 

だが、敵も反応する。

ギリギリで回避。

 

もう一機が側面へ回り込む。

 

「――見えてる!」

 

機体を捻る。

常識ではあり得ない角度。

フレームが悲鳴を上げる。

 

そのまま、レーザーオーブガンを叩き込む。

 

出力、最大。

 

警告――無視。

 

発射。

 

至近距離。

 

逃げ場はない。

 

光が、敵機を飲み込む。

爆散。

 

残り一機。

 

だが――

 

「……っ!」

 

警告が、鳴り止まない。

 

出力過剰。

温度上昇。

各部限界。

 

それでも、踏み込む。

 

「まだだ……!」

 

最後の一機が突っ込んでくる。

光一は、笑う。

 

「付き合えよ……!」

 

スロットル、全開。

限界を、越える。

 

機体が軋む。

視界が白く焼ける。

 

それでも――止まらない。

 

ゼロは一直線に突っ込む。

回避など、考えない。

 

交差の一瞬。

すべてを叩き込む。

 

閃光。

爆発。

最後のデザルグが、崩れ落ちる。

 

静寂。

 

「……終わり、か……」

 

その声と同時に――

出力が、一気に落ちる。

 

警告音が、断続的に響く。

各部、オーバーヒート。

 

制御系、限界。

ゼロは、沈黙し始めていた。

 

その時。

残存していたデザルグの機影が、遠ざかる。

 

撤退。

 

「……これ以上は、割に合わないってか……」

 

追う力は、ない。

光一は、力なく背もたれに沈む。

視界が、暗くなる。

 

「……これで……いい……」

 

意識が、途切れる。

 

ガーランドゼロは――

戦場の只中で、立ち尽くしたまま。

完全に沈黙した。

 

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