メガゾーン23 中川真二「7G -最初の接触-」 作:tell M.G.
「……何だ?」
真二は、停止したままのガーランドの上で固まっていた。
確かに聞こえた。
声が。
外部スピーカーでも無線でもない。
まるで、直接頭の中に響くような感覚。
「誰だ……どこから……?」
思考が追いつかない。
その時――
「7Gのオペレーター、応答願います」
再び、同じ声。
次の瞬間、メーター部のディスプレイが淡く発光した。
「!?」
画面に映し出されたのは、一人の女性。
長い髪。無機質でありながら、どこか人間らしい表情。
だが、その存在は明らかに“現実”ではなかった。
「……何だ、これは……」
真二は息を呑む。
理解できない現象を前に、身体が動かない。
「7Gのオペレーター、応答願います」
三度目の呼びかけ。
「……あ、はい!えっと……どうぞ!」
反射的に答えてしまう。
すると、女性は静かに語り始めた。
「私はイヴ。
人類によって作られたプログラミングです」
「プログラム……?」
現実感が、さらに遠のく。
「あなた方人類は、狙われています」
「――!」
真二の心臓が大きく跳ねた。
「それを阻止するため、私は創られました。
ですが今、私は“解除”されようとしています」
「解除……?」
「私が解除されれば、防衛システムは失われます。
あなた方を守ることができなくなります」
言葉の一つ一つが重い。
だが、その意味を完全に理解するには、情報が足りなすぎた。
「どうか……助け――」
その瞬間。
――ザザッ……!
激しいノイズが走る。
映像が乱れ、音声が途切れる。
「おい、待て!どういう――」
言葉は最後まで続かなかった。
画面は暗転し、何事もなかったかのように沈黙が戻る。
⸻
「……何なんだよ、今のは……」
静まり返ったテストコース。
真二は呆然と呟く。
イヴ。
7Gのオペレーター。
解除。防衛。
断片的な単語だけが頭の中で反響する。
「オレが……オペレーター?
このバイクが……関係してるのか……?」
答えは出ない。
ただ一つ確かなのは――
すべてが異常だということだった。
⸻
真二はガーランドを倉庫へと戻した。
エンジンを切った後も、どこか“見られている”ような感覚が消えない。
そのまま足早にデスクへ戻る。
だが、事務所には誰もいなかった。
「……なんだよ、このタイミングで……」
独り言が、やけに大きく響く。
真二は席に座り、ガーランドの技術データを呼び出した。
画面に並ぶ無数の項目。
だが、その多くが理解不能だった。
「マニューバ……スレイブ……?」
聞いたことのない単語。
さらに目を引いたのは――
思考伝達装置による制御
「思考で……操作?」
思わず声に出る。
もはやバイクという枠組みを完全に逸脱していた。
読み進めるほどに、確信が強まる。
「……普通じゃない」
「だから……極秘兵器……」
点と点が、ようやく繋がりかける。
だが同時に、恐怖も膨れ上がる。
イヴの言葉。
“人類が狙われている”という警告。
そして、自分が関わってしまったという事実。
「……無理だろ、こんなの……」
一人で抱えられる話ではない。
「誰かに……伝えないと……」
だが――
「誰にだ……?」
会社の人間か?
上司か?
それとも――
信用できる人間はいるのか。
真二は頭を抱えた。
答えは、どこにもなかった。