ゲヘナに棲まう龍   作:初心者先生

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次から日付変わったタイミングで更新します。


龍狩りに抗うは龍の務め

大人しくついていけば良かったのになんで拒否ったんだ俺。

そんな自分に対する疑問を抱えながら今まさに撃ってくる風紀委員会達に対抗するべくバッグの中から昨日やり合ったスケバンの中でも特に偉そうにしてたやつからぶんどったFN Five-SeveNを取り出し射撃……うーん、マズルジャンプ自体は余裕で抑え込められるんだけどやっぱり練習してないからかあんまり当たらない、10発撃ってヒットが3発とは。それに全く効いた様子もないし。

 

(まぁ追々って奴だな……()()()()()()()()()()!)

 

グッと足に力を込めて踏み込み、メキメキと唸る筋繊維を抑え込んで力を溜め込みそれを一気に解き放つ。踏み込んだ地面を砕きながら銃弾さながらの勢いで肉薄し風紀委員のモブの子の顎に掌底を叩き込んだ。

 

「せいっ……!」

 

「がぇっ!?!??」

 

「なっ、どうやって今の距離を!?」

 

「普通に走っただけだ!!」

 

掌底をぶち当てたことで盛大に仰け反ったので追加でパンチを1発叩き込んで吹き飛ばした後、そのまま姿勢を素早く下げて足払い、鋭く振り抜かれた脚が猛烈な勢いで周囲4、5人の体勢を崩す。転けた拍子に手が緩んだ子から銃を奪い取り転んだ子達の顔面に銃弾を撃ち込んでいく。

流石にこの距離なら外すことはない、接射はいくら頑丈なキヴォトス人であっても割と効くというのはここ数日繰り返していたスケバン襲撃で把握済みだ。けど完全に動かなくなるわけではないので念には念を入れて1人あたり3、4発ずつ撃ち込んでいく。弾倉が空になった銃を放り捨ててFive-SeveNを素早くリロード、いくらあまり撃たないとは言え撃てないよりは遥かにいいと言うことを数日間スケバンちゃん達とやり合ったことでよく学んだ。

 

「ほ、報告通り銃弾が全く効いていない……!」

 

「ホローポイント弾なのに……!?ヒナさんでもなければノーダメージなんてあるわけ……!」

 

ん、今何発か銃弾喰らったか?全く効かないのも問題だよなぁ……というか今ヒナ「さん」って言ってた?委員長にはまだなってないのかな、まぁそれは後でいいか。

尻尾で地面を叩きその反動で跳躍、素早くバッグの中からグレネードをいくつか取り出しばら撒いていく。ただしこれはグレネードはグレネードでもスモークグレネードだ。

 

「スモーク!?」

 

「落ち着いて!!下手に撃てば味方を誤射しかねない!」

 

優れた聴覚が音の発生源を突き止め、嗅覚が火薬の臭いを嗅ぎ出す。耳の方は最初から余裕だったけど鼻の方は慣れるまではダメだったなぁ、流石学園都市キヴォトスそこらじゅうに火薬の臭いがこびり付いてて新しいものかどうかの判別が全くと言っていいほどつかないんだから。

 

着地、からの再接近。煙幕で混乱し指揮系統も盛大に乱れた風紀委員達に確実に行動だけを止める一撃を叩き込んでいく。具体的には肩や手首なんかをメインに銃を扱えない程度にダメージを与えるのがベスト、最初の1発は周囲に肉弾戦を行うという動揺を誘うために仕方なく顎と腹に一撃ずつ入れたが感触的に顎は間違いなく砕いていない、……肋はもしかしたらヒビくらいなら入ってるかも、本当にすまないと思ってる。

 

(手加減必須だな、またやりすぎて骨折ったとか内臓()を傷つけたなんてことしたら罪悪感で死ぬ)

 

最初力加減が全くできなくてスケバンちゃん達の骨を折ってしまったのは若干のトラウマだ、まさかあそこまで自分の力が強いとは思ってなかったからな。必要最低限行動不可に追い込む程度の威力に留め、身体よりも銃を狙って破壊していく。何せ――――

 

「銃はいくら壊しても心が傷まないからなァッ!!!」

 

「ひ、ひぃっ……!!?」

 

「ば、バケモノ……!」

 

「今日それを聞いたのはこれで6回目だ!!」

 

何度も何度もバケモノ呼ばわりしやがって、そろそろ悲しいとか通り越して泣いちゃうぞ俺。とりあえずバケモノ呼ばわりしたそこの青い髪の君は非常に辛いけど他の子より念入りにやっておこう。

 

腹に拳を叩き込んで手から銃が離れた瞬間奪い取り弾倉が尽きるまでありったけぶち込む、動かなくなったのでオッケー、2度とバケモノって呼ばないでください。

 

「ちょっ、あの子大丈夫!!?」

 

「よくもその子を!!」

 

「新しく入ってきた子にトラウマ植え付けないで!!」

 

新入りの子をさらっと駆り出してるのも大概では?いやそれにしても突如罪悪感が。今度会えたら何かお詫びでもしよう、いやそもそもこんなことした俺を近寄らせてくれるかどうかも怪しいな……土下座か?

 

銃弾を浴びながらそんなことを考えつつまた踏み込んで接近戦に持っていく、スケバンの子達は近づいたらそれだけでガタガタになってたけどこっちは違うね、近づいたら近づいた分だけ距離をちゃんと取ろうとしてる……まぁ間に合ってないけど。蹴り、拳、尾。時々銃。あんまり精度は高くないけどやっぱり遠距離攻撃は無いよりマシだね。

…………あ、よく見たら俺の周りにいるこの子達だけで最後じゃん、それじゃあ最後はこれで決めちゃおうか。

 

「ふんっ!!!」

 

360度回転による尾の範囲攻撃、振るわれた尾が空気を押し裂き踏ん張ることも反応することも許さず周囲にいた子達を盛大に薙ぎ払い吹き飛ばしていく、もう立ち上がってる子はいないよね?さて後はこの子達に俺の所属クラスのことでも聞こうかな、名前が割れてるってことはその辺とかも把握してそうだし。いやでも変に時間かけて増援駆けつけるよりか、は……。

 

「驚いた、思ったより速かったな」

 

「連絡があったから授業を抜けて来てみたら……やったのは貴女?…………燐堂ルカ」

 

白い髪、俺のものよりも遥かに巨大で禍々しいツノ、立体的なヘイロー。服装や持ってる銃が知っているソレそのままというわけではないけど……俺は彼女を知っている。

 

「空崎ヒナ……!!」

 

「……あら、知ってるのね。調べてみたら新入生だったのに」

 

「すまないその話を詳しく聞かせてほしい、というより俺の今の所属しているクラスの方を答えてほしい」

 

「え?……1-Dらしいけど」

 

おいおいマジかよ素直に答えてくれるしここ2時間ほど悩まされてた問題が一瞬で決着ついたぞ、ヒナになら連行されたって良いんじゃないか?

感極まって心の中でガッツポーズを繰り出す中こほんと咳払いをしたヒナが俺に向かって銃口を向ける。

 

「これだけの人数倒されたら流石に強制連行するしかないわ、数日は家に帰れないものと思って頂戴……制圧を開始する」

 

「おいおい冗談だろ…!?」

 

まさかの第2ラウンドですか、ええいやってやるよこんちくしょーーー!!

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

「かった…!?」

 

「肉弾戦、中々見ないけど…私には無意味よ」

 

今まで相対してきた全てを薙ぎ払ってきた腕の一振りが自分より二回り以上は小さい少女に平然と受け止められたことにルカは思わず驚愕の声を漏らす。当の受け止めた本人は内心冷や汗をかいていたが。

 

(今の、受け止めたから良かったけどノーガードで直撃したら私でもかなりのダメージになるわね…近寄らせないのがベストかしら)

 

速やかにそう結論を出し未だ終幕には至らずとも数々の敵を打ち砕いてきた己の相棒たるデストロイヤーを振り抜く、回避行動を取ったルカに対してヒナ自身もバックステップで距離を取り翼を地面に突き刺しトリガーを引く。紫色のマズルフラッシュと共に全てを破壊し尽くす弾丸が放たれ、着弾するも。

 

「……冗談でしょ?」

 

「俺の体は殊更頑丈でな…生半可じゃ傷1つ付けられないと思うことだ、なっ!!!」

 

「ッ!」

 

全くのノーダメージ、今までヒナの攻撃に耐えてみせた敵は少ないが存在自体はした、しかし今回のような事態はヒナにとって初めての事象でありほんの一瞬だけだが動きが固まる。

そしてその隙を一切の容赦無く刈り取らんとルカが石畳を盛大に踏み割りながら肉薄し振りかぶる。ヒナが咄嗟に拳を警戒して手を前に翳した次の瞬間、横から今まで喰らったことのない衝撃波染みた一撃が小さな体躯に襲いかかった。

 

「ぐっ……!?」

 

「拳だけ警戒しておけば良いってものじゃあ、ないからなぁ!!」

 

ルカの強味、拳、脚に続く第3の凶器たる尻尾は彼女の意のままに駆動し敵を薙ぎ払う。吹っ飛ばされた体をデストロイヤーと翼で支えたヒナにルカは反撃の隙を潰さんと再度接近し拳を叩き込む。

 

「やる、わね……!!?」

 

「片腕だけでデストロイヤー(それ)持って俺のパンチ受け止めていられる方が驚きだよ…!!んっ!?」

 

「殴る蹴るは貴女の専売特許じゃないのよ」

 

「ごもっとも…!?」

 

一瞬の力と力の比べ合いはヒナの前蹴りによって強制的に解除される、まさか蹴られるとは思っていなかったルカは思わず距離を離してしまいうげ、と苦い表情を見せた。そしてヒナは今がチャンスと判断、ある程度自らに掛けていたリミッターを脳内で外しながら宣言した。

 

「今度は本気でやる」

 

校舎へのダメージ、授業中、対個人。それら全ての風紀委員として勘案すべき事象を頭から放り捨てて告げるは2年生にしてゲヘナ最強と目される少女の全力。翼を今までより深く深く突き刺し腰を落とす、銃に神秘を込め、紫どころかドス黒い漆黒すら纏い始めた銃口からもはや弾とも呼べないビームと形容する方が相応しい一撃が放たれる。その実態は人間には認識できない速度で行われる速射であり、巨大な弾丸が絶え間なく襲いかかる文字通り必殺の一撃でもある。

 

そしてそれをこともあろうにルカは真正面で受け止めた。

 

「…………ッ!流石に少しは響くな…!!?」

 

「その程度の感想で済ませないで貰えるかしら……!!」

 

弾幕にも限度が存在する、いくら強いとはいえ銃にも装弾数という限界値が当然存在しているしヒナ自身も延々と神秘を込め続けられる訳ではない。

そうして弾幕が途切れ煙が晴れた先に居たのは土埃を払って手を確認し「火傷したか…?」などとどこかズレたことを述べながら平然としているルカだった。

 

「………めんどうくさい」

 

「面倒くさいと思うのなら話を聞いてくれないか??」

 

デストロイヤーのリロードを行いながらそう呟くヒナにそう声をかけたのは英断であったと、この後ルカはそう言い切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

いやもうほんとに、さっきも伝えた通りなんですけどね。

 

「抵抗したのはともかくとして、先ほども伝えたんだが何か悪いことをやった覚えがない。理由も無しに連行されては堪らないんだが」

 

「……貴女が壊滅させたスケバングループの1つ、ブラックマーケットにある私たちがマークしている企業と繋がりがあったの。捕まえたグループメンバーに話を聞いてみたら全く素性の分からない貴女が浮かび上がったんだもの」

 

あーーーー、そうなると確かに俺のことを連行しようとするのも分かる、というか俺が風紀委員会ならまず間違いなく一旦は拘束しようとする。事情さえ説明してくれたら普通に着いて行ったんだけどな……。

 

「最初からそれを言って欲しかったな、こっちは何の事情説明も無しにいきなり連行だの拘束だのと言われれば当然抵抗せざるを得ない。というかそのスケバングループってもしやヘルメットに蛇のマークが入っていたりはしないか?」

 

「………っ、ええ、そうよ。蛇無蛇無(ジャムジャム)団、最近メンバーを急激に増加させて勢力を拡大してたグループ」

 

「やっぱりそうだったか。襲った中で一際人数多いグループがあって少し気になっていた」

 

というかこのFive-SeveNの出所はそこだし。と、なるとだ。

 

「俺の身の潔白の証明にはどうすれば良い?諸々奪い取ったんで正直何を見せれば俺は無関係だという証明になるかがさっぱり分からん。ただ特に第三者から雇われて襲ったわけでもないからその辺を突かれ続けても否定の言葉しか出ないが」

 

「……本当に雇われの類ではないのね?」

 

「当たり前だろう、ここ数日でゲヘナの裏路地は回ったがブラックマーケット近辺にはこれまで1度たりとも近付いていない、必要ならば家の中だろうとスマホの中だろうと探ってもらったって構わないくらいだ」

 

嘘です家宅捜査だけは勘弁してください、別に何かやましいものを隠してるとかそういうわけではないけどここ数日で既に若干荒れてるんです。せめて少しくらい片付ける時間をください。

 

「…………そう、それじゃあ、弾薬と奪ったなら銃を見せて。グループ単位で使ってるものがあったはずだから」

 

「今俺が運用してるFive-SeveN(これ)とバッグの中に入ってる予備の銃、弾薬が丸々そうだ。調べた限り1番状態が良かったんでそのまま使わせてもらっていた」

 

弾倉に残っていた弾を全て抜いてからFive-SeveNをバッグの中に突っ込んで投げ渡す、丸腰であることの証明に両手を上げてアピールもしておくか。

 

「…………確かに蛇無蛇無団が使ってる武器と弾薬ね。分かったわ、とりあえずは信用してあげる。それと今回の襲撃、風紀委員会(うち)の子達と……私自身が迷惑をかけてしまったことを謝罪するわ」

 

バッグの中を確認したヒナがずーーっと突きつけてきていた銃口を下ろし、居住まいを正して深く頭を下げてきた。

 

「まぁ迷惑と言えば迷惑だったがおかげで自分のクラスがどこか知れたと思えばいい。それでは俺はかなりの遅刻ではあるが自分のクラスに向かわせてもらうとする」

 

あぁようやっと解放された、冷や汗が止まらんかったからなマジで。流石にヒナ程の生徒と戦闘するとなるといくら肉体スペックが高いとはいえ不安はあったからな、弾丸やらはちゃんと受け止められたしほとんどダメージにはなってなかったけど最後のやつはちょっと本気でヒヤッとした、今まで擦り傷も受けなかったというのに火傷とは。

 

「ただ、それとこれとは話が別」

 

「……はい?」

 

「完全に潔白が証明できるまでは拘束させてもらうわ。……そう悪い待遇にはしないし長くとも3日で終わると思うから。大人しく着いて来てもらえると助かるわね」

 

えぇぇぇ嘘ぉ……断れないやつじゃんそれ。逆にここで断ったら怪しい扱いでそれこそ本腰入れて風紀委員会フルメンバーで襲いかかってきたっておかしくない、となればまぁここは従うしかない……くそぅ、俺は自分のクラスに行きたいだけだってのにどうしてこんな目に遭わなければいけないんだ。

 

「…………はぁ、分かった、着いていこう。風紀委員達を叩きのめしてしまったのも事実だしな。数日我慢するだけで良いのなら従おう、ところで授業はきっちり受けさせてもらえるのだろうか」

 

「珍しいわね、ゲヘナの子が真面目に授業なんて台詞を言うだなんて」

 

「…………?学生である以上勉強するのは当然のことでは??」

 

「……変わってる。そうね、リモートで良ければ参加できると思うわよ。……それじゃあ着いてきて頂戴、そこで転がってる子達はその内別の応援がやってくると思うわ」

 

「わかった」

 

そう言われて俺は大人しくヒナの後ろをついていくことになったのだった。

 

 




ルカが戦闘を止めにかかった理由はシンプルに「これ以上話をややこしくしたくない」の一点に尽きます。初手から目つけられてたのは知らないので残念なことにこの時点でまぁまぁ話はややこしくなってますが。

あとは無意識的に本気を出すことにめちゃくちゃブレーキをかけてます、300km近い速度で走れるバイクで原付並の速度出してる感じ
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