ゲヘナに棲まう龍 作:初心者先生
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拘束された後はいくつかの手続きの後自宅よりかはほんの少し手狭なものの十分な程の広さの部屋を案内され、昼からの授業にリモートで参加することとなった。といってもBDによる授業だから貰ったBDをパソコンで流すだけなんだけどね。
お昼ご飯は普通に届いたのでありがたかったし美味しかった、多分「悪くない」どころの待遇じゃないと思う。授業が終わった後は呼び出されていくつかの事実聴取を挟み、その全てに正直に答えていく作業に終始した……流石に入学式から数日何故休んでスケバンを相手に暴れ回っていたかの質問は濁したが。
当然ではあるのだがそこだけはあんまり信用されなかった、そりゃそうだろうな学園までの道が全くわからなくていろんな道を片っ端から歩き回っていただなんて。聴取を担当していた子からは「寮暮らしをお勧めします」なんて言われてしまった、残当。
後はボコボコにした子達への謝罪、理由説明もない状況での抵抗とはいえ全員の体に傷をつけてしまった以上必要だと思ってヒナに伝えると凄い変な顔をされた、そんなにおかしいことだったのだろうか。
「本当に変わってるわね、貴女。普通のゲヘナ生はそんなこと絶対に言わないもの。……それに、ちょうど良かった。着いてきて」
そう言われてヒナに着いていく、部室棟(どうやら俺に用意された部屋は風紀委員会の使われていない部屋を少し改装したものらしい)から出て少し歩いた先の建物、その中に入りある一室の前で止まった。
「ここ。…………ちょっと驚くかもしれないわね」
「?それは一体どういう」
「入ればわかるわよ。……みんな、来たわよ」
「……?失礼す―――」
「「「「すみませんでしたぁ!!!!!」」」」
うぉびっくりした。見ればベッドの上で全員土下座してるではないか、待て待て待って。なんで?
「不良グループを単独で壊滅させたと聞いて凄まじく強引な手段に走った挙句に誤解……!!風紀委員会として恥ずかしい!!改めて大変申し訳ございませんでしたぁ!!!!」
「……いや、まぁ、俺もかなり雑に対応してしまったから……それより、怪我の具合は?」
「あ、一応ここにいるのは骨が折れてたりとか内臓に傷がついてるとかそういう損傷は全くないです。怪我した中でも特に軽傷で他の部屋の子も打撲やら擦り傷くらいなもんですね、殴られた部分はなんかすっごい腫れてますけど」
「そう、か。手加減はある程度上手くいって……待て。
「あーーーー……えっとですね、ルカさんをバケモノ呼ばわりした子がちょっとキツめの治療を受けてますね」
「…………やはりあの青髪の」
まぁうん。何となく多分あの青い髪の子だろうなっては思ってた。一瞬とはいえ日に何度もバケモノ扱いされてイライラが溜まって……ほんの少し暴発させてしまった。
俺の我慢が足りなかったせいで女の子に傷を負わせてしまった。
「意識とかは全然大丈夫ですから!!痛いとは言ってたけど!!」
「…………………」
意識不明の重体とか生死を彷徨っているみたいな状況になっていないだけマシなのか?いやにしたって割と本気で殴ったしその後もガッツリワンマガジンぶち込んだからな……他の人に比べたらかなり大きいダメージを負わせてしまったはず。これはもう
「切腹……」
「切腹!?」
いや切腹はなしだ、というか今の俺の肉体強度で刃が通るとは思えない。
「冗談だ。……ところで、謝罪をしたいと思っているのだが。俺は恐らく嫌われているだろうし手紙か何かを書こうかと思っている。名前を聞いても構わないか?」
「え?名前?天雨アコって言うんですけどえっどうしたんですかルカさんそんなすごい速度で崩れ落ちて!?」
あの子アコかよ!!!!なんかちょっぴり見覚えあるような顔はしてるなと思ってたよ!!!!気づかなかった!!ほんっとうに気づかなかった!!!あいつ横乳の呼吸孔はどこにやったんだよアイデンティティが喪失してたぞ!?!ええい俺、立つんだ俺。何とか立ち上がった俺をベッドから心配そうな目で見つめる風紀委員会の面々に何とか笑顔を向けながら立ち上がる。
「……ありがとう。快復されて業務に復帰したと聞いたら今度何かお詫びの品を風紀委員会に持って行かせてもらう……ヒナ」
「もういいの?」
「あぁ」
そう返事を返しながら入口に向かい、振り返ってもう一度頭を下げてから部屋を後にする。
「どう?思ってたよりは好意的だったでしょ?」
「そう、だな。自分で言うのも何だがかなり手酷くやったから……正直謝りに行っても拒絶されるだけかと思っていた」
「あの程度で拒絶なんかしてたら風紀委員なんて務まらないわよ、みんな。むしろ勘違いと説明不足で貴女に戦闘を仕掛けたことの方を後悔してるわ」
いやまぁ説明はもうちょいしっかりやってほしいとは思ったけどね?うん。
あれから数日。家の調査(俺の立ち会いあり)やら潰したスケバングループについての事情聴取やらが済んだので俺は無事外を歩いて良いとの許可をいただいたので久しぶりに帰宅し(事情聴取担当の子から「もうここに住んだ方が迷わなくて済みますよ」と言われた)ベッドでぐっすり眠った後身支度を整え登校、無事に教室へと辿り着いていた。のだが。
「え、えぇと、だな。少し離れてくれると助かるんだが……?」
「ねぇねぇこの前風紀委員会とドンパチやり合った生徒って貴女のことでしょ!?もう校内中の噂だよ!!」
「風紀委員会30名近くとやり合ってノーダメージかつほぼ素手で全員制圧……!本当にやったの!?」
「何で素手!?」
「いやまぁやったにはやったが……」
「ウチ窓際の席だったからたまたま見えたんだけどさぁ!めちゃくちゃかっこよかったよ!あ、名前なんて言うの?」
「り、燐堂ルカ……」
「ルカ!苗字も名前もかっこいー!」
「ありがとう……?」
「あ、ねぇねぇ新しくできたカフェとか行ってみない?もっとお喋りしよーよ!」
「え、えぇっと……!!」
JKってこんなマシンガントークなの!?!
登校して教室に着いて、特にやることもなくて拘束中に風紀委員の子に教えてもらってインストールしたソシャゲをのんびり触っていると不意に声をかけられてからのこれ。ゲヘナだからか?全員距離の詰め方が鬼すぎる。いやまぁ完全無視とかよりはよっぽどマシなんだけど!!
「ほらほらみんな〜、ルカちが困ってるよ〜!」
「ルカち???」
今まで呼ばれたことのない呼び方をされたことに驚きつい振り返る、そこにいたのは……えぇと、確か。
「夜桜キララ、だったか?」
「え、あたしの名前!何で知ってんの〜?」
「クラスメートの名前は大体覚えてるから」
嘘です、いやまぁ半分はほんとだけど。クラス名簿確認した時ネームドの子がキララとエリカ、あともう1人……はまだ来てないか。それ以外もまぁ割と何となく名前だけはちゃんと覚えたからあとは顔と一致させるだけ、円滑なコミュニケーションにはまず人の顔と名前をきっちり把握しておくことが大事だからな。
「覚えてるの!?すご〜!!でさでさ、ルカちほんとに風紀委員会と戦って勝ったの!?」
はぁ、と息を一つ吐いて少しだけ気合を入れる。今までの少ない人生経験でもわかる、多分これは……始業のチャイムまで止まらないやつだ。
「勝った、と言われれば怪しいけどな。結局ヒナ……あ、ヒナ先輩相手は流石に降参したし。ついでにさっきの質問にも答えるけど、俺は銃の扱いがそこまで上手くなくて体を動かす方が今のところ戦いやすいんだ」
「ルカちゃん尻尾おっきいね!」
「大きくてよく物にぶつけたり引っ掛けたりするから不便なことも多いんだけどな……あまり触らない方がいい、鱗が鋭くてな、怪我をするかもしれない」
他にもいくつかの質問に丁寧に答えていって、最後に集まっていた全員に言う。
「色々あって大体……1週間か。遅れてしまったがどうか俺と仲良くしてくれると助かる。それとさっき俺のことをカフェに誘ってくれた子、ぜひ行かせて欲しい」
「おっけー!もっと色々聞きたいしね!」
「あ、ずるい!!私も行きたい!」
「私も〜!!」
「あたしも!」
「…………あれ、キララ昨日金欠がどうこうって言ってなかったっけ?」
「明日のあたしが頑張ってくれるって!」
「……俺にあだ名を付けてくれたお礼に奢ろう、キララ」
「え!?ほんと!?ルカち最高すぎ〜!!」
「うわっ!?」
ガバッと抱きついてきたキララに面食らいながらしっかりと受け止める、屈託なく名前の通りキラキラと笑う彼女を見て思わず笑ってしまう。あぁ、ここはいいところだなと、そう思いながら。