メガゾーン23 二つのガーランド「交差」   作:tell M.G.

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第4話 榊原光一編 飼い慣らされた力

 

静寂。

 

格納庫の空気は、これまでとは違っていた。

幾度となく繰り返された調整。

出力制御。

リミッターの最適化。

 

そして——

新たな制御系の導入。

 

その全てを経て。

ガーランドゼロは、ようやく“形”になりつつあった。

 

 

「最終調整、完了」

 

オペレーターの声が響く。

 

「出力リミッター、安定。

 制御系、正常稼働」

 

 

コクピットの中で、榊原光一は静かに目を開いた。

 

「……行くぞ」

 

接続。

機体との同期。

思考と機体が“重なる”。

 

スロットルを入れる。

——滑らかだ。

 

かつて感じた暴力的な跳ね上がりはない。

出力は抑えられ、制御の枠内に収まっている。

だが——

 

「……死んではいないな」

 

必要な瞬間に、必要なだけ出る。

過剰ではない。

不足でもない。

機体が応える。

 

まるで——

長い間暴れていた獣が、ようやく手綱を受け入れたかのように。

 

「各部安定。問題なし」

 

「機動テスト、全項目クリア」

 

通信の声が続く。

 

光一は静かに息を吐いた。

コンソールに手を置く。

わずかに目を細め呟く。

 

「……飼い慣らした、か」

 

その言葉は、静かに格納庫へと落ちた。

 

だが

それは決して

“完全な制御”ではない。

リミッターは、確実に力を削いでいる。

 

本来の出力。

本来の速度。

本来の挙動。

 

その全ては、まだ奥に眠っている。

 

「最大出力は抑制状態。

 現行設定が最適と判断します」

 

オペレーターが告げる。

 

「……ああ」

 

光一は短く答えた。

 

これ以上を求めれば、制御は破綻する。

これ以下では、意味がない。

 

その“境界線”こそが——

この機体の完成形だった。

 

後に、この機体は一つの名で呼ばれることになる。

 

制御された力。

抑え込まれた本能。

 

“飼い慣らされた豚”。

 

——ヴィルデ・ザウ。

 

だが、その力はなお過剰だった。

 

「一般兵への適用は……難しいか」

 

通信の声。

誰も否定しない。

それが現実だった。

 

高度な制御系。

極端な応答性。

そして、未だ底を見せない出力。

 

「扱える人間が限られすぎる」

 

別の声が言う。

光一は、ゆっくりと機体を見上げた。

 

「……そりゃそうだろ」

 

これは、万人のための機体ではない。

 

選ばれた者だけが扱える——

“牙を残したままの力”。

 

それは戦場において、絶対的な切り札となる。

だが同時に——

 

運用の幅を大きく制限する存在でもあった。

 

沈黙の中。

誰かが、ぽつりと呟く。

 

「……宇宙での運用を考えた場合」

 

別の声が続く。

 

「現行のスペースハーガンでは、火力も機動力も不足している」

 

「だが、この機体をそのまま回すのは現実的じゃない」

 

議論が、始まる。

 

光一はそれを聞きながら

静かに目を閉じた。

 

「……なら」

 

小さく、呟く。

 

「最初から“別物”として作るしかない」

 

その一言で、空気が変わる。

誰もが理解した。

これは“完成”であると同時に——

 

“次”への始まりだということを。

 

格納庫に佇むゼロ。

その巨体は、もはや暴れることはない。

だが——

 

その奥に眠る力は、決して消えてはいなかった。

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