メガゾーン23 二つのガーランド「交差」 作:tell M.G.
金属音が、規則正しく工場内に響いていた。
工具がぶつかる乾いた音。
油の匂い。
焼けた金属の熱気。
戦争が終わったわけではない。
だが、あの戦いの後——少なくともここは、静かだった。
佐原修二は、作業台に広げたパーツを無言で見つめていた。
ガーランドの一部。
正確には、かつてガーランドだった残骸。
「……派手にやられたな」
小さく呟く。
ガーランドシックス。
その戦闘で回収された部品は、もはや修復というレベルではなかった。
だが、それでも——
「まだ使える」
手に取ったパーツを、光にかざす。
癖、摩耗、歪み。
全てが“戦いの記録”だった。
その時、背後で足音が止まる。
「佐原修二だな」
振り返ると、軍の制服を着た男が立っていた。
見覚えはない。
「……誰、ですか?」
ぶっきらぼうに返す。
男は気にした様子もなく、小型端末を差し出した。
「統合管理局からの召集だ」
その一言で、空気が変わる。
佐原は端末を受け取り、目を通す。
簡潔すぎる文面。
——新規開発チームへの編入命令
「……俺が?」
思わず口に出る。
「整備ですよ、俺は」
男はわずかに肩をすくめた。
「だからだ」
短い答え。
「ガーランドに関する知識を持つ人員が必要だ」
佐原は眉をひそめる。
「だったら他にもいるでしょう」
「“シックスまで触っていた人間”は限られる」
即答だった。
言い返せない。
佐原は端末を閉じ、ポケットに突っ込む。
「……で、何作ってるんですか?」
男は一瞬だけ間を置いた。
そのわずかな沈黙が、ただ事ではないことを物語っていた。
「新型機だ」
それだけ。
だが、十分だった。
佐原は小さく息を吐く。
「……またガーランドか」
男は否定しなかった。
その代わりに、こう言った。
「今までのものとは違う」
その言葉に、佐原の目がわずかに細くなる。
違う——?
頭の中で、これまで触ってきた機体が並ぶ。
ワン、ツー、スリー……シックス。
構造、変形、駆動。
どれも同じ“系統”の延長線上にあった。
だが、それを否定するような言い方。
「……何が違う?」
問いかける。
男は背を向け、歩き出した。
「来れば分かる」
それだけ言い残して。
佐原は数秒、その背中を見つめる。
そして——
作業台の上のパーツに、もう一度視線を落とした。
ガーランド。
自分が触ってきた機体。
理解しているつもりだった。
「……違う、か」
小さく呟く。
その言葉の意味を確かめるように。
工具を置き、手袋を外す。
迷いはなかった。
「わかりました……見せてください」
静かな工場に、再び足音が響く。
その先にあるものが——
自分の知る“ガーランド”とは別物であるとも知らずに。