メガゾーン23 二つのガーランド「交差」 作:tell M.G.
格納庫に、いつもより多くの人間が集まっていた。
並ぶ機体は三機。
いずれも同型——ホバー走行型ガーランド。
その中心に、佐原修二は立っていた。
腕を組み、静かに機体を見上げる。
「……増えましたね」
隣に立つ主任が答える。
「量産を前提とした試作ロットだ」
「なるほど」
軽く頷く。
視線は機体から外さない。
⸻
「本日より複数パイロットによる同時テストを行う」
アナウンスが響く。
選ばれたのは三名。
ベテランが二人。
そして——佐原。
「よろしくお願いします」
他のパイロットに軽く頭を下げる。
「こっちこそな」
短いやり取り。
だが、その目にはわずかな緊張がある。
新型。
未知の挙動。
それは誰にとっても同じだった。
——テスト開始。
三機が同時に起動する。
低い駆動音が重なり、空間が震える。
最初に動いたのはベテランの一人。
機体が浮く。
だが——
「っ……!」
わずかにバランスを崩す。
そのまま立て直すが、動きは硬い。
⸻
もう一機。
こちらも浮上は成功。
だが加速に入った瞬間——
機体が横に流れる。
「くそ……!」
急制動。
完全には制御しきれていない。
「……」
佐原はそれを黙って見ていた。
違う。
やっぱりそうだ。
「行きます」
一言だけ告げる。
自分の機体に乗り込む。
起動。
浮上。
——安定。
「やっぱ、ここは……」
小さく呟く。
腰で合わせる。
力を入れない。
スロットル。
前へ。
滑る。
自然に。
「……いけますね」
軽く加速。
旋回。
減速。
すべてが“流れる”。
他の二機とは、明らかに違う。
「なんでだ……?」
誰かが呟く。
テスト終了。
三機が停止する。
格納庫に降りると、空気が重かった。
「佐原」
主任が呼ぶ。
「はい」
「なぜお前だけ扱える」
直球だった。
佐原は少しだけ考え
頭を掻いた。
「なんででしょうね」
苦笑する。
「ただ……」
言葉を選ぶ。
「無理に動かそうとすると、ダメですね」
周囲が静まる。
「浮いてる分、ズレるんで」
「だから……」
少し視線を上げる。
「機体の動きに合わせるっていうか」
「流れに乗せる感じでやると、うまくいくっぽいです」
沈黙。
ベテランの一人が言う。
「そんな感覚的な話で……」
「ですよね」
佐原は苦笑する。
「俺も最初そう思いました」
「でも実際、それで動いちゃうんで」
主任が口を開く。
「再現性がない」
その一言が、空気を決定づけた。
「はい」
佐原も頷く。
「これ、たぶん……」
少し言いづらそうにする。
「俺は乗れますけど」
一拍。
「他の人だと、ちょっと厳しいかもしれないですね」
誰も否定できなかった。
視線が機体へ向く。
高出力。
高機動。
だが——
扱えない。
「量産機としては欠陥だ」
誰かが呟く。
その言葉に、誰も反論しない。
佐原は黙って機体を見る。
「……もったいないですね」
ぽつりと漏れる。
「こんだけ動くのに」
その一言が、妙に重く残った。
主任が低く言う。
「調整に入る」
「制御系の見直しだ」
佐原は頷く。
「了解です」
そして、もう一度だけ機体を見る。
——乗れる。
——でも、これじゃダメだ。
「どうすれば、みんな乗れるようになるか……ですね」
小さく呟く。
その視線の先で——
機体は静かに浮いていた。
まるで、誰かを選ぶように。
そして——
その“選別”こそが、次の改修へと繋がっていく。