メガゾーン23 二つのガーランド「交差」   作:tell M.G.

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第8話 佐原修二編 成立

 

格納庫の空気は、どこか重かった。

 

並ぶのはホバー走行型ガーランド。

その性能は証明されている。

だが——

 

「量産は難しいな」

 

誰かの一言が、静かに響いた。

会議室。

モニターには前回テストのデータが並ぶ。

 

成功例は一つ。

失敗例は二つ。

 

「扱える者が限られすぎている」

 

「これでは部隊運用は不可能だ」

 

「従来の車両型に戻すべきではないか」

 

議論は現実的だった。

ホバーは確かに優れている。

だが——扱えない。

それでは意味がない。

 

「……」

 

佐原修二は黙ってそれを聞いていた。

 

車両型に戻す。

それが一番確実だろう。

だが——

 

「……もったいないですね」

 

ぽつりと呟く。

視線はモニターへ。

表示される設計データ。

 

「設計自体は、成立してるはずなんで」

 

静かに口を開く。

 

「机の上では、ちゃんと動く形になってる」

 

主任が視線を向ける。

 

「何が言いたい」

 

佐原は少しだけ考え——

言葉を選ぶ。

 

「足りてないの、機体じゃなくて」

 

一拍。

 

「人の方じゃないですかね」

 

空気が止まる。

 

「……続けろ」

 

主任が促す。

佐原は頷く。

 

「今の制御だと、操縦が追いつかないんですよね」

「だから扱えない」

 

「でも——」

 

視線を上げる。

 

「それ、補える方法あるじゃないですか?」

 

主任の目が細くなる。

 

「思考伝達装置」

 

その単語が、場の空気を変えた。

 

「マニューバスレイブ時に使ってるやつです」

「姿勢制御とか、手足の補助に入ってる」

 

誰かが言う。

 

「クラフト形態では機能しないはずだ」

 

「ですよね」

 

佐原は頷く。

 

「でも、それを——」

 

少しだけ前に出る。

 

「全部の制御に使えたらどうです?」

 

沈黙。

 

「クラフト形態でも補助が入れば」

「操縦の差、埋められると思うんですよね」

 

主任が低く言う。

 

「理論上は可能だ」

 

だが、その声には慎重さがあった。

 

「しかし、制御系の再設計が必要になる」

「簡単ではないぞ」

 

「ですよね」

 

佐原は苦笑する。

 

「でも……」

 

視線はまっすぐだった。

 

「やる価値はあると思います」

 

その一言で、決まった。

——開発が再開される。

 

それからの日々は、試行錯誤の連続だった。

 

組み込む。

動かす。

暴れる。

止まる。

 

「……ダメですね」

「応答が遅れてる」

 

調整。

再起動。

 

「今度は過剰補正だな」

 

失敗。

また失敗。

それでも——

 

「もうちょいでいけそうですね」

 

佐原は笑っていた。

何度も乗る。

何度も試す。

機体の癖を掴み、

制御のズレを見つける。

 

「ここ、少し補助強くした方がいいかもです」

 

現場の感覚と、開発の理論。

それを繋ぐ役目を、自然と担っていた。

そして——

 

「……安定したな」

 

主任が呟く。

モニターの数値は、静かだった。

過剰なブレはない。

遅延もない。

 

「いけますね」

 

佐原が頷く。

——再テスト。

 

前回と同じ三名。

緊張が走る。

 

「行きます」

 

一機目、浮上。

——安定。

 

「……え?」

 

パイロットが戸惑う。

そのまま前進。

滑る。

 

「いける……!」

 

二機目。

三機目。

すべてが——

問題なく動く。

 

「全機、安定走行クリア!」

 

オペレーターの声が響く。

空気が変わる。

 

「続いて変形シーケンス!」

 

三機が同時に変形する。

——マニューバスレイブ。

 

着地。

姿勢制御。

動作確認。

 

「問題なし……!」

 

数値は安定している。

 

「従来機と大差ありません!」

 

だが——

違う。今までとは。

 

「……浮いてるのに、普通に動く」

 

誰かが呟く。

そう。

道路に縛られない。

地形に左右されない。

 

それが、この機体の強みだった。

 

静寂。

 

やがて、主任が口を開く。

 

「試作機、合格とする」

 

その一言で——

すべてが報われた。

 

佐原は小さく息を吐く。

 

「……なんとかなりましたね」

 

その視線の先。

ホバーガーランドは、静かに浮かんでいた。

もはや“選ぶ機体”ではない。

誰でも扱える。

それが——

量産機としての“完成”だった。

 

こうして——

量産型ガーランド試作合格機は完成した。

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