メガゾーン23 二つのガーランド「交差」   作:tell M.G.

9 / 9
第9話 合流編 交差

軍地下施設——ブリーフィングルーム。

 

無機質な壁と、最低限の照明。

外界から切り離された空間。

その扉が、静かに開く。

 

「……久しぶりだな」

 

佐原修二が声をかける。

室内にいた男が、ゆっくりと振り返る。

 

榊原光一。

 

「佐原か」

 

短い言葉。

佐原は軽く笑う。

 

「相変わらずだな」

 

一歩近づきながら——

 

「で?今回も無茶なもん作ってんだろ?」

 

榊原は否定しない。

 

「必要な性能を追求しただけだ」

 

「ハハハ。出たよ、それ」

 

肩をすくめる。

数秒の沈黙。

佐原が口を開く。

 

「……宇宙用か」

 

榊原はわずかに目を細める。

 

「分かるか」

 

「なんとなくね」

 

軽く笑う。

 

「その言い方と、やってること的に」

 

一拍。

 

「地上じゃ扱いきれない出力、積んでるでしょ」

 

榊原は短く答える。

 

「重力下では余剰だ」

 

「やっぱりな」

 

納得したように頷く。

 

「こっちは逆だよ」

 

榊原の視線が向く。

 

「市街地特化」

 

「安定性重視で、出力は結構抑えてる」

 

榊原が言う。

 

「量産機か」

 

「正解」

 

軽く返す。

 

「まあ、部隊運用前提なんで」

 

静かな空気。

榊原が続ける。

 

「安定しすぎているな」

 

「そうしないと扱えないんで」

 

即答だった。

 

「性能を削ってるのは分かってるけど」

 

少しだけ間を置く。

 

「使えなきゃ意味ないから」

 

空気がわずかに張る。

榊原は否定しない。

 

「お前のはさ」

 

佐原が続ける。

 

「使える奴が使えば最強」

 

榊原は黙る。

 

「でもこっちは」

「誰でもある程度動かせるのが前提なんだ」

「じゃないと、部隊にならない」

 

沈黙。

 

榊原が小さく言う。

 

「思想の違いだな」

 

「だな」

 

佐原はあっさり頷き少し笑う。

 

「でもさ」

 

榊原を見る。

 

「お前の、それ」

「地上でも動かしてるだろ」

 

一瞬の間。

 

「調整している」

 

短い返答。

佐原は苦笑する。

 

「やっぱりな」

 

「万能型ってやつか」

 

榊原は何も言わない。

だが、その沈黙が肯定だった。

 

「ずるなあ、それ」

 

冗談っぽく言う。

 

「こっちは特化させてるのに」

 

榊原は視線をわずかに外す。

 

「……まだ完成じゃない」

 

その一言に

佐原が反応する。

 

「なんか隠してるでしょ」

「例えば、別の誰でも扱えるヤツとか」

 

榊原は答えない。

数秒の沈黙。

 

「そのうち分かる」

 

それだけだった。

佐原はため息混じりに笑う。

 

「出たよ、それ」

 

少し間を置いて——

 

「じゃあさ」

 

軽く言う。

 

「実機、見せてくれないか?」

 

榊原が視線を上げる。

 

「そしたらこっちのも見せるからさ」

 

榊原は短く答える。

 

「……試験で使う」

 

佐原は頷く。

 

「じゃあ、その時だな」

 

「ああ」

 

その瞬間——

次の段階が決まった。

 

 

——合同連携試験当日

 

広大な試験区画。

市街地を模したブロックと、開けた空間。

 

複数の機体が並ぶ。

佐原は、自機に手を置きながら視線を上げる。

 

「……あれか」

 

視界の先。

異質な機体。

重装甲。

全身にバーニア。

 

「聞いてた通りですね」

 

小さく呟く。

 

一方——

 

榊原もまた、別方向を見ていた。

 

滑るように浮く機体。

ホバー走行型ガーランド。

 

「……安定している」

 

互いに——

初めて“実物”を見る。

 

アナウンスが響く。

 

「合同連携試験を開始する」

 

空気が張り詰める。

佐原は軽く息を吐く。

 

「さて……どうなるか」

 

榊原は何も言わない。

だが——

 

その視線は、すでに戦いを見据えていた。

 

「模擬戦、開始」

 

その一言で

すべてが動き出す。

 

異なる思想。

異なる機体。

 

それらが、今——交差する。

 

 

 

そして数日後——

 

地上の一般市民に向けたニュースが流れた。

 

戦争の開始を告げる報道。

 

突如として変わる世界情勢。

各地で進む軍備拡張。

 

人々はただ、画面を見つめていた。

 

その裏で何が起きたのかを—

知る者は、ほとんどいない。

 

だが確実に。

 

世界は、後戻りのできない段階へと進んでいた。

 

そして——

 

新たな兵器たちが、その存在を許される時代が始まろうとしていた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。