メガゾーン23 元ハーガン部隊 ― 三人で戦う理由 ― 作:tell M.G.
ガーランド開発計画に関わった者達、そしてMZ23を巡る戦いの裏側を描いた物語です。
中川真二によるガーランド奪取事件から始まり、PartⅠ〜PartⅡ終盤までの出来事へ繋がっていきます。
本編では描かれなかった兵士達、開発者達、そしてB.D.最終決戦へ至るまでの群像劇となります。
地下ブロックB区画に敵デザルグ侵入。敵数3。
ガーランド中隊、直ちに迎撃に向かえ。
無機質な館内アナウンスが低く響いた。
「……最近やけに来るな」
町川輝は小さく呟き、格納ラックへと歩き出す。
「ほんとにな。宇宙部隊は何やってんだか」
黒崎翔太が肩を鳴らしながら続く。
「すみません、自分もそう思います。ここ最近、頻度が明らかに増えてますよね」
少し後ろから、杉山蓮が言葉を挟む。
「だよな。こっちばっか負担増えてる気がするわ」
「まあ、愚痴ってても仕方ねえだろ。行くぞ」
黒崎が軽く手を振る。
「了解です」
杉山は短く応じた。
三人はそれぞれのガーランドへと向かう。
かつては——
一つの機体を三人で運用していた。
敵捕捉。数3。
以前交戦記録あり——H型と推定。全機散開せよ。
本部からの通信が、鋭く響いた。
「了解!」
町川輝、黒崎翔太、杉山蓮の三機は同時に加速し、右翼側の敵機へと向かう。
マニューバクラフト形態で一気に距離を詰める。
地表すれすれを滑るように疾走し、そのまま流れるように——
マニューバスレイブへ変形。
金属の駆動音とともに、人型へと移行する三機。
戦闘が始まる。
——その最中だった。
(前は……変形させるだけで一苦労だったよな)
町川の脳裏に、ふと過去がよぎる。
直後——
敵機がライフルを発射。
「っ!」
町川は意識を現実へ引き戻す。
三機、同時に散開。
ビームが空間を裂き、直前までいた位置を焼き払った。
敵は三機。
対するこちらは九機。
各個に分断され、一対三の交戦へと持ち込まれた。
町川はレーザーオーブガンを構え、発射。
しかし敵は左へ回避。
その回避先——
「逃がすか!」
黒崎機が待ち構え、即座に射撃。
ビームは敵機を掠めた。
だが——
「チッ……効いてねえか!」
反撃が来る。
黒崎機へ集中砲火。
そこへ——
「カバーします!」
杉山機が滑り込み、射線に割って入る。
撃つ。回避。反撃。回避。
一進一退の応酬。
だが気付けば——押されていた。
じりじりと、内部区画へと後退させられていく。
自分たちは地上。
敵機はホバリングし、時に上空を取る。
——機動力が違いすぎる。
その差が、確実に戦況を傾けていた。
「ぐあっ——!」
悲鳴。
左翼で戦っていた黒崎機が被弾。
脚部大破。
強制的にマニューバクラフト形態へ移行する。
だが速度が出ない。
機動力は明らかに低下していた。
「黒崎!」
町川が叫ぶ。
二機が即座にカバーへ入る。
「黒崎、奥のブロック内部へ退避しろ!」
「……くっ、了解!」
黒崎機は煙を引きながら後退していく。
残るは——町川と杉山。
二機でH型と撃ち合う。
その時だった。
杉山の動きが、一瞬だけ遅れた。
敵機が——狙いを定める。
「まずい——!」
発砲。
その瞬間——
「杉山ぁ!!」
町川機が割り込む。
衝撃。
ビームが背部から下半身を貫いた。
「——っ!!」
町川機、大破。
「町川さん!」
杉山の叫びが響く。
「この……!」
怒りのままに、レーザーオーブガンを連射。
一発が敵機の右側面へ命中。
機体がよろめく。
「町川さん!大丈夫ですか!?」
「ああ……何とか、な……!」
損傷した機体の中で、町川が応じる。
「黒崎さんのところへ後退できますか!?」
杉山が叫ぶ。
町川は一瞬だけ沈黙し——
コクピットを開放した。
外へと身を投げ出す。
幸い、身体に大きな損傷はない。
「行ってください!」
「……了解!」
杉山は歯を食いしばり、敵機を牽制するよう前へ出る。
町川は煙の中を駆け、黒崎が退避した区画へと向かった。
——重い扉が開く。
そこには、脚部を破壊されたガーランドが無造作に停まっていた。
「黒崎……?」
応答はない。
静まり返った倉庫の奥へと視線を向ける。
並んでいるのは——
複数の大型トランスポーター。
整然と配置され、まるで出撃を待つかのように沈黙している。
その異様な光景に、町川は足を止めた。
ゆっくりと、一歩踏み出す。
記憶の奥に沈んでいた感覚が、静かに蘇る。
——これは。
町川は確信する。
それは——
かつて、自分たちが使っていた兵器だった。
「遅えぞ、町川」
倉庫の奥から声が響いた。
黒崎だった。
町川は視線を向ける。
トランスポーターのハッチが開かれ、その内部に——それはあった。
「……これは」
思わず、言葉が漏れる。
かつて三人がかりで運用していた兵器。
——ハーガン。
「なんでこんなところに……」
町川の呟きに、黒崎が鼻で笑う。
「俺も驚いたよ。まさかこんなとこに隠されてたなんてな」
トランスポーターのコンソールを操作しながら続ける。
「ガーランドが配備された途端に、一気に姿消しただろ。全部処分されたと思ってたが……」
一瞬、間を置いて。
「……でも、コイツはまだ動く」
黒崎が振り返る。
「早く杉山のとこ行かねえとな。お前、動かし方——覚えてるよな?」
口元にわずかな笑み。
町川もそれに応じるように、わずかに口角を上げた。
「当たり前だろ。身体が覚えてる」
一歩、踏み出す。
「出せるか?」
「準備はできてる。急ぐぞ」
黒崎はそのままトランスポーターの運転席へと乗り込んだ。
町川はハーガンのシートへと身体を滑り込ませる。
冷たい感触。
だが、それはどこか懐かしかった。
⸻
かつて。
ハーガンが主力兵器だった頃。
町川輝、黒崎翔太、杉山蓮の三人は——一機を運用するチームだった。
個体変形は不可能。
機動力も決して高くはない。
長距離移動も単体では困難。
未完成とも言える兵器。
それでも——三人で戦ってきた。
幾度となく、生き延びてきた。
脳裏に、ある記憶がよぎる。
ただ一度の、特殊任務。
まだバハムートが地上を管理していた時代。
「赤いバイクを確保、拘束せよ」
その命令に従い、三人は出撃した。
だが——
逃げられた。
手の届くところまで追い詰めながら、あと一歩のところで取り逃がした。
苦い記憶。
拭えない失敗。
(……あの時とは違う)
町川は静かに息を吐く。
(今回は——)
コクピット内で、拳を握る。
(杉山を救う。三人で、生きて帰る)
失敗は、許されない。
⸻
「行くぞ!」
黒崎の声と同時に
トランスポーターが唸りを上げた。
重い車体が加速し、倉庫を飛び出す。
向かう先は、戦闘区域。
杉山が、まだ戦っている場所。