メガゾーン23 ヴィルデ・ザウ ―FX艦隊壊滅― 作:tell M.G.
ガーランド開発計画に関わった者達、そしてMZ23を巡る戦いの裏側を描いた物語です。
中川真二によるガーランド奪取事件から始まり、PartⅠ〜PartⅡ終盤までの出来事へ繋がっていきます。
本編では描かれなかった兵士達、開発者達、そしてB.D.最終決戦へ至るまでの群像劇となります。
デザルグとの戦闘は、日を追うごとに激化していた。
各ブロックで防衛線が崩壊し、補給路は寸断。前線部隊の損耗率は異常な数値を叩き出していた。
そんな中、MZ23軍は新たな戦力を投入する。
指揮官用専用機――ヴィルデ・ザウ。
そして一般兵向け量産機――ゼロゼロハーガン。
どちらも最新鋭の機動兵器だった。
特にヴィルデ・ザウは、従来機を遥かに上回る出力と機動性を誇る反面、操縦難易度は極端に高く、扱える者は限られていた。
そのテストパイロットを務めていた男――榊原光一。
彼は正式に、新造戦艦FX護衛機動小隊への配属を命じられる。
FX。
MZ23の最新技術を結集して建造された新型戦艦。
その完成こそが戦局を覆す切り札になる――。
そう信じる者は多かった。
最新鋭艦への配属は、兵士たちにとって羨望の的だった。
だが現実は違う。
激化する戦争により、慢性的な人員不足は深刻化していた。
上層部は、少しでも実戦投入可能な戦力を必要としていたのだ。
光一が選ばれた理由も、“腕を買われた”という名目だけではない。
使える者を、前線へ送る。
それだけの話でもあった。
――もっとも。
ヴィルデ・ザウを扱える数少ないパイロットだったのも、また事実だった。
配属前日。
光一は久しぶりに新宿を訪れていた。
巨大スクリーン。
雑踏。
ネオン。
絶え間なく行き交う人々。
誰もが、いつも通りの日常を生きている。
だが、その空の向こうでは確実に戦争が続いていた。
人が死に、艦隊が沈み、街が消えている。
この平和は、薄いガラスの上に成り立っている。
いつ壊れてもおかしくない、仮初めの日常。
それでも光一は思う。
――たとえ偽りでも。
この景色を壊されたくない。
心の底から、そう思っていた。
「よう、榊原! 久しぶりだな!」
アルタ前。
待ち合わせ場所に現れた佐原修二が、大きく手を振りながら歩いてくる。
「元気にしてたか?」
「おう。まあ相変わらずだよ」
光一は軽く笑って答えた。
「で、今日はどうしたんだ? 急に連絡なんかしてきて」
「ああ……実は任務でな。FXに乗ることになった」
その言葉に、佐原の目が大きく見開かれる。
「マジか!? あの新造艦か!?」
周囲を歩く人間が振り向くほどの勢いだった。
「エリートしか乗れないって噂じゃなかったのか?」
「噂だろ。実際は程のいいお払い箱さ」
光一は苦笑する。
だが佐原は首を振った。
「そんなことねえよ」
真っ直ぐな目だった。
「そもそも、あのバケモノを扱えるのはお前くらいだろ? 機体の癖だって知り尽くしてる」
そしてニヤリと笑う。
「FXと榊原のバケモノ。鬼に金棒だな」
ぽん、と肩を叩く。
「おめでとう」
光一は少しだけ視線を逸らした。
「……で、いつからなんだ?」
「明日着任」
「急だな」
佐原の表情が少しだけ曇る。
「まあ、敵さんは待ってくれないからな」
その言葉だけで、十分だった。
戦況が悪化していることを互いに理解していた。
少し間を置いて、光一が尋ねる。
「ところでお前はどうするんだ? メカニックだったのに、今じゃ量産型ガーランドのパイロットじゃないか」
「あー……まあな」
佐原は頭を掻いた。
「でもオレ、戦闘向いてねえんだよ」
「バイク乗るのは得意だったけど、ドンパチは苦手でさ」
苦笑混じりに続ける。
「だからオレは市街地防衛担当。量産型ガーランドも街中じゃなきゃ性能発揮できないしな」
そして、少し冗談めかして言った。
「お前が前線で敵をぶっ飛ばして、漏れてきた奴をオレがやる」
「完璧な役割分担だろ?」
「ハハ……」
光一も小さく笑う。
「よし! せっかくだし美味いもん食おうぜ!」
佐原は光一の肩を組んだ。
「肉だな、今日は!」
雑踏の中へ歩き出す二人。
騒がしい街。
笑い声。
光。
守りたい。
光一は改めて、胸の奥でそう強く思った。
――やってやる。
この日常を、守るために。
そして翌日。
榊原光一は、新造戦艦FXへ向かった。