メガゾーン23 ヴィルデ・ザウ ―FX艦隊壊滅― 作:tell M.G.
「イエロー、聞こえるか!」
光一が通信を開く。
『聞こえます!』
「レッドがやられた……!」
短い沈黙。
光一は前方モニターへ視線を向けた。
敵H型一機が、高速でFX方向へ向かっている。
「レッドをやった敵機が、FXブリッジへ向かってる! 追うぞ!」
『了解!』
ヴィルデ・ザウとゼロゼロハーガンは同時に加速した。
推進炎を噴きながら、一直線にFXへ向かう。
だが――。
「まずい……!」
既に敵H型はFXブリッジ正面へ到達していた。
距離が遠い。
このままでは間に合わない。
だが光一は、それでも加速を止めなかった。
「くそぉぉっ!!」
次の瞬間――。
FX艦首周辺が、突如まばゆい光に包まれた。
閃光。
直後。
敵H型の機体が、まるで溶けるように崩壊していく。
装甲。
内部構造。
全てが光の中で蒸発していった。
「なっ……!?」
光一は思わず目を見開く。
『リフレクションシールド……』
イエローが呟いた。
FXに搭載された最新防御兵器。
敵攻撃を反射・増幅し、対象そのものを消滅させるシステムだった。
敵H型は断末魔すら上げられず消え去る。
静寂。
だが戦闘は終わらない。
「行くぞ、イエロー!」
『了解!』
二機は再び戦場へ向かった。
その頃――。
光一機に異変が起き始めていた。
『WARNING』
『THERMAL LIMIT』
コクピット内へ警告表示が浮かぶ。
機体温度上昇。
推進器出力低下。
「くっ……!」
ヴィルデ・ザウの動きが急激に鈍くなる。
通常機を遥かに上回る出力。
その代償として、機体各部へ過度な負担が掛かり続けていた。
機動力低下。
このまま戦闘を継続すれば、完全停止もあり得る。
光一は舌打ちした。
「イエロー、すまない。一旦帰投する」
『了解です!』
大坂の声が返る。
『レッドの仇、討ちますよ』
「……無茶するなよ」
『先に戻ってて下さい! また後で!』
イエロー機はそのまま敵部隊へ向かっていった。
光一は機体を反転させる。
帰投。
護衛艦格納庫。
誘導灯に従い、ヴィルデ・ザウがゆっくりと着艦する。
巨大な固定アームが機体を拘束。
メカニック達が慌ただしく駆け寄ってきた。
「冷却急げ!」
「右腕駆動系かなり焼けてるぞ!」
「オーバーヒート寸前だ!」
光一はコクピットを開き、機体から降りた。
「すぐ直します! 休んでいて下さい!」
若いメカニックが叫ぶ。
「……すまん、頼む」
光一はヘルメットを外し、格納庫横の休憩スペースへ腰を下ろした。
汗が止まらない。
呼吸も荒い。
しばらくして、先程のメカニックが険しい顔で近付いてきた。
「榊原さん……」
「どうした?」
「このヴィルデ・ザウなんですが……スペアパーツの交換が出来ません」
「規格品なら装着できるはずなんです。でも内部構造が違い過ぎる……」
メカニックは困惑していた。
「すみません。俺達、こんな機体見た事なくて……」
光一は少し黙った後、小さく息を吐いた。
「……そりゃそうだ」
静かに立ち上がる。
「コイツは普通のヴィルデ・ザウじゃない」
メカニックが目を見開く。
「外装はヴィルデ・ザウだ。だが中身は別物」
光一は振り返り、自機を見上げた。
「ガーランドゼロ――そう呼ばれていたプロトタイプ機だ」
格納庫の空気が静まる。
「ヴィルデ・ザウとは違って完全マニュアル操作。リミッターも存在しない」
「……!」
「その代わり、通常機より機動力もパワーも遥かに高い。だが扱いづらい上、機体負荷もデカい」
光一は苦笑した。
「さっきのオーバーヒートも、そのせいだ」
メカニックは言葉を失っていた。
「榊原さんは……知ってたんですか?」
「……ああ」
「それじゃあ、肉体的負担も相当だったんじゃ……」
光一は答えなかった。
ただ苦笑するだけだった。
その時――。
艦内へ、けたたましい警報が鳴り響く。
『総員、緊急脱出! 緊急脱出しろ!!』
通信は激しく乱れていた。
『うわぁぁっ!!』
『来るな!!』
『ぎゃあああっ!!』
悲鳴。
怒号。
銃声。
光一とメカニックは顔を見合わせた。
「あの慌て方……何が起きてる?」
その時。
格納庫奥から悲鳴が響く。
「うわぁぁぁ!!」
「いやだ!!」
「逃げろぉぉ!!」
バタバタと、何かが高速で移動してくる音。
そして――。
悲鳴が一人ずつ消えていく。
光一もメカニックも、何が起きているのか理解できなかった。
だが次の瞬間。
それは現れた。
巨大な目玉のような球体。
その周囲から無数の触手が伸びている。
異形。
得体の知れない存在。
触手が兵士へ絡み付く。
悲鳴。
血飛沫。
次々と仲間達が襲われていく。
「な……」
メカニックが後退る。
異形はゆっくりとこちらを向いた。
複数の触手が蠢く。
そして――。
光一とメカニックの目の前まで迫ってきた。
だが光一は、動けなかった。
ただ、その異形を見つめる事しか出来なかった。