第十一話 闘争は歓喜と共に 其の一
――よし。切り替えよう。例の技法……仮に
今度は周囲に意識をしっかり向けながら、集中して走る。
しかしこの道どこまで続いているのか。もうそろ別れ――おっと、さっそく二つに分かれている。そうだな、右下に向かおう。
……空間の雰囲気が変わった?なんかピリピリとした雰囲気……微弱だが音がするな。それに……この感覚……
……向かってみるか。一応ナイフは取り出しておこう。……インベントリは割と融通の利くシステムなのだが、何分思考操作によるものであるため扱いに癖がある。インベントリを利用した戦い方というのもやりようによってはありそうなのだが……慣れるしかない。
ここを抜けた先だな。思った以上に遠かった。つまりは、それだけの音と気配がふりまかれていたというわけで……
《ダンジョン
《推奨レベル
そこは開けた空間だった。
ザクッグシャッガキィッドゴォッギャアアアッグォオオオブチッザザザザザヒュッゴッドガッグギャアッバキィザリッザリッ――
血の匂いで咽そうになる。
モンスター、モンスター、モンスター、モンスター、モンスター、モンスター。
どこを見てもモンスターがいる。殺し合っている。
この空間の広さは大体直径500mといったところ。私がここにきて最も広い場所。下を見れば、太い木々の枝によって構築され、すり鉢状になっている。この場所につながる道はどうやらこれだけではないようで、等間隔に端に穴がある。そしてそこからも現在進行形でモンスターが突入してきている。
叫び声がうるさい、肉を砕く音がうるさい、血が吹き、骨が砕ける音。ああ、うるさい。
ふぅー刺激が強い光景だ。……ん?これは……
全てモンスターが中心に向かっているのか……?
なにがある。
グルァアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!
とっさに耳を塞ぐ。それほどの咆哮。
あれは、ひび割れた獣。形状としては狼か虎に似ている。焼けているのか、燃えているのか、ひび割れから煙を吹いている。……あれだな、地獄の獣って名前が相応しい感じだ。
……ダンジョン、
――挑むか。正直言ってこういう1000回死んでもクリアできなそうなステージというのは大好物だ。血みどろの闘争というのも好みである。飛び交っているのにはポリゴンも含まれているが……
ん?ああ、なるほど、そういうことか!ドロップアイテムを落とすのがポリゴンを血として噴出するモンスター、肉体丸々残るのがポリゴンではなく血が出るモンスターか!
いやなんでそんなことに?……どういう?このゲームのコンセプトとはどうなっているのか……いやだが何か理由がありそうではあるな。このゲームの世界観クオリティは狂っているというのが一貫した印象である。
まぁいい、話がそれた。ようはあれに挑もうという話である。だがしかし、当然だがあの王に直接挑みに行っても当然ながらモンスター共にひき殺されてしまいである。というか、王のいる中心に近づくほどモンスターが強くなっている印象だ。途中まではまだしも中心領域は地獄そのものである。――あ、蛇が王に吹っ飛ばされた……って、あれ俺が殺した蛇じゃん。あんな感じで吹っ飛べる規模感じゃなかっただろあの蛇……
うーん、一先ず周辺のモンスターで肩慣らしするかね。漁夫の利チャンスいくらでもありそうだし、何より普通に素材が放置されて吹っ飛びまくっている。肉体丸々残る奴は食われてるし無理そうだが、アイテムになるやつは踏みつぶされてゴミになったりしているが残っている。あれを漁れればデカい。
よーしまずは……
「取りあえず、
ぐあっ
情報量ッ――
《ツリーが成長しました》
っはぁ、はぁ、はぁ……
こんだけモンスターいる場所で打つスキルじゃなかったか……ん、なんだ?ツリー?てことは
└
効果は……ああそういう、よくあるファンタジー系鑑定スキルと似たようなものであるらしい。
ん?ということは名称とか分かるようになるのか。では早速――
「
一先ず地獄の王さんを鑑定してみたわけだが
【名称 ??? 生態 ??? 弱点 ??? ※名称未設定 命名権が付与されます】
何もわからないということが分かった。というかこのスキル、データベース的な何かにアクセスできるのね。そんでもってこのモンスターは少なくとも俺が初遭遇であるということも。まぁダンジョンからして初到達である。そりゃあ未確認のもいるよなぁとは思う。
そんでもって命名権だぁ?……え?割と責任重大くね?
うーん、ほかのモンスター見て参考にしよう……って、あれこいつも初遭遇?……あこいつも……いやまてこいつら全部かまさか?……あよかった……例の蛇は確認されているようだ。
名前は
となるとこいつだけ見て決めていいものとは思えないし……というか命名権鑑定すればするほど溜まってくしやってられん!あとだあと!というかここ薄々感づいてたが相当先のフィールドだな!?
カルディアとの距離的にもそんな感じがする!第二の街東側だったもん、北は未開拓地なんだろ?そりゃあプレイヤーが来ないわけだ。
……ああもうめんどくさい。取りあえず、突貫して素材強奪して王殺しの算段つけなければ。武器の作成……いや厳しいか?どちらかというと経験値を重視すべきな気も……いやなんでもいい。とにかく殺し合おう。それでいい。
「よ~し、GO!」
道の淵から飛び降りる。
「まずはお前だミミックトカゲ!」
擬態して壁に張り付いて漁夫の利ってかぁ!?血が飛び散ってる空間でそれは悪手だろ!
槍を構え脳天目指して……
「
すでにある程度体力が削れていたのか一撃殺害。そしてこういう状況における人権スキルこと
「さあ次はどいつだ!」
基本的に俺がとった戦法は漁夫の利である。というかそうじゃなきゃ持たない。
もう一つ多用するのはこれまた新スキルの
まぁそれは外縁から中心に向かえばいいだけの話。
……もう少し中心に行くか。雑魚の素材集めと
「アッハハハハハハハ!!!」
やべぇ!数十m中心に進んだだけでこれか!
うぉ右からの猿の拳
でか
しゃがんンで
肩から腕を切り離してやる。ッはは!ナイフだっていうのに丸太みたいな腕を飛ばせるのはどういう理屈だ!もちろん3回切ったからだ達人みてぇな挙動ができるなプロダウってのは!!
首がお留守だぜ森ゴリラァ!!
「
ちなみにわざわざスキル名を言わなくても思考操作で発動できる。なんで叫んでるかって?ノリ以外の理由があるとでも?
よし死んだァ!素材はノールックキャッチからの収納!そろそろ満杯の気配!!
「よっしゃ戻ろう!!!」
なお戻るのも相当難易度が高い。なにせ全モンスターが中心に突っ込んでるからね。逆流しなきゃならないのよ。
Tips 主人公の人格がこの辺りからゆらゆらしています。肉体の性別に精神が引っ張られているのにその性別の精神で経験していない戦闘を延々とやっているので不安定になっているわけですね。