プロメティウスの夜明け   作:赤い紫陽花

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第五話 用意されたレール、迫りくる社会、逃げ切るはエゴ

第五話 用意されたレール、迫りくる社会、逃げ切るはエゴ

 

なんというか、体が捻じ曲がる感覚というか、渦に巻き込まれ、吐き出される感覚というか、何とも言えない感覚が体中を走り、そして……

 

世界に彩色(いろ)が満ちる。喧騒(おと)熱気(おんど)を伴って。

 

ざわざわざわざわざわざわざわざわ

 

(いやいやいや人いすぎだろ!!)

 

まてまてここどこだ、え?現実?あれ、私はプロダウに……いやここプロダウだわ、周りの人間の格好がおかしいわ。鎧とか着てるやんけ。あれ?初期スポーンってランダムだっけ??いや詳しい事情とか知らないんだが……

 

「こんにちは」

 

「はいっ!?」

 

反射で振り向く、声が翻る。唐突にうしろにピエロがいれば誰だってそうなる。()だってそうなる。切り替えろ、演じていけ。()は女だ声を変えろ。

 

「あっ、あのなんでしょう……?」

 

「いえ、未登録の魔力反応を見つけたもので。あなたはこの世界に初めてログインしたプレイヤーでお間違いないでしょうか?」

 

んっうん。声を整える。流石の私でも生まれて5秒ノータイムで別の性別を演じるのは無理があるんだがなんとかなった。いやまてなんでピエロ??

 

「あっ、はいそうですが……あなたは?」

 

「ああ申し遅れました、私はプレイヤー国家、アルカディア共和国政府の人間です。新規プレイヤー案内所の人間ではないのですが……基本的に、モノリス近くにポップするとはいえ今は偶然周囲に人が集まっていたようです。本来マナー違反なのですがね。そのため少し離れた場所にあなたは出現したようで、私が対応しろ、と上から。」

 

んん、まてまて情報が多い、礼儀正しい公務員ピエロとかいう時点で情報過多なのになに?モノリス?リスポーン地点かなにかか?

 

ようやく周囲に目が向く。ああ、モノリスというのはあの黒い巨大な石板か。なるほどかなり離されいるな。私がいる場所は……あれだ、市場か?転がっているものが剣やら化け物の一部やら物騒なものも多いが……ファンタジックな市場といったところか。どうやら、モノリスを中心に放射状に存在する道の一つにいるようだ。周囲には大量の人、人、人である。重ならないように最寄りに出現した結果、こんな場所にたたき出されたというわけか。

 

「……なる、ほど。対応というと?」

 

「ああと、この場所ではなく案内所の方に同行いただいても構いませんか?そちらに色々支給する物品等がありますので。」

 

「なるほど、分かりました。」

 

ああ、だんだん落ち着いてきた。まったく色々起きすぎだ。うん、しかし、凄いな、このゲーム。まさしく、現実以上、といったところか。美しい空、広がる市場、遠くに大きな建物も見える。音は喧騒、入り混じるは人の声、足音、そこのピエロがジャグリングをしだした音……は?

 

「え、あの、どういう????」

 

「ああすみません、感じ入っておられたご様子ですので」

 

んん?どう思考したらその状況でジャグリングを開始するというの???

 

「もうよろしいでしょうか?では、案内所はあちらですので、ついてきていただければ。」

 

一つわかった。公務員をしているのにピエロの格好をしているようなやつは間違ってもまともとはいえないようである。

 

 

 

 

 

 

案内所にたどり着いたが、案内所といってもちょっとした集会用テントに様々なものと机とそこを管理する人間の椅子がある程度の場所であった。といってもここ一つではなく、モノリスを中心にいくつかあるようだ。

 

「少々遠くにポップした新規プレイヤーのお方をご案内しました。引き続きお願いします。」

 

「了解でーす。すまんね休日だったのに。」

 

「いえいえいつもの(・・・・)ことですから~。」

 

休日に駆り出される日常……?アルカディア政府はブラックのご様子。

 

「えーと、引き継ぎまして、私はプレイヤー国家アルカディア共和国政府ギルド所属、福祉省プレイヤー局初心者課の案内係、カエデです~。ではさっそくこちらの装置に腕を乗っけていただいて、魔力登録いたしますのでー……」

 

どうやらさっきのピエロが異常だったようで、こちらはまともな格好をしている。いやあれは私服だったのかもしれないが。深緑のジャケットに白いブラウス、黒いズボンに黒の革靴、胸元には国章と思しき、焔を衛星のように囲う七つ星のバッジがある。これが政府ギルドとやらの制服だろうか。

 

さてさて、魔力登録というと……これか、掌を当てればいいのかな?

 

差し出された板に手を当てると、何かが蠢く感覚が走り、板が薄く光った。

 

「はい、大丈夫です。では次にいくつかの説明と初心者への支給品を提供しますねー」

 

「はいまずこれ、マギ・カードと呼ばれるものですー。魔力紐付けておいたのであなたしか使えない代物になっています。基本的にこれはクレジットカードみたいなものだと思ってください。これはこちらの、パイアと呼ばれるアルカディアの貨幣を、街にあるATMから引き出しと預け入れができますので。」

 

そうして差し出されたのは青く透明なカードと……6種類のパイアと呼ばれる通貨の見本表だった。パイアと呼ばれる硬貨のデザインは、それぞれ鉄色、銅色、銀色、金色、白金色、深紅の半透明な本体に、△が浮いているような代物だった。それぞれ、1,10,100,1000,10000,100000パイアと下に書かれている。

 

よく見るとそれぞれ内部で魔法陣やら呪文みたいなやつやらが現れたり消えたりしている。……となると△は炎のシンボルとしての意味か?

 

「あと気を付けて欲しいのが、パイア貨幣に向けて、『プロメテウ・ピュロフォロス、エクパオ・ピュル・エンタウタ、カイエ・テン・ピュラン』っていうと……」

 

ボン!

 

「こんな風に燃えちゃうので。」

 

気を付けるも何も、覚えられるか!っていうか貨幣が燃えるってどういうこと??なんで??

 

「……なんで燃えるようにしたの?」

 

「パイア貨幣ってアルカディアにおける魔法燃料代わりでしてー。鍛冶とか、魔道具とかに主に使われてますー。」

 

うーん、なぜわざわざ貨幣を燃料にする必要があったのか……ロマンか?ロマンなのか??

 

「まぁそれはいいとして、説明の続きです。初心者さんへの政府からの支援として、5000パイア……金貨五枚ですねー、支給されます。現金とマギ・カード、どっちがいいです?」

 

「現金で。」

 

金貨……といってもデザインとしての金色だろうが……5000パイアはどのくらいの金額なのだろう?

 

「では最後に、こちらアルカディア首都、ここ始まりの街カルディアの地図になりますー。ひとまず冒険目的にしろなんにしろ、こちらの、冒険者ギルドに向かうことをお勧めしますー。最低限の身分登録ができますのでー。」

 

地図を受け取る。どうやら、このモノリス前のこの場所はカルディアにおける東区画のようだ。冒険者ギルドも東にある。西区画は政府関連の施設群、北はどうやら居住区らしい。南は……魔術師ギルド?とかそういう研究系のもろもろが集まっているらしい。

 

「ではこれで手続きは終わりになりますー。……ようそこ、アルカディア共和国へ。」

 

 

 

 

 

 

さて、手続きが終わったわけだが……これからどうしようか?冒険者ギルドへ向かう?……まさか。この世界において、この美しい世界において、まさかそんな選択を最初にするわけがないだろう。当然、ひとまず外部のフィールドに突貫する!いけるとこまで!これしかない!!

 

現状を確認しよう。まず装備だが……インベントリに入っていたのはちょっとした食料と……サバイバルナイフ。

 

・サバイバルナイフ

 

サバイバーにとっての人生の友である。戦いに、探索に、解体に、なんでも使える万能ナイフ。不壊属性をもつ。

 

武器はこれ一本で十分だろ。不壊属性が初心者装備故か生還者(サバイバー)故か分からないが、ありがたい。

 

食料もまぁ、現地調達でいこう。そのくらいはできる。

 

問題は向かう先を決めていないことだ。というかもらった地図はあくまでもカルディアの地図でしかなく、門の場所はわかるがそれより先がわからない。ここは……

 

ターーン!!!!…ということで向かう先は北に決定である。こういうのは巡り合わせよ。っやべ、変人みたいに見られてる、早急に離脱しなければ…(まごうことなき変人である)

 

一時間後

 

……さて到着しました北門!道中ついでに縄とポーションをありったけ買ってきたから素寒貧だぜ!後先は考えない、とにかくいけるとこまでいくぜ!




唐突にハイテンションで回転し始める明らかに初心者装備の女を見る目

Tips カルディアは東京23区くらいの広さがあるので、墨田区から北区まで主人公は走った。バスも電車もあるがハイテンション故目に入らなかった。
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