メガゾーン23 量産型ガーランド後編 ―迎撃― 作:tell M.G.
ガーランド開発計画に関わった者達、そしてMZ23を巡る戦いの裏側を描いた物語です。
中川真二によるガーランド奪取事件から始まり、PartⅠ〜PartⅡ終盤までの出来事へ繋がっていきます。
本編では描かれなかった兵士達、開発者達、そしてB.D.最終決戦へ至るまでの群像劇となります。
司令室に張り詰めた空気が漂っていた。
巨大モニターにはMZ23内部の立体マップが映し出され、各区画の警戒状況がリアルタイムで更新されていく。
その前に立つ白鳥少尉が、静かだが鋭い声で作戦概要を告げた。
「矢作が今夜にも動く可能性がある。各員、これより即時配置につけ。詳細は各小隊指揮官の指示に従え。以上だ」
短い言葉だった。
だが、その場にいた全員が理解していた。
今夜、また“あの男”が動く。
町川輝は腕を組みながら、自然と過去を思い返していた。
――ガーランド1号機捕獲作戦。
自分達にとって汚点となった一件。
横に並ぶ黒崎翔太、杉山蓮も、きっと同じ記憶を辿っているのだろう。
誰も口にはしない。
だが空気で分かった。
「あの……」
不意に横から声を掛けられた。
町川が視線を向けると、1人の兵士が少し緊張した表情で立っていた。
胸元のネームプレートには“佐原修二”とある。
「はい?」
町川が返すと、佐原は少し困ったように眉を寄せた。
「一般人相手に、何で軍がこんな大掛かりな作戦をやるんですかね?」
その問いに、町川はすぐには答えなかった。
数秒だけ考え、静かに口を開く。
「……油断しない方が良いですよ」
町川はいくつか言葉を交わし、そして黒崎と杉山の元へ歩いていった。
油断しない方が良い――か。
自分で言ったその言葉が、まるで自分自身へ向けた警告のように思えた。
町川、黒崎、杉山。
3人は長く同じチームで戦ってきた。
現在もMZ23内部防衛任務を担っており、量産型ガーランドの扱いには誰より慣れている。
そして今回も、迎撃部隊として選ばれていた。
「町川曹長! 黒崎軍曹! 杉山伍長!」
オペレーターの声が響く。
「第二層E4区ベースへ向かえ!」
「了解しました!」
3人は同時に敬礼し、その場を駆け出した。
MZ23内部には、バハムートへ抜けるルートが無数に存在する。
矢作省吾がどこから現れるかは分からない。
だからこそ、各ポイントに迎撃部隊が散開していた。
E4区ベース。
待機状態の量産型ガーランドに跨りながら、黒崎が笑う。
「なあ町川、杉山。前のガーランド1号機捕獲作戦、思い出すよな」
杉山が苦笑混じりに頷いた。
「僕も思い出してました。苦い記憶ですね」
「またあの矢作省吾だろ?」
町川が鼻で笑う。
「またガーランド盗んで逃走か。フラッシュバックするな」
そしてヘルメットを被りながら、不敵に続けた。
「今度は絶対に捕まえてリベンジしてやる!」
3人の間に小さな笑いが起きる。
緊張を誤魔化すような、乾いた笑いだった。
「今度は3機同時に行けるから楽勝だろ?」
黒崎が気楽そうに言う。
だが杉山は表情を曇らせた。
「どうですかね……。ガーランド1号機、改修してるんですよね? 更にパワーアップしてたら、やばいですよ」
その言葉に、町川の表情が少しだけ引き締まる。
「……油断しない方が良い」
ぽつりと呟いた。
「さっきさ、全体ブリーフィング終わった後、横の奴に話しかけられてさ。矢作省吾の事は油断しない方が良いって、俺が言ったんだ」
町川は小さく笑う。
「でも、まるで自分に言ってるみたいだった」
そして2人を見渡した。
「だからお前たちも気を引き締めて行くぞ!」
その瞬間だった。
通信回線に鋭いノイズが走る。
『矢作省吾が動き出した!』
全員の表情が変わる。
『各隊、警戒レベルを最大へ移行!』
続けざまに新たな通信が飛び込んできた。
『矢作を含む集団を発見!』
『ガーランド部隊交戦中!』
『ガーランド部隊、撃墜されました!』
「なに……!?」
黒崎の顔色が変わる。
通信は止まらない。
『更に逃走!』
『16シャフトから第二層を抜ける模様!』
『第二層E4区へ応援部隊を集結せよ!』
『白鳥少尉も向かうとのこと! 合流されたし!』
黒崎がニヤリと笑った。
「俺たち、ツイてるな」
杉山も気合いを入れるように操縦桿を握る。
「今度こそ絶対リベンジしましょう!」
そして町川は、正面モニターを睨みつけた。
暗い通路の先。
そこから現れるであろう“赤い悪夢”を想像する。
「ここに来る……ヤツが!」
町川の鼓動が高鳴る。
恐怖。
興奮。
復讐心。
その全てを抱えながら、3機の量産型ガーランドは静かに待ち構えていた。