ガーランド開発計画に関わった者達、そしてMZ23を巡る戦いの裏側を描いた物語です。
中川真二によるガーランド奪取事件から始まり、PartⅠ〜PartⅡ終盤までの出来事へ繋がっていきます。
本編では描かれなかった兵士達、開発者達、そしてB.D.最終決戦へ至るまでの群像劇となります。
うわああっ――!!
雄叫びを上げながら、一人の男が少佐へ向かって駆け出した。
ナカオはヴィルデ・ザウのコクピットの中から、その姿を見つめていた。
今まで何度も名前だけを聞かされてきた男。
だが、実際に見るのは初めてだった。
まだ幼さの残る顔立ち。
しかしその瞳には、幾つもの戦いを越えてきた者だけが持つ覚悟が宿っている。
――あれが、矢作省吾。
崩壊しかけた地下区画。
ヴィルデ・ザウ隊は周囲を包囲しながら静止していた。
ナカオはモニター越しに、少佐――B.D.の背中を見る。
少佐は以前、静かに言っていた。
『今のままでは守れん』
まだ、若かった頃の少佐。
地上の都市はイヴの管理下にあり、
軍備も兵器開発も厳しく制限されていた。
『敵が来た時、これでは誰も守れん』
その言葉通り、デザルグとの戦況は悪化していった。
イヴは都市を守ろうとしていた。
だが少佐には、それが“閉ざされた平和”に見えていたのかもしれない。
だから少佐は動いた。
バハムートを掌握し、
軍を再編し、
武器を生産し、
来るべき戦いへ備えようとした。
だが――。
少佐ですら完全には掌握できない領域が存在した。
未知セクション。
開かずの間。
MZ23の最深部。
そして少佐は言った。
『イヴの力が必要だ』
『あれはただのシステムではない』
『都市そのものだ』
モニターの中で、
未知セクションの光が脈動する。
ナカオは思い出していた。
『あの力を掌握できれば……
この戦いを左右する何かが、必ずある』
そして。
『イヴと対話できる男……
矢作省吾を探し出せ』
その命令から全てが始まった。
そして今――。
追跡の果てに、
矢作省吾は少佐の前へ辿り着いた。
未知セクション開かずの間が、
ゆっくりと開かれた。
ヴィルデ・ザウのコクピットの中で、
ナカオは静かにモニターを見つめていた。
崩壊を始めた未知セクション。
脈動する光。
その中心で向かい合う二人。
矢作省吾。
そして――B.D.少佐。
少佐はずっと、
MZ23を守るために戦ってきた。
守るためには力が必要だった。
デザルグは止まらない。
敵は容赦なく攻めてくる。
だから勝ち続けなければならない。
敗北は滅びを意味する。
少佐はそう信じていた。
絶対的な戦力こそが正義。
力なき理想など、
いずれ踏み潰される。
だから少佐は、
時には犠牲すら受け入れながら、
軍を再編し、
兵器を生み出し、
バハムートを掌握していった。
ナカオはそんな少佐の背中を、
ずっと見てきた。
そして信じていた。
――少佐こそがMZ23を守れる人間だと。
だが今。
未知セクションで交わされた、
矢作省吾とイヴの最後の会話が、
その信念を揺るがしていた。
イヴが最後に残した力。
ファイナルプロテクションモード。
それは敵を滅ぼすための力ではなかった。
戦争を繰り返さない人々を、
地球へ送り届けるための希望。
人類へ託された、
再生の意志だった。
ナカオはモニター越しに、
静かに立つ矢作省吾を見つめる。
――あれが。
――イヴに選ばれた男。
少佐の求めた“力”ではなく、
イヴが託した“希望”。
ナカオは迷っていた。
自分達が信じてきたものは、
間違っていたのだろうか。
その時、
通信の中で少佐の声が響いた。
『ここは……生き甲斐のある世界だ』
静かな声だった。
だがその言葉には、
どこか長い戦いを終えた男の響きがあった。
『私が正しいと信じて生きてきた時代は……
終わったようだ』
ナカオは目を見開いた。
少佐は理解したのだ。
イヴが最後に人類へ託したものを。
力ではなく、
未来そのものを。
ならば――。
自分達大人に残された最後の責任は何だ?
答えは一つだった。
彼らを、
無事に地球へ送り届ける事。
それこそが、
自分達の最後の使命。
その瞬間、
少佐から発進合図が送られる。
ナカオは操縦桿を握り締めた。
周囲で待機していたヴィルデ・ザウ隊が、
次々と加速していく。
彼らを守り抜く。
希望を、
地球へ届けるために。
ナカオ達は、
最後の戦いへ向かって飛び立った。