メガゾーン23 ―託された希望―   作:tell M.G.

1 / 4
メガゾーン23 PartⅠ以前。
ガーランド開発計画に関わった者達、そしてMZ23を巡る戦いの裏側を描いた物語です。
中川真二によるガーランド奪取事件から始まり、PartⅠ〜PartⅡ終盤までの出来事へ繋がっていきます。
本編では描かれなかった兵士達、開発者達、そしてB.D.最終決戦へ至るまでの群像劇となります。


第1話 思想

うわああっ――!!

 

雄叫びを上げながら、一人の男が少佐へ向かって駆け出した。

 

ナカオはヴィルデ・ザウのコクピットの中から、その姿を見つめていた。

 

今まで何度も名前だけを聞かされてきた男。

だが、実際に見るのは初めてだった。

 

まだ幼さの残る顔立ち。

しかしその瞳には、幾つもの戦いを越えてきた者だけが持つ覚悟が宿っている。

 

――あれが、矢作省吾。

 

崩壊しかけた地下区画。

 

ヴィルデ・ザウ隊は周囲を包囲しながら静止していた。

 

ナカオはモニター越しに、少佐――B.D.の背中を見る。

 

少佐は以前、静かに言っていた。

 

『今のままでは守れん』

 

まだ、若かった頃の少佐。

地上の都市はイヴの管理下にあり、

軍備も兵器開発も厳しく制限されていた。

 

『敵が来た時、これでは誰も守れん』

 

その言葉通り、デザルグとの戦況は悪化していった。

 

イヴは都市を守ろうとしていた。

だが少佐には、それが“閉ざされた平和”に見えていたのかもしれない。

 

だから少佐は動いた。

 

バハムートを掌握し、

軍を再編し、

武器を生産し、

来るべき戦いへ備えようとした。

 

だが――。

 

少佐ですら完全には掌握できない領域が存在した。

 

未知セクション。

開かずの間。

 

MZ23の最深部。

 

そして少佐は言った。

 

『イヴの力が必要だ』

 

『あれはただのシステムではない』

 

『都市そのものだ』

 

モニターの中で、

未知セクションの光が脈動する。

 

ナカオは思い出していた。

 

『あの力を掌握できれば……

この戦いを左右する何かが、必ずある』

 

そして。

 

『イヴと対話できる男……

矢作省吾を探し出せ』

 

その命令から全てが始まった。

 

そして今――。

 

追跡の果てに、

矢作省吾は少佐の前へ辿り着いた。

 

未知セクション開かずの間が、

ゆっくりと開かれた。

 

 

ヴィルデ・ザウのコクピットの中で、

ナカオは静かにモニターを見つめていた。

 

崩壊を始めた未知セクション。

脈動する光。

その中心で向かい合う二人。

 

矢作省吾。

そして――B.D.少佐。

 

少佐はずっと、

MZ23を守るために戦ってきた。

 

守るためには力が必要だった。

 

デザルグは止まらない。

敵は容赦なく攻めてくる。

 

だから勝ち続けなければならない。

 

敗北は滅びを意味する。

 

少佐はそう信じていた。

 

絶対的な戦力こそが正義。

力なき理想など、

いずれ踏み潰される。

 

だから少佐は、

時には犠牲すら受け入れながら、

軍を再編し、

兵器を生み出し、

バハムートを掌握していった。

 

ナカオはそんな少佐の背中を、

ずっと見てきた。

 

そして信じていた。

 

――少佐こそがMZ23を守れる人間だと。

 

だが今。

 

未知セクションで交わされた、

矢作省吾とイヴの最後の会話が、

その信念を揺るがしていた。

 

イヴが最後に残した力。

 

ファイナルプロテクションモード。

 

それは敵を滅ぼすための力ではなかった。

 

戦争を繰り返さない人々を、

地球へ送り届けるための希望。

 

人類へ託された、

再生の意志だった。

 

ナカオはモニター越しに、

静かに立つ矢作省吾を見つめる。

 

――あれが。

 

――イヴに選ばれた男。

 

少佐の求めた“力”ではなく、

イヴが託した“希望”。

 

ナカオは迷っていた。

 

自分達が信じてきたものは、

間違っていたのだろうか。

 

その時、

通信の中で少佐の声が響いた。

 

『ここは……生き甲斐のある世界だ』

 

静かな声だった。

 

だがその言葉には、

どこか長い戦いを終えた男の響きがあった。

 

『私が正しいと信じて生きてきた時代は……

終わったようだ』

 

ナカオは目を見開いた。

 

少佐は理解したのだ。

 

イヴが最後に人類へ託したものを。

 

力ではなく、

未来そのものを。

 

ならば――。

 

自分達大人に残された最後の責任は何だ?

 

答えは一つだった。

 

彼らを、

無事に地球へ送り届ける事。

 

それこそが、

自分達の最後の使命。

 

その瞬間、

少佐から発進合図が送られる。

 

ナカオは操縦桿を握り締めた。

 

周囲で待機していたヴィルデ・ザウ隊が、

次々と加速していく。

 

彼らを守り抜く。

 

希望を、

地球へ届けるために。

 

ナカオ達は、

最後の戦いへ向かって飛び立った。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。