ヴィルデ・ザウのコクピットに通信が入る。
『全機聞こえているか?』
B.D.少佐の声だった。
『これよりMZ23から脱出したスペースシップとバハムートを無事地球へ送り届ける』
モニターには、
MZ23から次々と離脱していくスペースシップ群が映し出されていた。
その背後では、
月面のADAMによってデザルグ本隊が崩壊を始めている。
超巨大な宇宙船が、
まるで灰となるように静かに消滅していく光景。
『敵部隊もADAMにより帰る場所を失った』
B.D.は続ける。
『よって敵も必死でこちらのスペースシップを奪いに来るだろう』
静かな口調だった。
だがその声には、
最後の戦いへ向かう覚悟が滲んでいた。
『あそこにはこれからの希望がある』
『それを奪わせるな』
『絶対に守り抜け。いいな!』
『了解!』
各機から返答が響く。
そして少し間を置き、
B.D.は静かに言った。
『今までよく付いてきてくれた』
『感謝する』
通信が切れる。
ナカオは正面モニターを見つめた。
崩壊していくデザルグ艦隊。
その向こうには、
静かに光を放つMZ23。
――次はMZ23が、
ああなるのか……
思わず呟く。
その時だった。
『行くぞ!』
B.D.の号令。
同時に、
八機のヴィルデ・ザウが一斉に加速した。
敵部隊も既に大型戦艦の大半を失っている。
残っているのは、
H型を中心とした機動兵器群。
それでも数は多い。
こちらの倍以上。
いや、
それ以上かもしれない。
黒い群れのように、
敵H型がスペースシップ群へ向かって迫ってくる。
先陣を切ったのは、
B.D.の駆るザーメ・ザウだった。
ただでさえ扱いの難しいヴィルデ・ザウを、さらに強化改造した異形の機体。
常人には到底扱えない。
二機のH型が左右へ展開し、
触手のようなケーブルをザーメ・ザウへ絡みつかせる。
だがB.D.は止まらない。
ザーメ・ザウは、
片側の敵機を強引に引き寄せた。
そのままサーベルを突き立てる。
閃光。
敵機、爆散。
さらに振り向きざま、
逆側の敵へオーブガンを発射。
一撃。
H型が四散する。
――すごい……
ナカオは一瞬、
その圧倒的な戦いぶりに見惚れてしまった。
だが次の瞬間、
その脇を一機のH型が高速で突破していく。
しまった!
ナカオは即座に機体を反転。
敵は後方のスペースシップへ一直線に向かっていた。
加速する。
だが距離が遠い。
――まずい、追いつけない……!
その時。
敵機の正面へ、
一機のヴィルデ・ザウが割って入った。
オーブガン発射。
だが弾は敵装甲を掠めるだけだった。
次の瞬間、
H型がそのまま体当たりを仕掛ける。
ヴィルデ・ザウの左腕が吹き飛んだ。
だが、
衝突の勢いで敵機の軌道も逸れる。
そのままH型は、
後方のスペースシップへ激突した。
閃光。
爆発。
スペースシップが炎に包まれ、
宇宙空間へ砕け散る。
ナカオは息を呑んだ。
――これが……俺達の戦いなのか……。