月面から放たれた巨大な光が、
真っ直ぐMZ23へ降り注いでいた。
白い奔流。
それは攻撃というより、
まるで世界そのものを書き換えていく光だった。
光に触れたMZ23の外装が、
灰のように崩れていく。
都市の表面が静かに溶け、
無数の破片となって宇宙空間へ流れていった。
ゆっくりと。
だが確実に。
巨大都市MZ23は崩壊を始めていた。
ナカオは、
損傷したヴィルデ・ザウのコクピットから、
その光景を黙って見つめていた。
言葉が出ない。
これが――。
月の防衛システム、
ADAM。
人類を遥かに超えた存在。
その時だった。
崩壊していくMZ23の内部から、
巨大な円柱状の物体が飛び出した。
ゆっくりと浮上する。
外装の一部が剥がれ落ち、
内部構造が露出していく。
ナカオは目を見開いた。
「あれは……」
円柱の物体は、
まるで導かれるように姿勢を変える。
そして次の瞬間。
凄まじい速度で、
青い地球へ向け加速した。
「あれは……
バハムート……なのか?」
呟くナカオ。
隣では、
B.D.もまた静かにその光景を見つめていた。
長い沈黙。
やがてB.D.は、
小さく言った。
『あれは、これからの希望だ』
その声に、
かつての狂気じみた執念は無かった。
ただ静かに、
未来を見送る男の声だった。
『イヴが託した……光だ』
ナカオは何も答えなかった。
答えられなかった。
ただ二人は、
地球へ向かっていく光を、
ずっと見つめていた。
やがて円柱の物体は小さくなり、
青い地球へ消えていく。
その瞬間。
宇宙空間が、
再び白く染まった。
A.D.A.Mの光。
圧倒的な白。
ナカオの視界が光に包まれていく。
それでも彼は最後まで、
地球へ向かった希望の光を見つめていた。
【エピローグ】
厚い雲の切れ間から
柔らかな光が降り注いでいた。
風が吹く。
草木が揺れる。
遠くでは、
動物達の鳴き声が響いていた。
どこまでも続く緑。
川が流れている。
MZ23の人工都市では決して見る事のできなかった、
本物の大地。
その中央に、
巨大な円柱状の物体が静かに着陸していた。
長い旅を終えたかのように、
機体表面には無数の傷が刻まれている。
しばらく静寂が続く。
やがて。
円柱状の物体の内部から、
小さな声が聞こえ始めた。
人々の声。
誰かの笑う声。
楽しそうに、そして感嘆の声が聞こえる。
新しい世界へ降り立った、
人類の声だった。
空から差し込む光が、
その巨大な円柱状の物体を優しく照らしている。
そして――。
イヴの願いは叶った。
希望の光たちは
ここへ辿り着いた。
青い星へ。
完