転生夢主は救済もコメディ路線で生きたい【完結済み】 作:yako
私はとてつもない美少女である。
うぬぼれでは無く
揺るぎない事実として存在する真理だ。
生まれたばかりの私を抱き上げた父は五体投地でむせび泣き、母は分娩台で寿司を注文し、祖父母は大量の赤飯を炊いた。すべては美しい私への祝福である。それが理解できたのは、私が人生2回目だったからだ。私には前世の記憶があった。
私は愛されながら無事すくすくと幼稚園生となり、鏡を見るたび目が潰れそうなほどの美女であることにも慣れてきた近頃、私は正直、自分が前世持ちである事実を持て余していた。
まず理由がわからない
前世の自分は特筆することの無い平凡な人間であった。
望み通りの平凡な人生を謳歌し、特に未練が無い。
あるとしてもガラスの仮面と名探偵コナン君の最終回が見たかったぐらいである。無事完結することが出来たのだろうか
人生はそれなりにやりきった。
そんな感覚があるため、なんだか改めて生まれ変わっても何をしたらいいのか分からないのだ。正直完全に目的を見失っている。美しすぎる容姿もなにに使えばいいのか分からない。
そんな思いをふつふつと抱えながらふわふわと生きていた。
転機の訪れは3才になった頃だった
父の転勤で長野へ引っ越すことが決まったのだ
幼稚園に入園し、それなりにお友達が出来て落ち着いたばかりのタイミングでの期間不明の転勤話に、単身赴任も選択肢に上がったが結局泣いて懇願する父に母娘が付き添う形で長野へ移住することとなった
長野に着いたその足で新居の隣家へ引っ越しの挨拶に向かうと、感じのよい夫婦が出迎えてくれたので挨拶を交わす。お隣さんガチャはなかなかの当たりだったようだ。父母の顔色も明るい。
ふと目が合った諸伏の奥さまがにっこり笑った
「ちょうどよかった、うちにも同じ年頃の子供がいるの。これからなかよくしてね」
部屋の奥から呼ばれてとことことやってきた
柔らかい笑みを浮かべた子供が口を開く
「諸伏高明です。」
諸伏高明である。え?ホントだ諸伏高明だ。
ということは足下でもじもじしているのは諸伏景光
「ひろみつです。さんさいです。」
諸伏景光だ。3才だ
え、最推し兄弟の幼少期尊い。。
かみさま斜に構えててすみません転生最高です!!パパも転勤ありがと!ちょっと面倒な人とか思っててごめんね!!コナン世界だ!事件いっぱいの修羅の世界だ!え!待って待って待ってじゃあこの家族がこれから....
あ、
私が前世を持って生まれた理由これだ
私が諸伏兄弟を救済しなきゃいけないんだ
ーーー
まだ片付けの終わらない段ボールだらけの部屋で
私はカーテン越しの光と風に包まれて思考する。
前世の最推しである諸伏兄弟のお隣さんになってしまった。
自己紹介に衝撃を受け呆然としている間に子供同士の握手会があって推しが生身であることに改めての衝撃、また遊びましょうとなってあれよあれよと帰宅した。
ふわふわと目的も無く生きてきた人生に突如として現れた推しという強い光。人生の使命という天啓を得たショックからはまだ立ち直れていない。次元を超えた救済のチャンスを得た私は神に感謝すると共に戸惑ってもいた。
そもそもだ
私は前世も含め推理物の小説は好きだが読む専門。コナン君の種明かしを流し見ながらふむふむそうなのかと納得するだけで満足するタイプである。また、原作知識は偏っていて、細かい事件まで覚えているわけではない。推理出来ない人間が修羅の国コナン世界で生き残れるのか?
この漫画の世界でどうやって生きるのが良いのだろうか…
ーーーーーーーーーーーーー
私はお砂場に家に見立てた円を描いて人形を置いた
「まずとっても美人の私がここにいるでしょ?」
「…うん」
景光くんがもじもじしながら返事を返してくれる。
今日は幼稚園は早上がりの日なので午後から二人で連れだって公園に遊びに来ている
「するととっても美人だから悪い人が誘拐に来ました。」
「ええ!?」
泥人形を一体、円の外に持ってくる。
不格好だが黒タイツの犯人ぽいのでちょうどよい
不安そうな顔をした景光くんがのぞき込んでくる
「どうするの?にげないの?」
「逃げるとパパとママが危ないのでーーー」
私はスコップを構える
「ーーーー逃げずにやっつけます」
どかーんばきーんと効果音をつけて泥人形を壊す
景光くんは笑顔になった
「…!かめんやいばーみたいだ!かっこいい!」
「さあ私はどうやって誘拐犯をやっつけたでしょう?」
「えぇ?くいずなの?」
そう、どうやってやっつけるかが大事なのだ。
景光くんが腕を組んで考えている。とてもかわいい。
ずっとこの世界について考えていた
コナン君の世界はそう厳格なお硬い推理物では無かった筈だ。阿笠博士の発明品シリーズをはじめとした少年誌らしい特殊武器のある世界。時計型麻酔銃や怪盗キッドの魔法に近いマジック、変装術とか発明品だとか超絶技巧だとか、理屈さえ用意したら現実的な側面は多少は無視される漫画の世界だ。
ちょっと未来から来てる分、発明なら多少できるかも?
いや、それだけじゃ弱い。
どうやって介入してどうやって改変しよう。
じっと考え事をしていると景光くんが猫のような瞳を瞬かせた
「かめんやいばーなら悪者やっつけれるよ。夢主ちゃんもかめんやいばーになる?」
「仮面ヤイバーかぁ…なれたらいいなぁ」
「なれないの?」
「私、あんなにムキムキじゃないから」
でもならなきゃいけないのかな仮面ヤイバーみたいに強く。
推理はできない私がどうやってこの世界で戦えばいいのか考えなくてはいけない。キャラ付けが必要である。
コナン界は特有のルールってあったっけ?
怪盗キッドが出る時は人が死なないとかあったな。
あとコメディ路線の時には死人が出ない。
魔法はNGだから紅子ちゃんは登場できないんだよね。
発明品は魔法レベルの性能だけど。
怪盗キッドいいなー
私にも世界観を味方につけるようなキャラ付けが欲しい。
「夢主ちゃんはまほうしょうじょのほうが好き?」
「魔法少女?」
見た目は美少女だから仮面ヤイバーよりはいけそう?
いや駄目だ。そもそも魔法使えない。
魔法を使わない魔法少女?
「自称魔法少女」
いやそんなのコメディだ....…
コメディ…
そうかコメディ!
コメディ回なら人は死なない法則!
コレにかけよう!
私が人が死ぬようなシリアスを全部コメディにしてしまえばいいんだ!
シリアス展開を引っかき回して!
ちょっと発明のできる自称魔法少女!いい!
人命のため私がコメディの女王になればいいんだ!
「わかった!私、今日から自称魔法少女になる!」
私の決意を景光くんがぽかんとした顔で見つめていた。
ーーー
自称魔法少女になることを決めた私は行動を開始した。
魔法少女にふさわしい衣装の作成、機械いじり、実績作りのためのパトロール。やることは山積みだ。フィジカルも鍛えるために魔法ステッキっぽい物での素振りを始めた
やるなら徹底、素の自分は封印することにした。
これからは自称魔法少女らしい、ちょっと天然で正義感あふれる敬語キャラで生きていく。目指せ不思議ちゃん枠だ。幸い美少女なので衣装も着こなせている。
勢いの力でぶち壊せ悲劇!頑張れ私!
「…そこにいるのは夢主さんですか?何をしてるんです?」
高明くんが話しかけてきた。
私は柿の木に登っている最中である。
「迷い猫の捜索中です。魔法少女として」
「…李下に冠を正さず、瓜田に履を納れず…
柿泥棒と間違われますよ。あまり危ないことはなさらないよう。」
最近の高明くんはすっかり私のお目付け役である。横で心配そうな顔でオロオロしている景光くんが連れてきてくれたのだろう。
「夢主ちゃん全然止まってくれないから!そんなに上に行ったら危ないよ!」
「私は魔法少女だから大丈夫です。」
「そればっかり!全然大丈夫じゃ無いよ!」
小学生になった景光くんとは異性ながら仲のよい関係を保っている。自称魔法少女として幼少期からそこそこの奇行に走っている自覚のある私だが、見捨てないでいてくれるのは景光と高明の優しい人柄ゆえ。本当に奇跡のような兄弟だ。
「先日ひったくりが昏倒される事件があったばかりですから…魔法少女といえど一人で行動されるのは危険です。」
目を細めチラリと一瞥する高明の中学生ながらに圧のある視線に一瞬ドキッとするがあくまで平静を装う
実を言うとひったくり犯を昏倒したのは私である。
魔法のステッキに仕込んだ防犯用スタンガンの出力を間違えたのだ。バレれば捕まりかねないので通報して思わず逃げてしまった。どこかで見られていたのだろうか?
「景光、あなたもですよ」
「え!僕?」
「最近、県境の奥に入り浸ってますね」
「何で知ってるの!秘密だったのに!」
「当たりですか?確証がなかったのでカマをかけたんですが」
「うぅ~!兄さんズルい!」
仲良し兄弟のやり取りは微笑ましい
景光くん、県境でみっちゃんと出会ったのかな?
この兄弟が並んで過ごせるよう
私は原作の運命をねじ伏せる計画を考えねば。
ハーメルン初心者です。
至らない点など見受けられるかと思いますが、ルールや機能の使い方などで、変なことしてしまっていたらこっそり教えていただけるとありがたいです。