転生夢主は救済もコメディ路線で生きたい【完結済み】   作:yako

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萩原研二の救済

 

 

「おいそこの魔女、サボるな」

「サボってません。非番だけど出勤してるだけです」

 

コンビニおにぎりをかじりながら、同僚となった零くんに返事をする。

空いていた小部屋のデスクを借りて仕事をしていたが見つかってしまった。

さすが原作ではトリプルフェイスをこなす人類卒業生、勘が鋭い。

今は潜入捜査に入る予定は無いので特に訓練も受けてないはずなのになぜ。

 

そう、零くんは黒の組織に潜入していない。

ここでも原作とのズレが発生している

 

前川の偽装人事の件後、上層部は新たな大規模潜入捜査はしばらく無しで内部を整理するのを優先すると正式に決定した。と見せかけて…。ということもあるだろうが、少なくとも私と零くん含む高明さんの班では潜入捜査している人間はいない。なにより通常業務が本当に人手が足りずに忙しい。

 

「は?休みは休めよ。働き過ぎてついに頭働かなくなったか」

 

横の空いたデスクに腰を掛けながら零くんが軽口をたたく。

 

「絶妙に仕事が終わらないんです。他にも個人的に気になることがありまして」

「お前個人で内職してられるほど偉くなったのか?」

「正直手一杯です。助けてください」

 

零くんがため息をつきながらいくつか書類を持って行く。

 

「なんだこれ?書式がバラバラで面倒なヤツばかり残してないか?」

「下から順番に片付けてますよ」

 

毎日山積みの仕事で平日は勿論、休日すらまともに家に帰れないほど忙しい。ここに来る前にしていた覚悟も吹き飛ぶほどの忙しさだ。でも他の人たちは上手にお休み取れてるから私の処理能力の問題でもあるだろう。

 

「正直、私では能力不足なのかもと少し落ち込んでます」

 

零くんが少し考えるような仕草で私のデスクの書類をめくっては睨んでいる。

 

「…まあ期待されてるから任されるんだろう。…落ち込んでないで手を動かせ」

「零くん。お手数おかけします」

「いい、慣れてる」

 

カタカタとキーボードの音が部屋に響く

今日は大事な日だから絶対予定をあけておきたかったのに結局こうなってしまった。

こんな調子でこれから魔法成人女性として色々こなしていけるか不安が募る。

あー後ろ向きになるのいけない。元から庁舎で情報を集める予定だったからこれで良かったと思おう。

 

「…お前、警察大学校では射撃の成績が良かったらしいな?」

 

零くんが話しかけてきた。えー褒めてくれるの珍しい。そんなに落ち込み顔が出ていただろうか。

 

「大学の頃の友達が射撃が得意でコツをよく教えてもらってましたから」

「警察官以外で習うような友達がいたのか?お前は学生時代も勉強以外は阿笠博士のとこでの実験とパトロールに人生費やしてただろ」

「一般人の友達ぐらいいます。長野の山奥で実験中に空から降ってきたんです。舟久保真希ちゃんっていうんですけど」

 

零くんの眉間にしわが寄る

 

「…それは魔女仲間か?」

「一般人ですよ。元バイアスロンの強化選手で足の怪我が原因で自殺しようとしてたらしいです。飛びたいなら一緒に飛ぼうって誘って仲良くなって。2人で色々試した結果ハングライダーにはまって今も定期的に飛びに行ってるって連絡くれます。」

 

私は仕事が忙しくて行けていない。早く仕事をこなせるようになって体を動かさないと感覚を忘れそうだ。

 

「情報量が多い、何で一緒に飛ぶ発想に繋がるんだ」

「たまたま私も空を飛ぶ方法を探してる最中だったんです。長野に帰って正解でした」

「お前はいったい何を目指してるんだ」

 

そこでコンコンと扉をノックされた。

 

「失礼。お二人ともこちらにいましたか」

「「諸伏警視!」」

「緊急の事案があります。都内マンションに爆弾が仕掛けられ10億円を要求されています」

 

来た!この情報を待っていた。

今は原作7年前

大事な11月7日だ。

 

 

「規模が大きいので私たちも動きます。降谷くんは私と来てください。夢主さんは本来今日は非番のはずですよね。書類の整理も残っている様子ですし、そのまま続けて頂いて大丈夫です。」

「わかりました」

 

ドアが閉まると同時に二人が歩き去る音がする

 

 

危なかった。

 

 

私も呼び出されていたら計画がダメになるところだった。ここからが勝負!

私はここ最近内職していた書類をまとめてファイルに閉じてから部屋を出る。

丁度良いことに廊下を歩いていた先輩職員の背中に声を掛けた。

 

「すみません、今少しよろしいでしょうか」

 

呼び止めた先輩が振り返る。大分お疲れの様子だ。

 

「なんだ、休みじゃ無かったのか?」

「これ緊急の内部報告です。防護装備の運用違反について」

 

ファイルを差し出すと先輩は流し読みするようにパラパラと捲る。

 

『爆発物処理時における防護装備運用状況報告書(暫定)』

 

本文には現場の記録、目撃証言、報告書との矛盾、装備貸与の記録

そしてそこに何度も出てくる名前。

 

――萩原研二

 

「爆処のエースか」

「まず報告書の記載に間違いが無いかを確認したいのですが、私が行ってきても良いですか?」

「相手は機動隊だろ?新人のお前一人で舐められたりしないか?」

「警備企画課として頑張ってきます」

 

勇ましい顔を作るが先輩はチラリと見るだけで書類に目を戻してしまった。

 

「部署に報告書の確認入れるくらいならまぁ…どうせ近くだ、度胸試しに行ってこい」

「はい!ありがとうございます。」

 

その一言を待っていた。

 

「すぐ行ってきます」

 

 

荷物と着替えの入ったリュックをロッカーから取り出しエレベーターに乗り込む。

途中しっかりマンションの場所を確認する事も忘れない。

私の曖昧な原作知識ではマンション特定できてなかったからやっぱり情報の集まるここに居て正解だった。

私は機動隊部署では無く、萩原研二がいるであろう現場のマンションへ向かった。

 

――――

目的の人物はやはり防護服を脱いでいた。

ばっちり原作通りだね

 

 

「萩原研二巡査ですね。規程違反の現行犯です。防護服はどうしましたか?」

 

萩原さんのぽかんと空いた口からたばこが落ちる

 

「え?え?なに?すごいステージ衣装のアイドルがなんで現場に?」

「これは私物の防護服です」

「私物でフリッフリの防護服着てる一般人なんて絶対面倒な奴だよね?」

 

私が開発したケルベロスの礼装(防護服)である。タクシーで着替えた。

万全の装備だがこの服装で規制線を越えるのは一苦労だった。

全然警察だって信じてもらえない。当然ではある。

 

「一般人ではありません。私は警察庁警備局警備企画課に所属する魔法成人女性です」

「魔法成人女性って全然わかんないんだけど?え?」

 

警察手帳を示すとマジマジと見られる

 

「警察庁所属?私服勤務って事?階級上?え?華美な服装は規定違反では?」

「とにかくあなた方が規定違反を犯している以上このまま職務を任せることは出来ません。指示に従って現場を離れていただきます。」

 

あくまで淡々と告げると周りの空気がピリっとした物に変わった。

目の前の萩原研二の目にも少し剣呑な物が混じる

 

「えっと…格好はともかくあんたは警察庁から茶々入れに来た人間って事ね……解体が間に合わず10億みすみす犯人に受け渡すことになった件は後日きちんと始末書で報告をあげます。でも現場のことは現場の人間が一番分かってんだからしゃしゃり出てこないでくれますか?後始末ぐらい自分たちでつけますよ。」

 

そこで携帯が鳴った。私を睨みつけたまま萩原さんが出る。

 

「松田か、今ちょっとばかし面倒なことになってんだ。後にしてくれ。あぁ、大丈夫だ」

 

あらら、思ったよりもう時間が無い。

 

「現場を横取りしに来たわけではありません。防護服を着ないなら降りてくれと言ってるんです」

「今この爆弾の解体はエースの俺に任されてる。始末書なら後から必要なだけ書かせていただきますよ」

「仮にあなたがここで殉職した場合のことを考えてください。悲しむ人が居るでしょう。始末書では済みません。あなたを推薦した何人かの首も飛びますよ」

 

原作でも気になってたけどこの人、交番勤務スキップしてこの部署に居る異例の人事を受けているのだ。私もそう。ここで殉職なんて事になったら引き立てた人は間違いなく処分を受ける。そうなると恐らく私の人事も見直される可能性がある。

 

絶対に失敗できない

 

景光くん救済のためにも今あの部署から離れるわけにはいかない。仲間とかの情に弱そうなのでコレで説得されて一段でも下の階に下りてくれないかなぁ。

 

「殉職って…爆弾は止まってるんだから流石に後の解体くらい失敗なんて…」

「遠隔で止められるのですから遠隔で動かすことも可能なのでは?」

「そんな安直な…」

 

――ピッ……ピッ

 

あ、駄目だった。タイムアウト。

 

等間隔の電子音が会話を遮った

一斉に集まる視線の先で残り6秒のタイマーが動く。

 

「嘘だろ……っ!全員退避!逃げろ!」

 

 

全員が退避する中、人の流れに逆らって爆弾に駆け寄りケルベロスステッキ(打撃力増強バット)をオンにしてグッと握った。

 

大丈夫、これはまだ私の想定の範囲内、念のため持ってきたそれはキック力増強シューズと同じ原理のステッキだ。フルスイングの衝撃に爆弾は耐えられるか?振動トラップとか仕掛けられてたらアウトだけど他に方法は無い。

 

コナンくんも多分やってたから大丈夫なはず!

 

 

マンションの外

何も無い斜め上空に狙いを定めて一気に振り抜く

 

「飛んでけ!ケルベロススウィング!」

 

剛速球ななめ45度の理想的な軌道で打ち出された爆弾がマンション横の空で炸裂する。

 

反動でバランスを崩したところを爆風に煽られ吹き飛びそうになるが、すんでのところを後ろから支えられた。萩原さんだ。案外近いところにいた。やっぱり6秒では全然逃げられないよね。この距離では消し炭だっただろう。本当に良かった。

 

「ギリギリセーフといったとこですね。皆さん無事ですか?」

 

いくつかの人の塊がこちらに手を振って無事を知らせてくれる。少なくとも見える範囲の被害は軽微で、ほっと胸をなで下ろした。

 

「ありがとうございます萩原巡査。立てますか?」

「ねぇ爆弾殴り飛ばすとか正気!?脳筋なの!?」

「助かったらそれでいいじゃないですか。しゃしゃり出たかいはありました。」

 

ニッコリ笑って念を押しておく。

 

「次から、ちゃんと着て下さいね。防護服」

 

「えぇなに…あんた……ははっ…魔法少女カッケー」

「魔法成人女性ですよ」

 

全員半ば放心状態の現場と反比例して

地上からは蜂の巣をつついたような喧噪が響く

 

萩原研二の救済成功

大勝利である

 

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