転生夢主は救済もコメディ路線で生きたい【完結済み】 作:yako
パトロールによる検証の結果わかったことが3点
・子供でも発明品を使えば割と大人を倒せる
・発明品は内部に機械っぽいコードをそれっぽくつけたら結構無茶な理屈の性能も通る。
・いい住宅街っぽいのに犯罪率が高い
パトロールと称して半ば治安維持隊のような探偵のような曖昧な活動を重ねた結果私の自称魔法少女キャラとしての地位も固まってきており上々である。まだ原作時間軸に入っていないので引き続き要検証だが概ねこの世界の空気感がわかってきた気がする。
自室の窓からはちょうど諸伏家の玄関が見える。
大きな荷物を持った高明が景光と玄関で何やら会話しているが、内容までは聞こえてこない。私は窓から大きく身を乗り出して二人に向かって笑顔で声をかけた
「林間学校!楽しんできてくださいね」
未来が決まっているならば、動けるのは「異物」である私だけだ。
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武器の確認よし
本日は準備してた感の無い若干フリフリ程度の寝間着が衣装である。まあ私は美人なので武器が装飾過多なだけで十分魔法少女に見えるだろう。座して待つ。人死はシリアスの中で起こる。この理論に私は賭ける
夜、暗闇でじっと息を殺す
隣家のチャイムを鳴らす音が聞こえた
来た………
緊張で身体が震える
私がこの事件を捩じ伏せねばいけない…
諸伏夫妻のやさしい微笑みが頭をよぎる
窓からそっとのぞくと玄関では諸伏兄弟の父親が何やら男と口論になっている。
男の背中に回した手に握られた刃物を見た。間違いない!
瞬間私は窓のサッシに片脚をかけ必殺の名乗りを叫んだ。
「魔法少女!参上!!」
声量は近所迷惑なレベルだが「キャラ」的にはそれでいい
異常事態だからみんな出てきてほしい
二階の窓から隣家の玄関まで飛び降りると冷たい夜風が頬をなでた。手に持っているのは魔法少女のステッキを模した特製のシャイニーケルベロスロッド(スタンガン)である。
玄関前もみ合いになっている二人の男が一瞬あっけにとられたように固まる。狙い通り一瞬で場の空気の掌握を成し遂げた。
ようこそコメディの世界へ。
「えいや!ケルベロスの咆哮!!」
「うあああああぁあああぁ!!」
装飾過多なスタンガンがうなりをあげ、悲鳴が轟く。
「奥へ逃げろ!」
家の中に向かって諸伏のお父さまが叫んだ
そのときだった
「景光待ちなさい!行かないで!」
諸伏の奥さまの悲痛な声が響く
一瞬私の気がそれた瞬間に、犯人によって武器が弾き飛ばされる
「父さん!夢主ちゃんの声が!?…!」
玄関先に景光が駆けてきた
男に目を向け、刃物の光に猫目を大きく見開いている
その無防備な姿に背筋が凍る
「景光くんダメ!奥に…っ!」
視界の端で犯人の男がナイフを逆手に握り直すのが映った瞬間、思考より先に私は景光くんに飛びついていた
背中から私の肩に刃が食い込む
鋭い痛みに世界が一瞬白く瞬いた。
ぶしゃっと温かな液体が顔にかかる感触
「………っ!」
「わっ!?…え?…夢主ちゃ…夢主ちゃん!!」
抱きしめた景光くんは凍り付いた顔で全身を震わせている。
かなり深く入ったらしく痛みで崩れそうな膝を必死で立て直す
まずいシリアスな展開だ!私が死にかねない
くだらない雑念で自分を奮い立たせる
視界の端で犯人が態勢を立て直しもう一本の凶器を握る
「諸伏さん!ケルベロスロッドを!!」
「これか!…っ!!」
「がぁぁぁぁ!!」
諸伏父がケルベロスロッド(スタンガン)を拾って応戦する。
なかなかシュールな絵面にちょっとだけコメディが戻ってきた気がしてふふっと笑ってしまった。
「さっきからなんの騒ぎだ!」
「きゃあああ!!諸伏さん!!」
騒ぎを聞いて続々集まるご近所の方々に向かって私は叫んだ
「暴漢です!警察呼んでください!」
私の一言を皮切りに数人の男の人が飛びかかり犯人は制圧された。
どこの誰が持ち込んだのかロープで手足をぐるぐるに縛っている。マンガ的表現でとても良い。なかなかのコメディだ。
それらを横目に、ホッとして足の力の抜けた私は景光くんを巻き込んでズルズルと玄関先に倒れ込んだ。
勝った~~~諸伏夫婦の防衛に成功しました。
もうやり遂げた達成感でいっぱいである。
あ~~眠たい眠たい
諸伏の奥さまが私に駆け寄ると悲鳴に近い声を上げた。
「夢主ちゃん!血が……!血がこんなに!ダメっ目を閉じないで」
景光くんが震えながら私を抱え込み、手を握っている。
「夢主ちゃんしっかり……ごめん…ごめんなさい……ぼくが…ぼくのせいで…ぼくを庇ったから…」
シリアス。
まあ結構派手に出血してるからそうなるか
このままでは景光のメンタルが心配である。
「景光くんって……誕生日…まだだよね?」
「……なに?…よく聞き取れない……誕生日?」
よかった顔を上げてくれた。少し声を張り上げて話す
「私、景光くんより誕生日早い……つまり私は景光のお姉ちゃんなの」
「……同級生だよ…?……お姉ちゃん?」
「そうそう……弟なんだから守られて当然ね?…泣かないでよし!……ね?」
バチコーンとウインク付きである。
理論はむちゃくちゃなのは分かるが、顔面が美しいのでコレでなんとかなるだろう。神様ありがとう。
そのままあっけにとられた顔の景光くんを現場に残し
泣きながら駆け寄ってきた両親と共に私は救急車で病院に運ばれた。
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「ただいま戻りました。」
黄色いテープを張られた諸伏家の玄関先に響いた自分の声は、意図せず硬かった。
事件を受け林間学校から急遽帰宅し、規制線を越えて足を踏み入れると、まず血の臭気が鼻を刺す。
玄関の床に残る血の飛沫に背筋が凍る。
母の腕の中では景光が顔を真っ赤にして静かに泣いていた。
「この血の量はいったい……景光…怪我は無いか?」
問いかけに母が震える声で答える
「夢主ちゃんが……景光をかばって………っ刺されて………病院に運ばれたの」
「ぼくが………ぼくが玄関に出ちゃったから………夢主ちゃんが」
景光の静かな震える声での懺悔は、涙で途切れた
私は景光の頭にそっと手を置いて胸に引き寄せた
「悪いのは刺した人間だ。おまえが落ち込むことはきっと夢主さんも望んではいないだろう」
一度深く息を吸うと母に問いかけた
「病院はどちらに?」
「今から行くの…さっき電話でまだ手術中だって…あなたも一緒に……」
「はい、行きます。」
玄関を出るときほんの一瞬だけ血を見つめ、誰にも気付かれないほど小さくつぶやいた
「………夢主さん……どうか無事で……」