転生夢主は救済もコメディ路線で生きたい【完結済み】   作:yako

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伊達航の救済

 

 

「自動車メーカー重役の7歳の息子さんが誘拐…………」

 

成宮くんと顔を見合わせる

お昼のパスタをくるくるしながら聞くにはなかなかヘビーな話だ。

 

「そうなんだよ。なんか知らねぇか?おまえら、あの辺りしょっちゅう彷徨いてるだろ?」

「高木くんの寮と伊達さんの家に近いですからね。声かけに行くのに彷徨いてますけど………う~ん怪しい二人組の男ですか……?」

「あはは……あなた方も怪しい二人組ですけど……」

 

高木くんが遠い目で呟いた。

 

「…俺は近くに住んでる半グレが怪しいと思うんだよなぁ…うっし、高木、張り込みに行くぞ」

「え…あ、はっはい!」

 

伊達さんの号令に、高木くんが慌てて席を立つ。

 

「頑張ってくださいね」

「僕の方でも情報を集めます。」

 

「おうよ! じゃあな!」と快活に手を振ると、伊達さんは高木くんを連れて出て行ってしまった。成宮くんがそっと私に身を寄せる

 

「……この張り込みです」

「…了解」

 

 

ーーーー

 

 

深夜の街角。私は伊達さんと高木くんを見つけると声をかける

 

「こんばんは。ご一緒させてください」

「……っ!夢主さっ…隠れてください!」

 

張り込み現場に顔を出した私を高木くんが慌てて物陰に引っ張りこむ。伊達さんは驚きながらもどこか余裕がある態度で面白そうな顔をする。

 

「おいおい……なんか差し入れあるか?」

「あんパンと牛乳です。」

 

袋を差し出す私に、高木くんが苦笑する。

 

「ベタですね……成宮くんは……」

「周辺を回ってます」

 

成宮くんは周辺で怪しい車がないか探してみるらしい。酔っ払いに張り込み対象が殴られたら知らせるように言われている。止めるかどうかは判断に任せるとも。

 

「伊達さんはお守り持ってますか?」

「あぁ?あのエアバッグか?ちゃーんと胸ポケットに入れてるよ。なんだお前、それが心配で顔出したのか?」

「はい、心配で心配で……」

「はは、大丈夫ですよ。伊達さん、殺しても死なないなんて言われてるんですよ?」

「そうだと良いんですけど…あ、あの人ビール瓶で殴る気みたいですよ」

 

私の視線の先、千鳥足の男が張り込み対象の半グレに向かって瓶を振り上げている。

 

「…って!おい!止めろ」

「大丈夫ですか!?」

咄嗟に伊達さんと高木くんが同時に飛び出した。それぞれの男に飛びかかって引き離すが、あと一歩及ばず少しビール瓶が半グレ集団のリーダーの男に掠った。そのまま昏倒する男を伊達さんが支えて大声で呼びかける。

「おい!救急車呼んでくれ!」

「はい。コール済みです。指示があるそうなのでこちらどうぞ」

伊達さんに携帯を持たせて、自分はイヤリング型携帯電話を操作する。

視界の端で高木くんが酔っ払いを取り押さえている。

コール一回で相手が出た

 

「成宮くん?救急車の誘導手伝って欲しくて」

 

 

ーーーー

 

 

四人で夜明け直前の町を歩いて帰る。

高木くんも伊達さんもボロボロだ。

その後ろを成宮くんと多少距離を開けて付いていく。

 

「この後、手帳落とした瞬間にしゃがまないように歩道に押し込んだら助けられそうですね……長かった………」

「本当にそうかなぁ……簡単すぎない?」

「簡単に終わって悪いことありますか?」

「コメディにするのが大事なんだけど…エアバッグ一応作動させても良いかな?」

「あなたの判断に任せますが……」

 

前を歩く伊達さんが思いついたように高木くんを呼び止めた

「そうだ、………お前に良いもの見せてやろう……………おっと」

 

手帳が落ちた

 

その瞬間、成宮くんが動く。

神経が一気に尖る。後ろの方で不自然に大きなモーター音がする

 

成宮くんは伊達さんに駆け寄るとその体をグッと歩道の方に寄せる。

 

「な!なんだどうした成宮!」

 

当然伊達さんは抵抗した。

ですよね。

ダメ押しが必要だ。私は瞬時に動く。

 

「伊達さんごめん!」

「ぐはぁ!」

 

私は謝ってから伊達さんの胸ポケットを渾身の力を込めて思いっきりグーで殴った。

伊達さんの胸元から赤いものが凄まじい勢いで吹き出す。その勢いで成宮くんごと高木くんの方へ班長が倒れ込む。

 

「確保!!暴行の現行犯だ!刃物を放せ!!」

 

物陰から人が飛び出してきて私につかみかかる。

 

「え?」

 

勢いにもつれて道路へ押さえ込まれかける

耳元で凄まじいタイヤの擦れるスリップ音

私は咄嗟に足で蹴り上げ、つかみかかってきた人間を伊達さんの方に投げ飛ばした

伊達さんの胸元からあふれ出た大量の赤いハートのクッションの方だ

沢山の銀紙テープと膨らむクッションが舞い散っている

 

ドンっ

 

 

 

 

私が覚えているのはそこまで。

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

目を開けると病院のベッドだった。

じっと自分を見下ろす視線がある。鏡かと思った。

「……成宮、くん……?」

掠れた声で呼ぶ

「………はい。ここにいます」

「…どう、なった?」

「伊達さんは無事です…あなたと運転手以外は大した怪我ではない…です」

「そっか……そっか……よかったぁ…」

 

 

「僕あなたの身内って事になってますから。名字違うの誤魔化すのに、複雑な事情のある生き別れの弟を装ってます。同意書とかも僕が書いてるんで。後で不都合があったら言ってください。あなた相当状態が酷かったので…親族以外は一切面会謝絶なんですよ」

「あらら……そうなの?」

「あと諸伏兄弟が廊下で夜を明かしてます。お2人とも僕が『生き別れの弟』だって嘘をついて救急車に乗り込んだのが、相当お気に召さなかったようで…でも面会も付き添いも身内以外入れないから……夢主さんが一人になってもいいんですか?って言って無理矢理納得してもらってます」

 

「……両親……来るんですか?」

「吹雪で遅れてるそうですけど、向かってるそうです。……僕見たら争いごとの元になります?」

「…ん…そうだね………なるね。ふふっ」

 

「………今は少しでも休んで…夢主さんの口から直接、ご両親に説明してください。姉弟みたいな赤の他人だって……僕はこのまま、弟のふりしてここに居ますので」

 

「そうだね…そうする………眠い……………」

 

「救済お疲れ様です………」

「ありがと……………………」

 

長年の心のつっかえがやっと取れたような爽快感に包まれて

私は沈むようにスッと眠れた

 

 

ーーーーー

 

 

 

ブウォンキキッ…キキーーーードンっ

タイヤの蛇行する、空気を引き裂くような音に重なって鈍く大きな音がした。

 

パンパカパーン♪

チャリラリチャリラリララッタッタター

 

一瞬静まりかえった現場に伊達さんの胸元からどこか気の抜けるような、まるで魔法少女の変身音のような音が皮肉に響き渡る。

 

真っ赤なハート型の物体と銀紙がふわふわと辺りを埋め尽くし、その赤が一番濃い場所に夢主さんが横たわっている

 

赤が

 

どんどん広がっている

 

「救急車呼んでください!」一番早く反応したのは高木さんだった。

「車の運転手の方も救助と確保を!蛇行運転していたので体調不良か飲酒の可能性があります!」

 

「は……?なんだこのクッション…刃物で刺したんじゃ……」

「勝手に飛び出すな!早く救助しろ!対象に死なれたら困るんだ!」

 

飛びかかった男が呆然と呟くのを横目に、わらわらと物陰から人が出てくる。飛び掛かったやつ含め恐らく全員、僕らを尾行していた捜査員だろう……馬鹿みたいだ……

 

とにかく手を動かす

頭の出血だから派手なだけだ。

自分に言い聞かせ圧迫止血をする。

 

到着した救急車に乗せるのに同乗を申し出る

 

「弟です、名字が違いますが…事情があって」

 

顔が似ているせいか、一刻を争う状態のせいか、特に疑われることなくスムーズに同乗できた。

 

何故そんなことをしたのか、後で絶対にややこしいことになるのは分かっている。ただ、離れたくなかったし、他人だと言いたくなかった。

 

「お願いします…姉を…唯一の身内を一人にしたくないんです」

 

ただそんな言葉が涙と共にするりと口からこぼれた

 

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