転生夢主は救済もコメディ路線で生きたい【完結済み】 作:yako
病院に到着した私は緊急手術、肩はぐるぐるに包帯巻き
失血が多かったので絶対安静である。
病室の前で涙でボロボロになった両親に迎えられたときは心の中で謝った。両親にとてつもない心労をかけてしまった。
詳しい警察の事情聴取はまた後日だ。
怪我をしたのは計算外だったがまずは悲劇を防ぐことが出来た。
原作事件に自称魔法少女がぬるっと介入できるのかはいわば賭けだった。そして私は賭けに勝った。よしよし、今後も自称魔法少女キャラで行こう。
もう後には引けない。
成人したらどうしよう?少女じゃ無いから魔法成人女性?今後も救済を続けるためには調整を考えなくてはならない。
そんな事を一人ベッドでつらつらと考えていた病室に引き戸の音が響く
「夢主さん、開けてもかまいませんか?」
カーテン越しに声がかかった
高明君の声だ
「はい、かまいません」
返事を返すと
景光くんがはじかれたようにベット端に駆け寄ってくる
「夢主ちゃん!……っ」
しかし私の肩の包帯にハッとしたように勢いを緩め痛々しげな顔をすると顔を伏せてしまった。高明くんが景光くんの頭にそっと手を置いた
「大切な家族をあなたに救っていただいたと聞きました。ありがとうございます」
「魔法少女ですから当然のことです。むしろ玄関先を汚してしまって申し訳ないです」
今の受け答えは魔法少女らしかっただろうか?そもそも今更だけど魔法少女らしさって何だろ…自分をどこまで出して良いのか加減が難しい…でもなぁ…すごく汚してしまっていたから謝っておきたかった。
「魔法少女……いつも素晴らしい活躍をなさっていますね。しかし今回は……」
言葉を切るとそっと視線が私の肩にずれた
「あなたのその傷は残ってしまうと聞きました。」
高明君の眉がきゅっと寄る。
医者からは傷跡が残るのは間違いないとは聞いている。
高明くんがその事実に心を痛めているのが真っすぐ伝わってくる。
あれ?結構大ごとになってる?
それはジワジワとした衝撃であった。
めでたしめでたしで終わる気でいたのに
景光くんも顔を伏せて震えている
え?景光くん泣いてる?2人の少年を苦しませてしまっている。
認識した途端に激しい罪悪感が襲ってきた。気持ちの座りが悪く、そわそわとして落ち着かない。え?え?どうしよう?
推しには笑顔で心穏やかに幸せでいてほしい。そのために頑張ってる。
「あなたが、いつも魔法少女と称して人のために危険に身をさらす姿を見てきました。なぜそうするのか興味深く…正直いささか楽しんでいた面があったことも否定出来ません…止めておけばよかったと今は後悔しています」
「魔法少女は悪を倒す者です。好きでやってることですから」
だからそんなに深刻に受け止めないでほしい。
「あなたは、今は事態の深刻さが分かっていないかもしれませんがその包帯が取れた時、あなたの人生が変わってしまったことに気付かれるでしょう。受人適水之恩、当似湧泉相報……私たちはその献身に報いたいと考えています」
だめだ圧が強い。高明くんに真っ向から口で勝てる気がしない。
すごくシリアス。
「女性に傷を残してしまったこと……そして家族を救っていただいた大恩…私の生涯をかけて返させてください」
「え?」
「私と婚約しましょう。」
え、今私推しにプロポーズされてしまった?え?プロポーズだよねコレ。お嫁に行けなくなったから責任取りますだよね?
私はキャラも忘れてポカンとしてしまった
高明くんがまっすぐこちらを見つめる。覚悟が決まっている目をしている。
推しの思い切りが良すぎて吃驚。
景光くんまで泣くのをやめてぽかんとしている。
「え?高明くん私のこと好きなんですか?」
「好ましく思っています」
「傷物になったのを案じて嫁にもらってくれようとするくらいには?」
「…はい、そうなります」
う〜ん…中学生にこんなに思い詰めさせてしまったのは明らかな失態である。この空気を変えねばならない何とかして
静かな視線に私は思い切って口を開いた
「例えばなんですけど、ここに金の塊があるとするじゃないですか」
私はこぶし大の空間をなでる仕草で金塊のイメージを示した。
景光の猫目が涙で溶けてしまいそうだ
二人ともじっと黙って聞いてくれる
「重さが変わらないとして多少傷がついたからって価値が下がりますか?」
「…………。」
「私の美しさは金の輝きに等しいです。つまり私という存在はいわば金の塊。」
誰も死んでないから。みんな悲痛な顔でシリアス展開に持って行くのはやめてほしい。耐えられない。
「私の両親もですが、何も泣く必要はありません。私は傷を負いましたが、それで私が困るほど何か変わりましたか?高明くんは嫁の行きてがないほど私の美しさが損なわれたと感じるんですか?」
「それは………いえ、失礼をしました。そこは訂正をします。」
「じゃあ婚約とかはしなくていいですよね?」
「…はい、あなたが望まないならば」
良かった〜。推しの人生狂わすとこだった。
「そもそも私たち子供なんですから、責任も何もありませんよ」
笑い飛ばすと高明君はぎこちないながらも微笑んでくれた
その白い首から耳にかけてがじわじわ赤くなる
「………軽率で、おこがましい言葉でしたね。」
「………金の塊……」
景光がそっと私の手に触れ、言葉を噛みしめるように小さくつぶやいている
そこへ諸々の手続きを終えたらしい両親が警察と共に入ってきた
扉の前で会話を聞いていたのか涙を流しながらも夫婦抱き合ってうんうんとうなずいている。コメディチックではあるが今世の両親は私を愛してくれている情の深い人である。一歩間違えばこの人達を私の行いで悲劇に叩き落とすところであった。危ない危ない。
シリアスに殺されないように頑張ろう。
ーーー
退院した私は包帯がとれるのも待たず自称魔法少女活動を再開した
シャイニーケルベロスステッキ(スタンガン)は証拠品として押収されたのでパトロールを兼ねた散歩が主である。
今回の救済では自身の負傷以外にも計算外な事がもう1点あった
生還した諸伏夫妻のPTSDである。
犯人が児童の保護者というセンセーショナルな事件にマスコミが押し寄せ、諸伏父もショックを受けて地元の小学校教師を一度退職する事となった。また諸伏母も事件後玄関のチャイムにひどく脅えるようになり、時折フラッシュバックもあるらしくメンタルが不安定になっていた為、落ち着くまでは犯罪被害者のメンタルケア専門病院のある東京の親戚の家に身を寄せる事が決まった。
「夢主ちゃん……東京じゃなくて東都だよ?」
景光くんが訂正してくる。まだまだこちらの世界の固有名詞の違いに慣れない。しかしそれも不思議ちゃんキャラの強化に繋がっているので特に困っていない。そのうち慣れるだろう。
「ちゃんと覚えて手紙書いてね。間違えたら嫌だよ?住所が違ったら届かないよ?」
景光くんが私の両手をぎゅっと握ると顔をのぞき込んで念入りに確認してくる
「景光、心配なら私が夢主さんから手紙を預かろう。」
「そうして兄さん!僕いっぱい手紙書く!だから夢主ちゃんもいっぱい書いて!」
河川敷に並んだ影が伸びる
3人一緒にパトロール出来るのはきっとこれが最後だ。
景光くんは山の中にある、あの秘密基地でみっちゃんへの挨拶を済ませた。
両親と一緒に東都に引っ越すからだ。
原作のように声を失うことはなかったが犯罪被害を目撃したショックが大きいと判断されて両親と同じく東都の病院に通って慎重に経過観察をすることなった。高明くんは本人の希望もあり、同じ町内の別の親戚の家に預けられるため長野に残る。
結局兄弟離ればなれになってしまうのは原作補正だろうか。
「父さんも母さんも……また元気になってくれるかな?」
「ああ……きっと大丈夫だよ。景光」
諸伏兄弟の声には不安の滲むような響きがあった。
「僕きっと長野に帰ってくるから。」
景光くんは握った手に力を込めて宣言した。
しかし原作通り進めば彼はきっとこれから東都で降谷零はじめ警察組と出会って東都で公安警察になるのだろう。救済のためには追っかけないといけないなぁ……
「私、将来は東都にいきます」
力を込めて宣言する。例えば景光くんを何らかの方法で助けたとて、原作補正があるなら油断できない。東都に行って取りあえず警察学校組を助けよう。あの辺りの仲間が全員揃っていればなんとかなるだろう。
「…私も大学は東都に出ようと考えています」
立ち止まった高明くんが私の方を見て静かに宣言した。そうそう、高明くん東都大主席卒業って設定だもんね?そうだろうね。
「ええ!行き違っちゃうじゃん!」
景光がプンプンとかわいらしくむくれた。