転生夢主は救済もコメディ路線で生きたい【完結済み】   作:yako

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長野の編成と流鏑馬

 

 

桜の花が舞い散る中、高校の入学式の立て看板の前で私と景光くんが並び立つ

それを私の両親と、高明くんが目を細めて見つめていた。

 

「二人とも、入学おめでとう」

 

私は第一志望の由衣ちゃんのいる高校に合格した。景光くんも同じ高校である。

高明くんも駆けつけてくれたが、そこに諸伏夫妻の姿はなかった。

 

「父さんと母さんはやっぱりダメだった?」

「あぁ、ホームまでは来られたが降りようとすると吐いてしまって……二人とも残念がっていたから、せめて写真をたくさん送ろう。」

 

高明さんが桜並木で真新しい制服に身を包んだ私と景光くんの写真を何枚も撮ってくれる。諸伏夫妻はあの事件以降、長野に帰ってくることが出来ないでいる。空き家になったお隣さんは冬は景光くんがせっせと雪かきをしているので私も毎回手伝っている。おかげでずいぶん体力がついた。

 

「夢主さんは警察官を目指していると景光から聞きました。進学に強いこの学校を選ばれたと言うことは大卒採用を目指して?」

「はい、大学は出来れば東都で、キャリア警察官を目指します」

 

原作と違い長野に帰ってきた景光くんの今後がどうなるか分からないが一度は東都に行っているのだから油断できない。救済の為にも権力は出来るだけほしい。手が届く限りの高みを目指した方がいざとなっても潰しが効くだろう。

 

「そうですか…では私も世界平和の為に国家公務員試験を受けて警察庁を目指します。」

「…えぇ!」

 

高明くんがニコッと笑って宣言するのに驚いてしまった。高明くんは長野の軍師じゃないの?ここでも原作との剝離が起きる?それともこれから気が変わるのか?

 

「両親も東都で暮らしていますし。このままあちらで就職するのも良いでしょう。」

 

東都で待っていますねと笑う高明くんの瞳は揺るぎない。

 

「俺は長野も好きだよ?雪かきは大変だけどさ……夢主、東都に出るって本気だったんだな。……あぁ~あ!魔法少女がいなくなって長野の平和は誰が守るんだ?」

 

首と眉をヘニョリと曲げて困ったような顔を作った景光くんが笑う。

 

「由衣ちゃんとか大和くんとかじゃないですか?」

「……なぜ敢助くんが出てくるんですか?」

 

ジトッとした目を向けられた。この顔は珍しいのでじっと見ておく。いつも飄々としている高明くんの貴重な一面である。高明くんと大和くんとはお互いバチバチである。まだライバル意識のが強い時期なのだろう。この様子では盟友と呼べるようになるのはまだ先の話だ。

 

「由衣ちゃんといれば大和くんの話は必ず出てきます」

「そうそう、あと甲斐さんの話もね」

 

景光くんが横でうんうんと同意する。

原作では既に亡くなっていた甲斐さんも、まだ今は元気に巡査をしている。魔法少女としてパトロールする関係で交番勤務の甲斐さんには私も大変お世話になっている。彼に憧れている由衣ちゃんのためにもそしてこの街のためにもその死の原因を取り除けるなら長野に居る今のうちになんとか手を打ちたい。

 

 

「私もまだまだ長野の魔法少女として働きますよ。」

 

 

私がここでやらなければならないことが、まだたくさんあるのだ。

 

ーーー

 

 

「甲斐さんは流鏑馬をやめること出来ますか?」

 

馬の手入れをする甲斐さん見つけて声を掛けた。

シャッシャッと馬をなでるブラシの音が厩舎に響いて心地よい。

 

「これはおれにとって生きがいと言っていいものだから難しいなぁ」

甲斐さんはカラカラと笑って答えた。

 

「ですよねぇ……」

「……突然どうしたんだ?花の女子高生がなんか悩みでもあるのか?」

「はい、女子高生なので大いに悩んでいます。」

 

村ぐるみの根の深い賭博問題なんて数人昏倒したところでどうにかなる物ではない。発明品でどうやって解決したら良いのか全然思いつかないのだ。有力者数人で口裏合わせられたら終わりである。人数で来られたら特にコネを持たない女子高生にはもうお手上げだ。胴元は割れてるのだからばーっとしてがーっと解決出来ない物だろうかと考えるが、結局何か決定的な証拠でもつかまないとこの件は解決できない。尾っぽを出すまで待つにしても甲斐さんの決定的な事件が起こる頃には私は長野を離れている予定である。

 

膝を抱えてうんうん唸る私の横に甲斐さんが並んで座る

 

「で?魔法少女が何を悩んでるって言うんだ?まさかやめるのか?魔法少女」

「いえ、引き続き魔法少女ですが?」

「じゃあ誰かにやめろとでも言われたか?」

言いながら甲斐さんは眉を寄せ、考えるように顎に手を当てた。

 

「俺は交番勤務だから、夢主が引っ越してきた時からずっと知ってる。魔法少女になるって言ってあちこち走り回ってなぁ…まぁぁ危なっかしくて……」

「いつもご迷惑おかけしてます。」

「ほんとになぁ……」

 

そう、いつもご迷惑おかけしてきた。

 

「情けは味方、仇は敵なりだ。いざとなったらお前が助けたお前の味方が沢山いる。なのに自分自身を裏切ったらそれこそ馬鹿を見るぞ。せっかく好きなこと出来てんだから。お前はやりたいようにやったら良いんじゃないのか?。」

 

「え!やりたいようにで……いいんですか?」

「夢主なりにいつも考えて動いてるんだろ?」

「はい!やりたいようにやってみます」

 

流石甲斐さんである警察官って頼もしいな。

私は晴れやかな気持ちで厩舎を後にした

 

ーーー

 

 

夢主はやりたいようにやることにした。

 

虎田家の違法賭博について、夢主1人では十分な証拠をつかめなかった。しかし悠長に構えてはいられない。長野を離れて警察に入れば管轄違いの事件には首を突っ込みづらくもなる。夢主にはあまり時間がなかった。

そこでかなり乱暴だがシンプルな手段考え、実行した。

 

 

[虎田家に違法賭博の疑いがあるので本家へ直談判に行ってきます]

 

書き置きを残しての失踪である。

 

近隣の防犯カメラに確かに夢主が虎田家へ向かう様子が写るように移動。

虎田達栄に疑惑を突きつけてからこっそり裏山にこもった。

 

当然虎田家へ家宅捜索が入る。

少女が一人失踪していることから屋敷の隅から隅まで入念に行われた家宅捜索によって違法賭博の証拠品も押収される。

 

その後山で発見された夢主の「疑惑を突きつけたら猟銃を持って追いかけられた、殺されると思ったから森から出られなかった。」との証言から容疑者は拘束。違法賭博の証拠を整理するだけの時間が十分稼げる………

 

 

 

ーーーといったところでしょうか

 

 

長い指を組んだ高明くんが話し終える。

電気はつけず部屋は閉め切られて暗い。

 

 

………足が痛くなってきた。

もぞもぞと動くと鋭い視線が飛んでくる。

 

「以上が私の推理です。間違いないですか?夢主さん?」

「………夢主……どうなの?俺も聞きたい。」

 

真顔の景光くんが間近で私の顔をじっとのぞき込み、高明くんが口元だけで笑みを作る

 

ど修羅場である。

 

 

 

 

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