転生夢主は救済もコメディ路線で生きたい【完結済み】   作:yako

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阿笠博士と鍋奉行と長野

 

玄関開けたらコナンくんがいた。

 

「おねえさんだあれ?」

「こんにちは……魔法少女です」

 

急な邂逅に一瞬キャラを忘れそうになるがなんとか持ちこたえる。

 

「おお!新一。よく来たのう。」

 

ここは阿笠邸の玄関、私を見送るために出てきた博士がコナンくんに声を掛けた。

いやコナンくんではない。そう、この時代はまだ新一くんは普通に子供である。

 

「魔法少女!?え?お姉さん魔法が使えるの?」

「魔法少女なのですが実は魔法が使えなくって……」

「………じゃあ魔法少女じゃないんじゃない?」

 

そうなんだよ。魔法少女じゃないんだよ。

魔法は厳禁だからね。この世界。ニッコリ笑って私は主人公に念を押す。

 

「でも私、魔法少女じゃ無いと困ってしまうんです。で高度に発達した科学は魔法と区別がつかないって言うじゃないですか?だから阿笠博士に弟子入りして魔法の武器を科学の力で作るために頑張ってるんです」

「ねぇこのお姉さん大丈夫な人なの?」

 

うさんくさい物を見る目でジロジロと見ながら博士に確認をとられた。指を指すのは良くないと思う

 

「これこれ新一、失礼じゃろ?彼女は夢主さんといって東都大学に通う学生さんじゃよ。」

「え?お姉さん東都大生なの?」

 

コナンく……いや新一くんは目を見開いた

そう、私は東都大学に合格することが出来た。高明くんの後輩である。

 

「彼女は私の発明品のファンだそうで、わざわざ家を訪ねてきて弟子になって教えを請いたいといってくれてのぉ。こうしてたまに家を訪ねてくるのじゃ」

 

博士は誇らしげに胸を反らした。

 

「博士の発明ってほとんどガラクタばっかりなのに弟子入りって……お姉さんほんとに大丈夫な人?」

「がっ……ガラクタとはなんじゃ!ガラクタとは!」

 

ショックを受ける博士の擁護に回る。

 

「博士はすごい人なんですよ?お姉さんの魔法道具、ケルベロスシリーズって言うんだけど博士のアイディアのおかげで随分進化したんですから」

「ケルベロスシリーズ……何その名前…」

 

私のケルベロスシリーズは博士との共同開発で飛躍的進化を遂げた。彼のいっそコメディチックなオーバーテクノロジーによって私はこの東都においても魔法少女として確かな実績を重ねてきている。新一くんは納得いかない顔で見上げてくるが事実は事実である。博士もうんうんとうなずいている。

 

「まず携帯電話をここまで小型化できるなんて博士は間違いなく天才です。」

 

髪をあげて耳につけたイヤリング型携帯電話を見せると丁度コール音が響いた。

 

「あっとと、ちょっと失礼します。」

 

電話の相手は景光くんだった。

ディズプレイに相手の名前が表示できないから出るまで分からないんだよね。

 

「夢主?今どこにいるの?」

「阿笠博士宅にお邪魔していたのですが、そろそろお暇しようかと」

「お!ちょうど良かった、帰りに豚肉買ってきてくれる?白菜もらったから鍋にしようと思ってさ」

「お鍋!おうどんありました?」

「あるある、今日はゼロも来られるっていってたから量作れるし、いろいろ具材入れようぜ」

 

私は今いろいろあって景光くんと暮らしている。

そう、いろいろあった。

 

はじめは一年ほどは一人暮らしをしていたのだが、私が6人目となるストーカーを警察に引き渡したところで両親からストップがかかった。いくら私が美少女といえど流石にペースが速すぎた。何度も迷惑をかけるのも気が引けて、ストーカー引き連れて女子寮の部屋に帰るわけにもいかず。相手を撒くために頻繁に人の多い飲み屋街を深夜徘徊していた事も悪く働き、長野に強制帰宅となりそうになったところで私は諸伏兄弟に泣きついた。

 

結果、景光くんの部屋に転がり込むことでなんとか東都暮らしを続ける事が出来ている。警察庁にも近く、高明くんも様子を見に来てくれると言うことで両親を説得してくれたのが大きい。

 

つまり私のキャリア警察への道は諸伏兄弟に対する両親の絶大な信頼によって首の皮一枚ギリギリで繋がった状態である。最近では何かあるたびに「景光くんには話したの?」「高明くんに相談しようか。」と言われてしまう。どうかと思う。

 

家でも魔法少女を演じなければならないのはちょっとしんどいが、料理上手な男手があるのは助かるもので、私は充実した毎日を送っていた。

 

たのしみにしてますといって電話を切ると私は新一くんを振り返った。

 

「改めて、阿笠博士の弟子で魔法少女の夢主です。よろしくね。」

「よろしく……」

 

主人公にうさんくさい印象を残せたのは成功である。

自称魔法使いとして私は邁進している。

 

ーーー

 

 

玄関開けたら零くんが既にいた。

 

「出たな魔女め。」

「はい、魔法少女です。いらっしゃい零くん」

 

寒くなってきましたね~と手をこすりながら玄関扉を閉めて中に入る。あまり雪の降らない東都だが、強いビル風の寒さは長野の雪の寒さとはまたちょっと違う辛さがある。

 

「おかえりー豚肉買えた?」エプロン姿の景光くんがキッチンから顔を出す。

「いつものお肉屋さんでおまけしてもらえました。すじ肉もいただいたのでじっくり煮込みましょう」

「え?駅超えて商店街の方まで行ったの?スーパーで良かったのに」

 

袋を受け取ると景光くんはキッチンへ戻っていき、見送る私を再び零くんがギロリと睨め付けてきた。

 

「おい魔女、居候がいらっしゃいとは生意気じゃ無いか?」

「私の家でもあるんです。お客さまにはいらっしゃいが正解です」

 

零君は何かと突っかかってくる。思春期かな?

 

「大体ストーカー被害に困って居候してるヤツがふらふらと歩き回るな」

「困っては無かったですよ?ケルベロスシリーズの実証実験に役立ってましたし。親を安心させる為に景光くんと暮らしてるんです」

「……ヒロの優しさにつけ込む魔女がぬけぬけと…ヒロがお前のためにどれだけ気をもんでると思ってるんだ」

「ゼロも夢主もその辺にしとけよ」

 

景光くんが鍋をカセットコンロに置きながら仲裁に入る。

 

「もう煮始めちゃうから、夢主も早く手洗っておいで」

 

助かった。零くんは景光くんの家に私が居候していることが心底気に食わないらしく、この件で絡まれると長いのだ。私はこれ幸いとまだ何か言いたげな零くんを背に洗面台に逃げた。

 

――――

 

「ちゃんとバランス良く食べろ。あと白菜にポン酢かけすぎだ。」

 

鍋奉行な零くんが私の器にどんどん野菜をいれる。

 

「あ、零くんそこの白滝も入れてください」

「こっちはまだダメだ、この餅巾着食べて待っておけ。」

 

口を丁寧に結ばれた餅巾着が器に入る。これもおいしいんだよね。

食べ盛りの男子が二人いるおかげで鍋の具材も種類豊富、もはや闇鍋状態だが全てが調和して味がまとまっているのは流石、料理上手の景光くんの手腕である。ここでの食生活によって舌がとても贅沢になってしまった。もう戻れない。

 

「高明くんも来れたら良かったですね」

「兄さん、忙しいからな。今週はまだ顔見れてないから心配だよ」

「お兄さんは警察庁に勤めてるんだろ?」

「そうです。私の目指すキャリア組です」

 

高明くんは無事警察庁でキャリアをスタートさせていた。私も早く後を追わねばならない。

 

「魔女が警察庁でキャリア組やっていけるのか?人の上に立つ事を求められるんだぞ?」

 

零君がうさんくさい物を見る目を向けてくる。

 

「そうですね、私は美人過ぎるから一見鼻持ちならないキャラに見られることもあるでしょうし、部下受けは悪いかもしれませんね。せめて自分で言うのは封印しましょう」

「……そうじゃない。おまえセルフイメージどうなってるんだ?」

「夢主は昔からブレないよね」

 

景光くんがクスクスと笑っている。

零君が座り直すと真面目な顔で言った。

 

「真面目な話をしているんだ。上に立とうと思ったら立場に会わせて自分を変えることも必要なんじゃ無いのか?」

「目的のために他者からのイメージをコントロールする。その考えには同意します。高明くんも威厳を出すために髭を生やしはじめたらしいですからね。」

 

その言葉に景光くんが反応する

 

「え?兄さんが髭を?」

「はい、先日電話でそう話していました」

 

え~想像できないなと言って景光くんがうんうん考え出した。

 

「きっと結構似合うと思いますよ」

 

長野のコウメイでは無いにせよ原作の諸伏高明に近づいてきたということか。

 

「あと魔女じゃ無くて魔法少女です。でもそうですね、私もこのまま魔法少女でやってくのはきついかもしれ無いとは考えてます。」

「自覚あったのか」

「夢主?」

 

驚いた顔をする二人に

 

「魔法成人女性になります。」

 

私は宣言した。

 

 

「「は?」」

「成人したので」

 

私はぐつぐつと煮える鍋から白滝を取り出して食べた。

味がしみていてとてもおいしかった。

 

ーーー

 

ずっと長野で夢主と一緒に居たかったな。

 

俺は小さくため息をつくと肉屋の袋から連絡先の書かれたメモをつまみ出して破いて捨てた。

 

あの肉屋、夢主が行くと毎回おまけが多すぎるとは思っていたが案の定だ。博士の家からの距離なら途中のスーパーを使うと思って頼んだのに失敗だったな。近いうちに商店街に行って釘を刺しておくか。

豚肉を切って鍋に入れながら考える

 

少なくとも長野ではこんなこと無かった。

俺や兄さんがついて回っていたのは勿論、ご近所さんが危なっかしい夢主から目を離さなかったからだ。夢主は高嶺の花であり、こんな気軽に声を掛けられる存在では無かった。それが東都に来てからは世界が広がってしまったのか夢主を守る目に隙が出来てしまっている。

 

まさかストーカー被害を見かねた親に長野に連れ戻される寸前までこちらを頼ってこないとは思わなかった。

あの失踪事件以来、無茶なことはしていないと思ったのが間違いだった。

 

ゼロと夢主のやりとりが途切れ途切れに聞こえてくる。

 

「…ストーカー被害に…ふらふらと…」

「困って無かったですよ?…」

 

そう困っていないのだ。夢主は。

なんだか聞きたくなくて鍋を持ってリビングに向かう。

 

「ゼロも夢主もその辺にしとけよ。もう煮始めちゃうから、夢主も早く手洗っておいで」

 

 

―――

 

夢主は人目を引く人間だった。それは色々な意味で。

 

あと全然人の話を聞かなかった。繊細そうな見た目をしているのに中身は我が強く、案外大雑把で怖い物知らず。無鉄砲。そして自分ルールの強い人間だ。でなければ魔法少女などしていなかっただろう。

 

俺の実家が襲撃された時だってそうだ。事件以来、俺の周りは一変してしまった。両親も環境も変化してしまう、そんな中で一番ひどい被害を受けたはずなのに変わらなかったのが夢主だった。死んでもおかしくない出血のなかで笑ってる歪な光景が頭から離れない。

 

変わらない夢主の姿は救いであると同時にトラウマでもある。

 

そう、夢主は歪だ。容姿を誇り、自らを黄金とまで言い切るのに自分を大切にしない。価値があると自覚しているならそれなりの行動を取ってもらいたいのに。何か俺には分からない信念のような物を持って動いている。

 

それらが一番悪い形で出たのがあの事件

長野での失踪事件のようなこともうごめんだ。

 

 

足があって勝手に火に飛び込んでいく黄金の塊をどうやって守れば良いのか、それだけでも頭が痛いのに、ましてやそれは有象無象の輩を引き寄せて自分は平気な顔をしている。

 

人を頼ることを覚えたとして、ストーカー相手に困ってないと言い切る人間がいつ頼ってくるんだろうか。あれだけ兄さんに怒られて今度は頼ってくれたと思ったら6人片付けた後の話だ。乾いた笑いしか出ない。

 

「…夢主は昔からブレないよね」

 

このまま夢主を連れて長野に帰りたい

ただ公園で遊んでいた頃が懐かしい

 

傷つけられてしまうのが怖かった。夢主が変わってしまうのが怖かった。変わってほしいのか変わってほしくない。もはや思考がぐちゃぐちゃだ。黄金なら大人しく金庫にでもしまわれていてくれないだろうかと幾度思ったかしれない。

 

いつまでも変わらず魔法少女である夢主をずっと見ていたかった。

 

「…でもそうですね。私もこのまま魔法少女でやってくのはきついかもしれないとは考えてます。」

 

「夢主?」

 

心臓が不安に跳ねた。

変わってしまう、夢主が、

 

「魔法成人女性になります」

 

 

「「は?」」

「成人したので」

 

 

やっぱり夢主はブレない。

ほっとしたような複雑な気分で俺はまた笑ってしまった。

 

 

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