そらマリ   作:raian sinra

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### 第五十四章:女神のティータイムと、無限の惚気(のろけ)地獄

ホロライブのオフィスの一角にある、関係者専用の防音ミーティングルーム。

その日の午後、友人A(以下、Aちゃん)は、持ち込んだノートパソコンを前に深く、ひたすらに深いため息をついていた。

「……でね、Aちゃん。その時のマリンちゃんが、本当に、本当に可愛くて!」

向かいの席では、ホロライブの絶対的象徴であるときのそらが、持ち込んだ高級な紅茶を優雅に傾けながら、頬をピンク色に染めて熱弁を振るっていた。

話題は当然、現在進行形で交際中であり、そらが文字通り「溺愛」している恋人——宝鐘マリンについてである。

「昨日の3期生のオフコラボ、見てくれた? マリンちゃん、私の言ったことちゃーんと守って、誰にも触らなかったの。偉いでしょ? あの、普段はスキンシップ大好きなマリンちゃんがだよ? 私との約束のために、ずっと両手を膝の上に置いて、プルプル震えながら我慢してたんだよ。……あぁ、もう、思い出したらまた愛おしさが爆発しそう……」

そらは、両手で自分の頬を包み込み、とろけるような乙女の顔で身悶えしている。

「……ええ、拝見してましたよ、そらちゃん。業務の一環として」

Aちゃんは、死んだ魚のような目でキーボードを叩きながら答えた。

「でもあれ、約束っていうか、そらちゃんが配信直前に『誰かに触ったら明日ベッドから出さない』って脅迫LINEを送った結果ですよね? 3期生の他の子たち、本気で怯えてましたよ。特にぺこらちゃんとか」

「脅迫だなんて人聞きの悪いこと言わないでよぉ。私はただ、マリンちゃんへの溢れる愛情を素直に伝えただけだもん。それに、マリンちゃんも『ご褒美』って言われて満更でもなさそうだったし」

「あの悲鳴のどこをどう切り取ったら『満更でもない』に変換されるんですか、あなたの脳内フィルターは……」

Aちゃんはこめかみを揉んだ。

そらとマリンの交際を最初期から知る(というか見抜いていた)Aちゃんは、今や完全にそらの「惚気(のろけ)の聞き役」として定着してしまっていた。

普段は誰よりも真面目でプロ意識が高く、頼れる親友であるそらだが、こと「宝鐘マリン」のことになると、ストッパーが完全に外れてしまうのだ。

「ねえAちゃん、見て見て。これ、昨日の夜、マリンちゃんが『今日はいっぱい我慢したから、褒めてください……』って送ってきた自撮り。可愛くない? このちょっと上目遣いで、私の反応を窺ってる感じ。もう最高に庇護欲そそられるよね」

そらはスマートフォンの画面をAちゃんの目の前に突き出した。

そこには、部屋着姿で少し潤んだ瞳をした、あざとさ(と本気の怯え)が同居した海賊の姿が映っていた。

「はいはい、可愛いです、世界一可愛いです。……そらちゃん、私、その自撮り見せられるの今日で5回目ですよ」

「えー? そうだっけ? だって何回見ても新鮮に可愛いんだもん。あー、早く仕事終わらないかなぁ。早くマリンちゃんのお家に帰って、あの赤い髪をいっぱい撫でて、いっぱいよしよししてあげたい……」

「(……『マリンちゃんのお家に帰る』って、もう完全に半同棲状態じゃないですか……)」

Aちゃんは、砂糖をバケツで飲まされているような甘すぎる空気に当てられ、限界を迎えようとしていた。

(誰か……誰かこの暴走する女神を止めて……! 私の胃が、糖分過多で穴が空く……!)

Aちゃんが心の中で神(ただし目の前のそらではない別の神)に祈りを捧げた、まさにその時だった。

『ガチャリ』

「——そらちゃん。ちょっと、お話いいかな?」

ミーティングルームのドアが開き、凛とした、しかしどこか険しい声が響いた。

そこに立っていたのは、そらと同じくホロライブの「0期生」として共に歩んできた盟友、そしてホロライブが誇る【 清楚と健全の歌姫 】——AZKiだった。

### 第五十五章:歌姫の介入と、告発される『罪状』

「あ、AZKiちゃん! お疲れ様〜、どうしたの?」

そらは、先ほどまでのデレデレの顔を一瞬で引っ込め、いつもの「女神スマイル」でAZKiを迎え入れた。

しかし、AZKiの表情は硬かった。

彼女はツカツカと部屋に入ってくると、Aちゃんの隣の椅子を引き、そらの真正面に腰を下ろした。

「そらちゃん。……単刀直入に聞くね」

AZKiは、真っ直ぐにそらの目を見つめた。

「マリンちゃんと、付き合ってるよね?」

「——ッ!」

Aちゃんが息を呑む。

一方のそらは、全く動じることなく、きょとんとした顔で小首を傾げた。

「うん、そうだよ? マリンちゃんは私の恋人。私の一番大切な人だよ」

あっさりとした肯定。隠す素振りすら微塵もない。

その堂々たる態度に、AZKiは小さくため息をついた。

「やっぱりね。薄々そうじゃないかとは思ってたけど……。リスナーさんたちもネットで騒いでるし、最近のそらちゃんのSNSでの行動、いくらなんでも露骨すぎるよ」

「えー? そんなことないよぉ。マリンちゃんが『リスナーさんには秘密にしたい』って言うから、私ちゃーんと隠してあげてるもん」

「どこが!? どこが隠してるの!?」

AZKiが、思わず机をバンッ!と叩いて立ち上がった。

温厚で平和主義なAZKiが声を荒げるなど、滅多にないことである。Aちゃんは(AZKiちゃんがキレた……!)と内心でガッツポーズをした。

「いい、そらちゃん!? 私、最近のそらちゃんの行動を全部メモしてきたんだからね!」

AZKiはスマートフォンを取り出し、画面をスクロールしながら読み上げ始めた。

「罪状その一! 『お揃いのピンキーリング事件』!

マリンちゃんが隠そうとして右手の小指にはめたリングを、わざわざ手元カメラありのピアノ配信で見せびらかして、しかも『誓いのリング』とか発言してマリンちゃんを公開処刑にした件!」

「あれはマリンちゃんが照れてるのが可愛かったから、つい……」

「罪状その二! 『フワモコちゃん牽制事件』!

スタジオでマリンちゃんに抱きついたフワワちゃんに対して、裏でマリンちゃんにどんな『お仕置き』をしたのか知らないけど、次の日からマリンちゃんが『フワモコちゃんに触るとパパに殺される!』って泣きながら逃げ回るようになった件! 後輩が困惑してたよ!」

「パパの言うことをちゃんと守るマリンちゃん、お利口さんだよね」

「罪状その三! 『湊あくあ・疑似家族巻き込み事件』!

ただでさえコミュ障なあくあちゃんを『娘』という名の従属関係に引きずり込み、あくあちゃんの配信チャット欄で『夫婦の時間だから邪魔しないでね』と堂々と公開セクハラ(マウント)をかました件!」

「あくあちゃんも、パパとママができて喜んでたよ?」

「喜んでないよ! 完全に怯えて『チワワ』みたいになってるよ!!」

AZKiは息を切らしながら、そらをビシッと指差した。

「そらちゃん、私はね、二人が付き合ってること自体は祝福してるの! マリンちゃんみたいな素敵な子とお互いに想い合えるなんて、素晴らしいことだと思う。……でもね!」

AZKiは、バンッと両手を机についた。

「最近のそらちゃんの愛情表現は、過激すぎる! 重すぎる! マリンちゃんを束縛して、他のホロメンまで巻き込んで怯えさせて……そんなの、私の知ってる『清楚で健全なそらちゃん』じゃない!

もっとこう、お互いを尊重し合う、爽やかで【 健全(ピュア) 】な交際をしなさい!!」

ホロライブの良心、AZKiからの魂の叫び。

それは、暴走する女神の独占欲に対する、正論すぎるカウンターであった。

Aちゃんは隣で(AZKiちゃん……! よく言ってくれた……!)と感動の涙を拭っていた。

### 第五十六章:女神の反論と、深すぎる『愛の哲学』

AZKiの熱烈な説教を受け、そらはしばらくの間、目を丸くしてポカンとしていた。

そして。

「……ふふっ、あははははっ!」

突然、口元を押さえて楽しそうに笑い出したのだ。

「そ、そらちゃん? 何がおかしいの?」

AZKiが戸惑う。

「ごめんごめん、AZKiちゃんがあんまりにも真剣に怒ってくれるから、嬉しくなっちゃって。AZKiちゃんは本当に優しいね。私のことも、マリンちゃんたちのことも、ちゃんと見ててくれてるんだね」

そらは笑いを収めると、先ほどまでの「恋に浮かれた乙女」の顔から、ホロライブの頂点に立つ「絶対神」としての、静かで、しかし圧倒的な引力を持つ表情へと切り替わった。

「でもね、AZKiちゃん」

そらは、テーブルの上で両手を組み、AZKiを真っ直ぐに見つめ返した。

「私、ちっとも不健全なことなんてしてないよ。私はただ、マリンちゃんのことが世界で一番大好きで、それを隠したくないだけだもん」

「だ、だから、隠したくないからって、周りにマウントを取ったりマリンちゃんを縛り付けたりするのは……」

「縛り付けてるんじゃないよ。……『守ってる』の」

「守る……?」

そらは、少しだけ寂しそうな、切なげな瞳を伏せた。

「マリンちゃんはね、私と付き合い始めた時から、ずっと言ってるの。

『そら先輩はホロライブの象徴だから、私みたいな海賊が恋人だってバレたら、そら先輩に迷惑がかかる。だから、絶対にリスナーにも、他のメンバーにも秘密にしましょう』って」

その言葉に、AZKiとAちゃんはハッとした。

確かに、宝鐘マリンという人間は、表向きは豪快でセクハラ発言も多いが、根は誰よりも周りを見て気遣う、繊細で真面目な女性だ。

彼女が「秘密にする」と頑なに言い張るのは、己の保身ではなく、愛する「ときのそら」のブランドを守るための、彼女なりの【 献身 】なのだ。

「マリンちゃんのその気持ちは、すごく嬉しい。……でも、私はそれが悔しいの」

そらが、組んだ手にギュッと力を込める。

「私だって一人の女の子だよ? 好きな人ができたら、『この人は私の恋人です!』って世界中に自慢したい。それに……マリンちゃんはすっごく可愛くて、優しくて、魅力的なんだから、私が目を離したら、すぐに他の誰かに取られちゃうかもしれないじゃない」

「……そらちゃん」

「だから私は、外堀を埋めてるの。マリンちゃんが『私なんか……』って卑下して、私の隣からいなくなろうとする隙を与えないように。

他のホロメンにも『マリンちゃんは私のものだからね』ってわからせて、手を出させないように。

リスナーさんたちにも、『この二人はこういう関係なんだな』って、少しずつ、少しずつ受け入れてもらえるように」

そらは顔を上げ、AZKiに向けて、とてつもなく深く、ドロドロに煮詰められた、しかしこの上なく純粋な「愛」に満ちた笑顔を向けた。

「私がマリンちゃんを追い詰めてるように見える? ううん、違うよ。

私がマウントを取って、マリンちゃんが『もうやだぁ〜、そら先輩の愛が重すぎるぅ〜』って言いながら、私の腕の中に逃げ込んでくる。……それが、私とマリンちゃんの【 健全(ピュア) 】な愛情表現なんだよ」

「——ッ……!」

AZKiは、言葉を失った。

そらの愛は、決して狂気や単なる支配欲ではない。

宝鐘マリンという不器用な恋人の性質を完全に理解した上で、彼女が絶対に逃げ出せない(そして本人も逃げ出したくないと思う)ように、緻密に計算され尽くした【 絶対的な包容 】だったのだ。

「それにね、AZKiちゃん」

そらは、立ち尽くすAZKiにトドメを刺すように、優しく首を傾げた。

「私がちょっと意地悪して追い詰めた時の、マリンちゃんのウルウルした目……本当に、すっごく可愛いんだよ? AZKiちゃんにも見せてあげたいくらい」

完全に「ヤバい奴」の目だった。

論理と愛情で武装した、無敵のスパダリ(スーパーダーリン)の姿がそこにあった。

### 第五十七章:歌姫の白旗と、新たな観測者の誕生

長い、長い沈黙がミーティングルームに落ちた。

AZKiは、そらの顔をじっと見つめた後、ゆっくりと椅子に座り直した。

「……はぁぁぁぁぁぁっ」

そして、これまでにないほど深く、長い特大のため息をついた。

「負けた。……こんなの、勝てるわけない。そらちゃんの愛、深すぎてマリアナ海溝より底が見えないよ……」

「ふふっ、そんな大袈裟な」

「大袈裟じゃないよ……。マリンちゃん、これ一生そらちゃんの手のひらの上じゃん。……なんか、逆にマリンちゃんが不憫に思えてきたし、同時にものすごく愛されてて羨ましくもなってきた」

AZKiは、すっかり毒気を抜かれた顔で、テーブルに突っ伏した。

「健全」や「常識」という言葉で縛るには、するとマリンの愛の形はあまりにも完成されすぎていたのだ。

隣でその様子を見ていたAちゃんが、慰めるようにAZKiの肩をポンポンと叩く。

「わかりましたか、AZKiちゃん。これが、私たちが『そらマリ観測委員会』として、ただ見守る(というか怯える)ことしかできない理由です」

「うん……わかった。Aちゃん、今まで一人でこの重すぎる惚気を処理してたんだね。お疲れ様……」

「わかってくれればいいんです……(涙)」

二人の苦労人が共鳴し合っていると、そらがポンと手を打った。

「あ、そうだ! AZKiちゃんも、これから『そらマリ観測委員会』に入ってくれる?」

「えっ? 私も?」

「うん。だって、AZKiちゃんもこれで、私とマリンちゃんの【 秘密 】を知る仲間になったわけだし。……それにね」

そらは、悪戯を思いついた子供のような、キラキラとした瞳でAZKiを見た。

「今度、AZKiちゃんからマリンちゃんにLINEしてみてよ。

『そらちゃんから、二人が付き合ってるって聞いたよ。おめでとう!』って」

「——!?」

AZKiとAちゃんが、同時にビクッと肩を震わせた。

「ま、待ってそらちゃん!? そんなの送ったら、マリンちゃん心臓止まっちゃうよ!? 『隠してるつもりだったのに、0期生の大先輩にまでバレてた!?』って、パニックになるに決まってる!!」

「そうそう、そこなの!」

そらは両手を合わせて、満面の笑みで頷いた。

「マリンちゃん、絶対に『ち、違うんですAZKi先輩! これは誤解で!』って泣きながら私に電話してくると思うの。

そしたら私が、『AZKiちゃんにまでバレちゃったかぁ。マリンちゃんが隠すの下手だからだぞ? お仕置きしなきゃね』って言って、マリンちゃんのお家に行く口実ができるでしょ?」

「悪魔か!!!」

AZKiとAちゃんのツッコミが、見事にハモった。

ホロライブの女神は、清楚の皮を被った恐るべき策士(ヤンデレ気味)だった。

マリンを愛でるための「口実」を作るために、同期のAZKiすらも容赦なく利用しようというのだ。

「もう……そらちゃんには誰も逆らえないね。わかったよ、協力する。その代わり、あんまりマリンちゃんをいじめすぎないこと! わかった?」

AZKiは諦め顔で白旗を揚げつつ、最後の抵抗として条件を出した。

「うん、わかってる。私、マリンちゃんのこと世界で一番大切にするから」

そらは、一点の曇りもない、心の底からの純粋な笑顔でそう答えた。

その言葉に嘘偽りがないことだけは、AZKiにも痛いほど伝わってきた。

### 第五十八章:海賊の悲鳴と、終わらない愛の包囲網

その日の夜。

宝鐘マリンは、自宅のベッドでくつろぎながらスマートフォンを弄っていた。

今日はそら先輩とは会えない日だが、先日のオフコラボでの「お仕置き(ご褒美)」で体力を根こそぎ持っていかれたマリンにとっては、貴重な休息日であった。

『ピロン』

LINEの通知音が鳴る。

画面を見ると、送り主は【 AZKi 】となっていた。

「あれ? AZKi先輩からLINE? 珍しいな。今度一緒に出るライブの打ち合わせかな?」

マリンは何も疑うことなく、メッセージを開いた。

AZKi:『マリンちゃん、お疲れ様! 今日ね、そらちゃんから直接聞いたよ。マリンちゃんとお付き合いしてるんだってね! そらちゃん、すっごく幸せそうに惚気てたよ  色々大変だと思うけど、私でよければいつでも相談に乗るからね。二人ともお幸せに!✨』

「…………」

マリンは、その画面を見たまま、石像のように固まった。

(あ、あ、AZKi先輩に……?)

(そら先輩が、直接言った……?)

(っていうか、惚気てた……!?)

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!」

深夜のマンションに、海賊の断末魔のような悲鳴が響き渡った。

「お、終わった!! 私の『リスナー(と一部ホロメン)には秘密の恋』計画が、完全にお釈迦になった!! あの清楚の化身であるAZKi先輩にまでバレるとか、もうホロライブ全土に知れ渡るのも時間の問題じゃないのよぉぉぉ!!」

マリンは頭を抱えてベッドの上を転げ回り、半狂乱になっていた。

『プルルルルルル』

その時、タイミングを計ったかのように、そらからの着信が入る。

「ヒッ!? そ、そそそそら先輩!?」

マリンは震える指で通話ボタンを押した。

『あ、マリンちゃん? こんばんわ』

電話の向こうから、世界で一番甘くて、世界で一番恐ろしい、大好きな人の声が聞こえる。

「こ、こんばんわぁ……。あの、そら先輩……! さっき、AZKi先輩からLINEが……!」

『うん、聞いたよ。AZKiちゃんにバレちゃったんだってね?』

そらの声は、なぜかとても楽しそうだった。

『マリンちゃんが上手く隠してくれないから、とうとうAZKiちゃんにまで勘付かれちゃったみたい。……これは、パパとして、しっかりお仕置きしに行かないとダメだよね?』

「ち、ちが、ちがいますぅ!! 船長は完璧に隠蔽工作してました!! そら先輩が自分から言ったんでしょぉぉぉ!?」

『ふふっ。今からマリンちゃんのお家、行くからね。鍵、開けて待っててね?』

「そ、そら先輩!? 明日船長、朝から収録が……!」

『大丈夫。私が優しく……朝まで、可愛がってあげるから』

『ツーツー……』

電話が切れた。

「あ、あああ……」

マリンは、力なくスマートフォンを取り落とした。

逃げ場はない。外堀は完全に埋められ、味方だと思っていた0期生の先輩すらも、すでにそら大先輩の支配下に置かれてしまったのだ。

「……もう、どうにでもなれぇ……! そら先輩のバカぁ……! だぁぁぁぁい好きだぁぁぁ……!!」

マリンはヤケクソのように叫びながら、自ら玄関に向かい、愛する魔王(女神)を迎え入れるために鍵を開けるのだった。

関係を隠したいポンコツ海賊と、周囲を巻き込んでまで愛を叫びたい圧倒的な女神。

その奇妙で甘すぎる関係は、AZKiという新たな「理解者」を加え、ホロライブの裏側でさらに深く、重く、そしてどこまでも幸せに続いていくのである。

 

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