そらマリ   作:raian sinra

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### 第七十五章:魔王(そら)からの指令と、震える6期生たち

ホロライブ公式3Dスタジオの広大な控え室。

今日の配信は、宝鐘マリン、6期生(秘密結社holoX)の5人、そしてhololive DEV_ISから「ReGLOSS」の5人が集結するという、総勢11名による超大型コラボ企画である。

しかし、控え室の空気は、大型コラボ前の華やかさとは程遠い、まるでこれから激戦区へと赴く特殊部隊のブリーフィングのような重苦しさに包まれていた。

「……みんな、覚悟はできているわね?」

鷹嶺ルイが、スマートフォンの画面をテーブルの真ん中に置き、同期の4人——ラプラス・ダークネス、博衣こより、沙花叉クロヱ、風真いろは——を見回した。

4人は、テーブルに置かれたスマホの画面を覗き込み、一様にゴクリと唾を飲み込んだ。

画面に表示されているのは、ホロライブの絶対神であり、宝鐘マリンの恋人(パパ)である【 ときのそら 】からの、holoX全員に向けたグループLINEのメッセージである。

『holoXのみんな、おはよう✨

今日はマリンちゃんと、ReGLOSSの後輩ちゃんたちとのコラボだね!

マリンちゃん、後輩の子たちを前にすると、すぐにデレデレしちゃって隙だらけになっちゃうから……パパ、心配なんだぁ。

だから、みんなにお願いがあります 

配信中、マリンちゃんがReGLOSSの子たちと【 過度なスキンシップ 】をしないように、しっかり守ってあげてね?

もし、マリンちゃんが他の子に抱きつかれたり、逆にマリンちゃんから抱きつきに行ったりしたら……

明日のオフ、マリンちゃんがベッドから出られなくなるのはもちろんだけど……

【 任務に失敗したholoXのみんなにも、先輩としてたっぷり「お仕置き(指導)」をしてあげるからね  】

期待してるよ✨ パパより』

「「「「「…………」」」」」

5人の間に、絶望的な沈黙が落ちた。

「お、お仕置きって……あの、そら大先輩からの、ガチの説教(物理)ってことでござるか……!?」

いろはが、顔を青ざめさせて震えている。

「パパの言うお仕置きだよ!? 絶対に普通の説教じゃ済まないよ! 腕立て伏せ1000回とか、バンジージャンプとか、そういうレベルの精神的・肉体的苦痛を伴うやつだよ!!」

こよりが、頭を抱えてパニックになっている。

「わ、吾輩は嫌だぞ! あの恐ろしい女神の逆鱗に触れるなんて! 吾輩、世界征服の前にホロライブから消されてしまう!」

ラプラスが、ソファの上でブルブルと震えている。

「でもぉ、ルイ姉……マリン先輩、可愛い女の子が大好きじゃん。特にデビューしたての後輩なんて、マリン先輩にとって絶好の獲物(セクハラ対象)じゃん……それを止めるなんて、不可能ミッションじゃないのぉ?」

沙花叉が、涙目でルイにすがる。

「不可能でもやるのよ!!」

ルイは、バンッ! とテーブルを叩いて立ち上がった。

「前回のコラボで、私たちはそら先輩の圧倒的な支配力(マリン船長へのガチ恋っぷり)を骨の髄まで理解したはずよ! あの人は本気よ! マリン船長を守ることは、私たちの命を守ることに直結するの!!」

「「「「はいッッ!!!」」」」

holoXの5人は、固い絆(恐怖)で結ばれた。

今日のミッションは【 宝鐘マリンとReGLOSSを物理的・精神的に隔離すること 】。

「おーい、お前たち! 何集まって深刻そうな顔してんのー?」

そこへ、何も知らない本日の護衛対象——宝鐘マリンが、ご機嫌な様子で控え室に入ってきた。

「いや〜、今日はReGLOSSちゃんたちとのコラボだねぇ! 船長、あの子たちに会うの楽しみにしてたんだよねぇ〜! 若くてピチピチの後輩ちゃんたち、み〜んな船長が可愛がって(セクハラして)あげるんだからっ! えへへへへ!」

マリンは、両手を揉み手のように擦り合わせながら、完全に「発情した海賊(おじさん)」の顔になっていた。

そらとの交際で最近はすっかり「メス」の顔を見せることが多くなっていたマリンだが、可愛い後輩を前にして、久々にセクハラ親父の血が騒いでいるらしい。

(((((バカ船長(ママ)ァァァァァァ!!!!)))))

holoXの5人は心の中で絶叫した。

護衛対象自らが敵陣(後輩)に突っ込もうとしている。これほど厄介な防衛戦はない。

「し、船長! 今日はホロライブの公式番組です! あまり過激なスキンシップは、BANの対象になりますから、控えめにいきましょうね!?」

ルイが必死に釘を刺す。

「えー? ルイ固いよぉ〜。スキンシップはホロライブの伝統芸でしょ! 船長がReGLOSSちゃんたちの緊張を、ハグとチューで解きほぐしてあげるのよ!」

「チューは絶対ダメです!! 殺されます!! 私たちが!!」

「えっ? 誰に?」

「……YouTubeのAIにです!!」

ルイは必死に誤魔化しながら、同期たちに目配せをした。

(いい!? 今日はマリン船長を【 私たち5人の円陣 】の中に入れて、絶対にReGLOSSの子たちに近づけないわよ!!)

かくして、何も知らないReGLOSSと、何も知らないマリン、そして恐怖に駆られたholoXによる、カオスな大型コラボ配信の幕が上がった。

### 第七十六章:ReGLOSS襲来と、限界海賊の発情

「イエス・マイ・ダーク! 秘密結社holoXだ!」

「Ahoy! 宝鐘海賊団船長、宝鐘マリンですぅ〜!」

「そしてー! hololive DEV_IS、ReGLOSSでーす!!」

公式3Dスタジオの巨大なセットに、11人のメンバーが横一列に並んだ。

画面の左側にholoX、中央にマリン、そして右側にReGLOSSという立ち位置である。

「いや〜、ReGLOSSのみんな! 今日はよろしくねぇ〜!」

マリンは、早速デレデレの顔でReGLOSSの5人(火威青、音乃瀬奏、一条莉々華、儒烏風亭らでん、轟はじめ)に手を振った。

「よろしくお願いします、マリン先輩! holoXの先輩方も!」

一条莉々華が、社長らしくハキハキと挨拶をする。

「マリン先輩〜! 奏、マリン先輩に会えてすっごく嬉しいですぅ〜!」

音乃瀬奏が、あざとく可愛い声でマリンに手を振る。

「おおっ、奏ちゃん可愛いねぇ〜! 船長が後でぎゅーってしてあげるからねぇ〜!」

マリンが、鼻の下を伸ばして奏に近づこうとした。

その瞬間。

「ダァァァァァメでござるゥゥゥ!!!」

風真いろはが、マリンの前に高速の「縮地」で滑り込み、両手を広げて物理的な壁となった。

「ひゃうっ!? い、いろはちゃん!? びっくりしたぁ!」

「ま、マリン殿! 奏殿はまだ未成年(?)のような純粋さを持っています! マリン殿の熟れた色気(セクハラ)を当てては、刺激が強すぎるでござる!! ここは拙者が盾になりまする!!」

いろはは、刀(模造刀)を構えるようなポーズで奏を【 マリンから 】守る姿勢をとった。

「ええ〜? マリン先輩、ぎゅーしてくれないんですかぁ? 奏、つまんない〜」

奏が、頬を膨らませて不満げに言う。

「す、するする! 船長がぎゅーしてあげるよぉ!」

マリンが、いろはの脇をすり抜けようとする。

「させないわよ!!」

今度は沙花叉が、マリンの背後から羽交い締めにして動きを止めた。

「マリン先輩! 船長のハグは、私たちholoXの特権でしょ!? 後輩にばっかりデレデレしないで、沙花叉のことも見てよぉぉ!」

(うわぁぁぁん! そら先輩ごめんなさい! マリン先輩に触るなって言われたけど、こうでもしないと止められないんですぅ!!)

沙花叉は心の中でそらに懺悔しながら、必死にマリンを拘束した。

「ちょ、沙花叉苦しい! なんで今日のholoX、こんなにガードが硬いの!? 船長はただ後輩と親睦を深めたいだけなのにぃ!」

マリンがジタバタと暴れていると、そこへ、ReGLOSSが誇る【 イケメン(ヘタレ)担当 】の火威青が一歩前に出た。

「フッ……マリン先輩。そんなに無理して後輩に近づかなくてもいいんですよ」

青が、前髪を掻き上げながら、低くて甘いイケボで囁いた。

「あ、青くん……!」

マリンの目がハートになる。

「マリン先輩のような美しい女性は、僕が……この火威青が、しっかりとエスコートさせていただきますから。さあ、僕の胸に飛び込んでおいで?」

青が、カメラ目線で完璧なウインクを決め、両手を広げた。

青のイケメンムーブ(ただし中身はポンコツ)は、マリンの乙女心(おじさん心)を強烈にくすぐった。

「きゃああああん! 青くぅぅぅん! 船長、飛び込んじゃうぅぅぅ!!」

マリンが、沙花叉の拘束を振り解き、青の胸へ向かってダッシュしようとした。

(ヤバい!!! あのイケメンに船長が抱かれたら、パパの嫉妬の炎でスタジオが焼け野原になる!!!)

「青ォォォォォォォォッ!!!」

ダァァァァァァァァァァンッ!!!!

鷹嶺ルイが、青の顔面めがけて(寸止めで)強烈な飛び蹴り(ライダーキック)を放った。

「ギャアアアアアッ!?」

青は、ルイの気迫に押され、悲鳴を上げて後ろにひっくり返った。

「ル、ルイ姉!? 青くんに何するのよ!!」

マリンが驚愕して叫ぶ。

「青!! アンタ、自分の立ち位置をわかってるの!? マリン船長はね、【 全宇宙で最も恐ろしくて美しい絶対神(パパ) 】のものなのよ!! アンタみたいな青二才のイケメンが手を出していい領域じゃないの!! 命が惜しければ引っ込んでなさい!!」

ルイは、青の胸ぐらを掴み(エアで)、ガチギレの表情で説教した。

「ヒィィィィィ! ご、ごめんなさい! 僕が悪かったですぅぅぅ!」

青は、ルイのあまりの迫力に、得意のイケメンムーブを完全に喪失し、床に土下座して震え上がった。

「る、ルイちゃん、怖すぎる……」

「青くんが秒でヘタレた……」

莉々華とらでんが、その光景を見てドン引きしている。

(はぁ……はぁ……、第一波、防いだわ……!)

ルイは肩で息をしながら、カメラの死角で親指を立てた。holoXの残りのメンバーも「ナイスゥ!」と無言で頷き合う。

しかし、これはまだ、地獄の防衛戦のほんの序の口に過ぎなかった。

### 第七十八章:社長の策略と、番長・らでんの包囲網

「えーっと……なんか、holoXの先輩たち、今日すごい気迫ですね……?」

一条莉々華が、困惑したように苦笑いする。

「そうなのよ! なんでか知らないけど、今日の子たち、船長とReGLOSSちゃんたちの間に絶対に壁を作ろうとするの! 船長、悲しい!」

マリンがぷんぷんと怒っている。

「うふふ、マリン先輩、気にしなくていいですよぉ〜」

莉々華が、社長特有のビジネススマイル(コミュ力お化け)で、スルスルとマリンに近づいてきた。

「私たちは、マリン先輩のことすごく尊敬してるんですぅ。だから、今日はマリン先輩からたくさん学ばせてもらおうと思って! ねぇ、マリン先輩のそのセクシーなポーズの秘訣、教えてくれませんかぁ?」

莉々華は、巧みな話術でマリンの懐に入り込み、マリンの腕に自分の腕を絡ませようとした。

(マズい! 社長の話術で船長が取り込まれる!!)

「ダメですぅぅぅ!!」

博衣こよりが、莉々華とマリンの間に「頭脳派」らしく大量のフリップ(クイズの小道具)を持って割り込んだ。

「り、莉々華ちゃん! マリン先輩から学ぶ前に、まずは私からのクイズに答えてもらおうかな! 頭脳で私に勝てたら、マリン先輩に触る権利をあげるよ!」

こよりが必死に話題を逸らす。

「ええっ!? なんで急にクイズなんですかこより先輩! 私はただマリン先輩と……」

「いいから答える!! 第一問!! ときのそら先輩のデビュー日はいつ!!?」

「えっ!? そら大先輩!? えーっと、2017年の……」

こよりが莉々華を分断している間に、今度は儒烏風亭らでんが動いた。

「いやぁ〜、マリン先輩の3Dモデル、本当に芸術的ですよねぇ〜。この衣装の装飾、そしてこの曲線美! まさにルネサンスの彫刻のようです! 素晴らしい!」

らでんは、美術館で絵画を鑑賞するように、マリンの周囲をぐるぐると回り、穴のあくほど観察し始めた。

「えへへ、らでんちゃんわかってるねぇ〜! 船長のこのボディ、どこから見ても最高でしょぉ〜? 触ってみる?」

マリンが、調子に乗って胸を張る。

「おおっ! では失礼して、この芸術品に触れさせて……」

らでんが手を伸ばした瞬間。

「貴様ァァァ!! 吾輩の船長(?)に気安く触るなァァァ!!」

ラプラスが、らでんの足にガシッと抱きついて動きを止めた。

「うおっ!? 総帥!? なんで私の足をホールドしてるんですか!?」

「いいから離れろ! マリンは美術館の展示品ではない! 触れる者は呪われる(パパに消される)のだ!!」

ラプラスは、己の小さな体を盾にして、必死にらでんの接近を防いだ。

「あの〜、マリン先輩!」

さらに、轟はじめが、持ち前の元気とフィジカルで正面突破を図ってきた。

「はじめ、マリン先輩と一緒に相撲とりたいッス! はじめと勝負するッス!」

はじめが、四股を踏んでマリンに突進してくる。

「えっ!? 相撲!? ちょ、はじめちゃん元気よすぎ……!」

マリンが後ずさる。

「どすこぉぉぉぉぉい!!!」

そこへ、再び鷹嶺ルイが、はじめの突進を真っ向から受け止めるために、自ら相撲の構えでぶつかっていった。

「ぐはぁっ!?」

ルイとはじめが、スタジオのど真ん中でガチの押し合い(相撲)を始める。

「な、なんだこの配信……」

マリンは、目の前で繰り広げられる、holoXによる決死の【 対ReGLOSS防衛戦(カオス) 】を、ポカンと口を開けて見つめていた。

### 第七十九章:決壊する防衛線と、カメラの向こうの冷たい視線

「はぁ……はぁ……」

配信開始から40分。

holoXの5人は、疲労困憊で肩で息をしていた。

青のイケメンムーブをルイが叩き潰し。

奏の甘えを沙花叉が身代わりで受け。

莉々華の交渉をこよりがクイズで遮断し。

らでんの芸術鑑賞をラプラスが足止めし。

はじめの突進を、ルイと風真が二人がかりで相撲で迎え撃つ。

まさに「死闘」であった。

5人の必死のディフェンスにより、マリンはReGLOSSのメンバーと【 指一本触れることのない 】完全なる隔離状態を保っていた。

「……みんな、よくやったわ……。これで、パパ(そら先輩)のお仕置きは回避できる……」

ルイが、汗を拭いながら同期たちと勝利のアイコンタクトを交わす。

しかし。

当の護衛対象である宝鐘マリンが、ついに不満を爆発させた。

「ちょっとぉぉぉぉ!!! あんたたち、さっきから何やってるのよぉぉぉ!!!」

マリンが、烈火の如く怒って前に出てきた。

「船長は! ReGLOSSの可愛い後輩ちゃんたちと! イチャイチャわちゃわちゃするために今日来たの!! なのに、なんであんたたちがいちいち間に入ってきて、船長を隔離するのよ!!

ここは無菌室じゃないのよ!! 船長は! 後輩の! 温もりが! 欲しいのぉぉぉ!!!」

マリンの、魂の(セクハラおじさんとしての)叫び。

それは、holoXが命懸けで築き上げた防衛線を、内側から完全に破壊する爆弾だった。

「し、船長!! ダメです! あなたが今求めている温もりは、明日【 絶対零度の地獄 】に変わるんですよ!! 目を覚ましてください!!」

ルイが必死に止める。

「うるさーい!! 船長は自由な海賊だー!! ReGLOSSちゃんたち! みんなおいでー!! 船長が全員まとめて抱きしめてあげるからねー!!」

マリンは、両手を大きく広げ、holoXの包囲網を突破して、ReGLOSSの5人の中に飛び込んでいった。

「わーい! マリン先輩だー!」

「マリン先輩、いい匂いするぅ〜!」

「やったー! 相撲とるッスか!?」

「マリン先輩、僕のエスコートを……」

マリンは、奏に抱きつかれ、莉々華に腕を組まれ、はじめにタックルされ、らでんに鑑賞され、青にウインクされるという、まさに【 夢のハーレム状態 】を完成させた。

「あぁ〜……船長、幸せぇ〜……。やっぱり若い子のエキスは最高だねぇ〜……」

マリンは、デレデレの顔でとろけきっていた。

その様子を見たholoXの5人は——。

「……終わった」

「……吾輩たちの命、尽きたり」

「……南無三」

「……パパ、許してぇ……」

「……船長、あなたのその幸せそうな顔……明日には涙でグシャグシャになるのよ……」

5人は、完全に心が折れ、スタジオの床に真っ白に燃え尽きた灰となって崩れ落ちた。

——そして。

配信スタジオの片隅に置かれた、スタッフ確認用のモニター。

そこには、配信のリアルタイムチャット欄が映し出されていた。

凄まじい勢いで流れるリスナーのコメントの中に、ひときわ異彩を放つ【 青いスパナ(モデレーター)マーク 】のアカウントが、たった一言だけ、静かに、しかし絶対的な存在感でコメントを投下した。

『ときのそら   : マリンちゃん、とっても楽しそうだね 』

そのたった一行のコメントは、スタジオの気温を一瞬にして氷点下まで引き下げた。

マリンは、ReGLOSSに囲まれながらも、野生の勘で背筋に強烈な悪寒を感じ、ピタリと動きを止めた。

「……えっ?」

マリンがモニターに目をやると、そこには燦然と輝く「ときのそら」の文字と、にっこりと笑う絵文字( )があった。

しかし、マリンにはその絵文字が、般若の面か、はたまた死神の鎌のように見えた。

「あ、あ、あああああ……っ!!」

マリンは、一瞬にして酔いが冷め、自分を取り囲んでいるReGLOSSのメンバーからバッと飛び退いた。

「そ、そそそそら先輩!? 違うんです! 違うんです!! これは! 後輩との、健全な、ただのコミュニケーションで!!」

マリンがカメラ(の向こうのそら)に向かって必死に弁明を始める。

「えー? マリン先輩、どうしたんですか急に?」

「もっとぎゅーしましょうよぉ〜」

何も知らないReGLOSSたちが、再びマリンに近づこうとする。

「こ、来ないでェェェェ!! 船長に触ると呪われるからぁぁぁ!! 船長の命(腰)が危ないのぉぉぉ!!」

マリンの絶叫がスタジオに響き渡る。

holoXの5人は、もはや助ける気力もなく、ただただ「アーメン」と十字を切りながら、明日自分たちに降りかかるであろう連帯責任(お仕置き)に怯え、震え続けていた。

### 第八十章:終演後の悲劇と、パパのお仕置き

「お疲れ様でしたー!」

「マリン先輩、holoXの先輩方、ありがとうございましたー!」

「楽しかったですぅ〜!」

カオスを極めたコラボ配信が終わり、ReGLOSSの5人は元気いっぱいにスタジオを後にしていった。

後に残されたのは、真っ白に燃え尽きたholoXの5人と、床に正座してガタガタと震え続ける宝鐘マリンだけであった。

「……ル、ルイ……」

マリンが、涙声でルイを呼ぶ。

「……なんでしょうか、船長」

ルイの声は、もはや生者のそれではなく、冥界から響く亡霊のようだった。

「……パパ(そら先輩)、怒ってるかな……?」

「怒ってるかな、じゃありません。激怒(激愛)通り越して、完全に【 捕食モード・フルスロットル 】ですよ。……私たちの忠告を聞かずにハーレムを作った船長の自業自得です」

ルイは、冷たい目でマリンを見下ろした。

「うわぁぁぁん!! ごめんなさぁぁい!! 船長がバカだったのぉぉ! 若いエキスに目が眩んで、パパの恐ろしさを忘れてたのぉぉ!! 明日、船長絶対ベッドに縛り付けられるよぉぉ!!」

マリンが床をバンバンと叩いて泣き喚いていると。

『ガチャリ』

スタジオの重厚な扉が、音もなく開いた。

「——みんな、お疲れ様」

そこに立っていたのは。

完璧なメイク、完璧なファッション、そして完璧な「女神スマイル」を浮かべた、ときのそら本人だった。

彼女の背後には、まるで黒いオーラ(独占欲)が具現化しているかのような、圧倒的な覇気が立ち込めている。

「「「「「ヒィィィィッ!!!」」」」」

holoXの5人が、一斉に土下座の姿勢をとる。

マリンは、もはや声も出せず、カエルを睨む蛇の前に出たように硬直した。

「ルイちゃんたち、お疲れ様。……私の言った通り、しっかり【 任務 】を果たそうとしてくれたね。配信、ちゃんと見てたよ」

そらは、静かな足取りでスタジオの中へと入ってきた。

「そ、そら大先輩……! 申し訳ありません! 私たちの力不足で、船長を後輩から守りきることができず……!」

ルイが、床に額を擦り付けながら謝罪する。

「ううん、ルイちゃんたちは悪くないよ。悪いのは……」

そらは、正座して震えているマリンの目の前に立ち、ゆっくりとしゃがみ込んだ。

そして、マリンの顎を指でクイッと持ち上げ、潤んだ瞳を真っ直ぐに見つめた。

「……私の忠告を聞かずに、可愛い後輩ちゃんたちにデレデレしてた、悪い海賊さんだよね?」

「ひゃいっ……! ご、ごめんなさい……パパ……っ」

マリンの目から、ポロポロと涙がこぼれ落ちる。

「ふふっ。泣かなくてもいいよ。マリンちゃんが後輩に好かれるのは、マリンちゃんが優しくて魅力的だからだもんね。それは素敵なことだよ」

そらは、優しい声でそう言いながら、マリンの涙を親指で拭った。

しかし、その直後、そらの顔がマリンの耳元へと近づき、底冷えのする低い声で囁いた。

「でも。……私の前で、私以外の誰かに抱きしめられて、あんなにとろけた顔をしてたのは……絶対に、許してあげないから」

「——ッッ!!」

マリンの全身がビクッと跳ねる。

「明日のオフ。……マリンちゃんが、他の誰かのことなんて1秒も考えられないくらい、私がたっぷりと……【 マリンちゃんの体の隅々まで、私の愛を刻み込んであげる 】からね。……覚悟してて?」

甘く、ドス黒く、逃げ場のない宣言。

それは、純粋な愛と独占欲が極限まで煮詰まった、女神からの死刑宣告(極上のご褒美)であった。

「あぁ……あぁぁぁ……っ、はいぃぃ……っ」

マリンは完全に腰を砕かれ、そらの腕の中に崩れ落ちた。

そらは、ぐったりとしたマリンを軽々と抱き起こし(お姫様抱っこ)、満足げな笑顔でholoXの5人を振り返った。

「ルイちゃんたちも、今日は本当にお疲れ様。……任務は失敗しちゃったけど、頑張ってくれたから、今日のお仕置きはナシにしてあげるね」

「ほ、本当ですか……!? ありがとうございます、女神様……!」

holoXの5人は、涙を流してそらに感謝の祈りを捧げた。

「うん。その代わり、明日はマリンちゃん、お休みするから。……もし何かあっても、絶対に連絡してこないでね? 」

そらは、最後に完璧なウインクを残し、マリンを抱き抱えたままスタジオを去っていった。

残された6期生たちは、ただただその場にへたり込み、二度と女神の逆鱗(嫉妬)には触れまいと、固く心に誓うのであった。

そして宝鐘マリンは、翌日丸一日、一切のSNS更新が途絶え、その翌日の配信では、首元までがっちりと隠れたタートルネック姿で、どこか恍惚とした(そして腰を庇うような)動きで画面の前に現れることになるのである。

 

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