錆びたシリーズってやべーモノだったりしますよね
(日常回です。)
オリジナル防具
【リフレクの盾】(分類:盾 / 錬成によってのみ可能)魔力を弾く結晶が埋め込まれた盾。重装の心得がある者が扱えば、敵の攻撃を受け流しつつ、その威力をそのまま撃ち返す。(中威力魔法まで)
能力値(ステータス)
守備:+4
(物理への防御力は一般的な「鉄の盾」中級程度)
魔防:+2
重さ:2
必殺回避:2
反映される技能:重装
トマシュ――もとい、闇に蠢く者の魔道士「ソロン」の逃亡劇による最高警戒態勢が解かれてから数日。大修道院は、まるで何事もなかったかのように平穏な(あるいはそう見せかけた)日常を取り戻していた。
だが、少年マイルズにとっては、日常に戻る=溜まりに溜まった過酷な雑用が倍になって押し寄せてくることを意味していた。
「よし……! これで厨房から頼まれた『壊れた調理器具の廃棄と仕分け』は完了、と」
大修道院の裏手にあるゴミ集積所で、マイルズは汗を拭いながら、自分の前に積まれたガラクタの山を見つめていた。その中に、ひときわ異彩を放つ一品があった。
それは、大修道院の食堂の厨房で長年酷使され、底がべっこりと凹んで文字通り「お釈迦」になった、鉄製の超特大フライパンだった。
普通ならただの粗大ゴミとして処分するところだが、マイルズの目は違った。
ピコン!
鑑定眼(潜在能力)S発動。
このフライパン、何層もの特殊な金属を重ねて鍛造されており、大修道院の強力な火力(時に火魔法の直火)にも耐える「超耐熱魔道仕様」の高級品だったのである。
「……持ち手が折れてるだけで、肉厚は十分だな。これ、裏側に取っ手を溶接し直して、内側に余った革紐を巻けば……立派な『追加装甲(盾)』になるんじゃないか?」
戦乱の予感が漂うフォドラを生き抜くため、俺が編み出した生活の知恵――それは「使えるゴミは全部防具にする」ことだった。さっそくマイルズは、鍛冶場の居残りで余った端材を使い、その不格好なフライパンを「ちょっと直径が大きくて異様に分厚い円盾(ラウンドシールド)」へと改造したのだった。
(鍛錬+特殊加工)S発動
―その日の午後。
警戒態勢が解けたとはいえ、実戦経験の不足を補うため、金鹿の学級はガルグ=マク近郊の街道沿いで、防衛騎士団と合同の模擬戦(対魔道士演習)を行うことになっていた。
ベレス先生の指揮のもと、クロードやヒルダ、ローレンツたちが整然と陣形を組む。マイルズはいつも通り、その最後尾で「荷物持ち」として、新調した(?)フライパン盾を背負って控えていた。
模擬戦の相手を務めるのは、教団の優秀な魔道士たちだ。
「よし、皆。今回の演習は『敵魔道部隊による不意打ちの対処』。魔道の詠唱が見えたら、前衛は即座に散開、後衛は詠唱妨害を。……マイルズは、後ろで荷物を守って」
ベレス先生の指示が飛ぶ。
「了解です、先生。俺はここから一歩も動きません」
マイルズが丁寧に一礼すると、先生は小さく頷き、前線へと視線を戻した。
「ふん、魔道士が相手か。我がグロスタール家の家名にかけて、無様な姿は見せられんね」
ローレンツが優雅に槍を回し、最前線へと進み出る。
だが、演習が始まった直後、ちょっとした「誤算」が生じた。
教団側のベテラン魔道士たちが、新米生徒たちの鼻を明かそうと、想定よりも数段上の、強力な「理魔法(アロー)」の多重詠唱を始めたのだ。
「なっ……おいおい、教団の旦那がた、模擬戦にしちゃちょっと火力が過剰じゃないかい!?」
クロードが弓を構えながら苦笑いする。
空中に展開される、何重もの青白い魔方陣。そこから放たれるのは、並の鉄の盾など容易く貫通し、着弾すれば周囲の地面ごと吹き飛ばす高密度の魔力弾だった。
「ひゃああっ!? ちょっと、こっち狙ってない!? 誰か止めてよー!」
ヒルダが珍しく本気で焦って斧を構える。
「前衛、下がって! 結界を展開する時間は――」
ベレス先生が即座に剣を抜き、前に出ようとした、その時。
カツーン、と。
マイルズが、足元の小石に躓いた。
「うわああああっ!?」
荷物の重みと、背負っていたフライパン盾の不格好な重量バランスのせいで、マイルズは文字通り「盛大に前方へ回転しながら」すっ飛んでいった。
ゴロゴロとアクロバティックに転がったマイルズは、前線で槍を構えていたローレンツの足元を綺麗に払い、そのままローレンツを巻き込んで地面に激突。
その勢いで、背中に背負っていた「超耐熱魔道フライパン盾」が、マイルズの手からすっぽ抜けて空高くへと跳ね上がった。
「な、何をするんだマイルズーーーっ!?」
地面に這いつくばったローレンツの悲鳴。
しかし、奇跡はその瞬間に起きた。
空中で不規則に回転していたフライパン盾が、教団の魔道士たちが放った直撃コースのアローの真っ正面に、完璧なタイミングでパキンと噛み合わさったのだ。
ベコン!!! と、大音響が街道に響き渡る。
本来なら、魔力弾は盾を爆砕するはずだった。しかし、その盾の正体は、大修道院の特級火魔法の直火に何年も耐え続けた「超耐熱魔道フライパン」の底である。
しかも、長年の酷使によって中央が「絶妙な放物面(パラボラ形状)」に凹んでいた。
ドシュウゥゥゥン!!!
激突した超高密度の魔力光線は、フライパンの凹みによって綺麗に収束・偏向され、なんと**「明後日の方向」へと、あり得ない角度で反射(ジャストガード)されていった。
ズガガガガーン!!! と、遠くの山肌が虚しく大爆発を起こし、土煙を上げる。
街道には、不気味なほどの静寂が広がった。
放たれた最強の一撃を完全にスカされた教団の魔道士たちは、呪文の詠唱姿勢のまま口をあんぐりと開けて固まっている。
「……は?」
クロードが弓を握ったまま、動かなくなった。
「今、魔防の結界なしで、理魔法を跳ね返した……? どんな高等魔術だ……?」
ヒルダも顎が外れそうな顔で、遠くの山肌とマイルズを交互に見つめている。
空から、キィィィン……と間抜けな音を立てながら、表面が真っ黒に焦げたフライパンが落ちてきて、地面に突き刺さった。
「痛たた……。すみません、ローレンツさん、足を引っ掛けちゃって……って、
あれ? 模擬戦はもう終わりました?」
マイルズが頭を押さえながら起き上がると、そこには、地面に倒れたまま驚愕の表情で自分を見上げるローレンツの顔があった。
「ま、マイルズ……君、今の技は一体……。我がグロスタール家に伝わる魔防の秘術をも凌駕する、あの完璧な流転の構えは……!」
「え? いや、ただの厨房の粗大ゴミですけど……」
その横で、ベレス先生が静かに歩み寄ってきた。彼女は突き刺さったフライパン盾を無表情のまま見つめ、それからマイルズの無傷の身体をじっと観察した。
その瞳には、支援Cの距離感としての「この生徒、実力は未知数だが……何か決定的な勘違いをしているのではないか」という、深い猜疑心と、ほんの少しの関心が混ざり合っていた。
「マイルズ。……その盾、次は私にも一枚、作って」
「いや、先生、これ本当にただのフライパンですから! 怒らないでください!」
歴史の歯車を狂わせるモブの(自称)強運は、今日も誰も予想しない形で、大修道院の面々の度肝を抜くのだった。
遅くなりました!すでに投稿されてると思ってたら途中筆跡のままだったという…