TS魔法使いさんは師匠のために今日も戦う   作:第616特別情報大隊

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海上作戦//青き刃のリウィア

……………………

 

 ──海上作戦//青き刃のリウィア

 

 

 私たちに迫る敵の魔法使い。

 横一列に陣形を組んだ彼らが魔力装甲を展開したまま、私たちに急接近した。

 

「リウィア隊長! 友軍艦隊が……!」

 

「クソ。出るのが遅かったか……!」

 

 魔法使いは西部連合の正規魔法使いらしく、以前戦ったのと同じ白いローブだ。

 しかし、魔法使いの指揮官は珍しく男性ではなく女性だった。

 ブルネットの髪を三つ編みにした若い女性で、手には軍刀。

 

「敵魔法使いは幸い少ない。殲滅して我々も敵艦隊を叩く。続け!」

 

 リウィアと呼ばれた女性指揮官の指示で、西部連合の魔法使いたちは魔力装甲を展開したまま魔力の矢を私たちに向けて放ってきた。

 それらの魔力の矢はソフィアが受け止め、防御に専念する彼女の魔力装甲が防ぐ。

 だが、敵の練度が高いのか、いつもより押されている……?

 

「師匠、大丈夫!?」

 

「大丈夫だ。お前は落ち着いて敵を落とせ」

 

「了解!」

 

 ソフィアからの返事を得て私は小規模の爆発を意識して、敵の魔法使いを狙う。

 敵との距離はまだ比較的ある。

 やるならば今だ。

 

「えい」

 

 私のその言葉で炎が瞬き、爆発が生じる。

 しかし、やったのは3名の魔法使いのみ。

 他の魔法使いたちは魔力装甲で攻撃から逃れ、散開を始めた。

 

「……貴様、アンヴィルの戦いにいた魔法使いだな?」

 

 そこで敵魔法使いの指揮官がそう言う。

 リウィアと呼ばれた魔法使いは蒼い瞳で私の方を睨む。

 彼女からはアンヴィルの戦いで対峙した魔法使い──ルフスと同じ憎悪を感じる。

 

「……お前、あの戦いの生き残りか?」

 

 ソフィアが息を整えながらそう尋ねた。

 

「いいや。あの戦いには参加していない。ただ恋人が参加していた。ルフスと言う。貴様らが殺したのだろう?」

 

「戦場で敵を殺すのは当たり前だ」

 

「だが、それで納得できるわけではない……!」

 

 ソフィアの言葉にリウィアが軍刀をソフィアと私に向ける。

 見れば彼女の指揮する魔法使いたちも軍刀を握っていた。

 

「貴様には死んでもらう。青き刃のリウィアの名において。ルフスの仇だ……!」

 

 リウィアはそう言い、魔力装甲を展開したまま私たちに突っ込んでくる。

 彼女は魔力の矢を形成せず、そのまま私たちに迫り──。

 

『偉大なる精霊たちよ! 願い奉る! 繰り返し願い奉る! 我らが敵を斬り裂き、その臓物を散らすべく、我に刃を与えたまえ!』

 

 リウィアはそう詠唱すると彼女の軍刀に魔力に凝集し、それが刃になった。

 魔力装甲と魔力の矢ばかりを見てきた私には完全に初見のものであり、一瞬どう対応すべきか迷った。

 

 しかし、その迷いが隙を生んだ。

 リウィアは一気に距離を詰め、その魔力の刃を私に向けて振るう。

 

「リンクス!」

 

 ソフィアがすぐに魔力装甲を展開したまま私とリウィアの間に滑り込み、その刃を私の代わりに受けた。

 青白い光の刃は魔力装甲を粉砕し、刃はソフィアに迫る。

 

「師匠!」

 

 私はすかさずソフィアを守るための魔力装甲を展開。

 私が展開したそれが辛うじてリウィアの攻撃を受け止めた。

 

「なっ……! 無詠唱だと……!?」

 

 私が無詠唱で魔力装甲を展開したことに、リウィアが狼狽える。

 リウィアの刃を私は受け止め、そして魔力装甲を膨張させて完全に弾く。

 リウィアはそれに弾き飛ばされ、姿勢を整えなおした。

 

「隊長!」

 

「気を付けろ。相手は詠唱していない。何なんだ、こいつは……」

 

 彼女が部下が声を上げるのに、リウィアは警告を発した。

 その声色には明白な戸惑いの色が見える。

 

「リンクス。相手は魔法使いには珍しいが、白兵戦を得意とするようだ。距離を詰められるな。相手の間合いに入らず、射程外から仕留めろ」

 

「はい、師匠」

 

 私は再び防御をソフィアに任せ、リウィアたち西部連合の魔法使いを攻撃。

 魔力の矢を生成し、相手に向けて叩き込みまくる。

 

「クソ。やはり詠唱していない。ありえるのか、そんな魔法使いが……!?」

 

「隊長、指示を!」

 

 動揺からゆっくりとだが立ち直りつつあるリウィアに防御に回っている他の魔法使いたちが尋ねる。

 

「魔力装甲を高めて肉薄し、一気に斬撃で沈める。まとまって掛かろうとするな。どうせ相手はふたりだ。まとまるとさっきの爆発魔法で片付けられる」

 

「了解です、隊長」

 

 リウィアは攻撃の中で冷静に指示を下しており、彼らは一斉に散開すると私たちに四方から向かってきた。

 

「不味いな……。手早く仕留めていけ、リンクス。このままだと物量で押し切られるかもしれない」

 

 ソフィアがそう指示を下すので私は魔力の矢を全力で敵の魔法使いに叩き込む。

 しかし、敵も防御のための魔力装甲を展開しているし、私たちの死角からの攻撃も試みてきている。

 

 ソフィアは前を向き、私は後ろ向いて前後の攻撃に応じるが、確かにこのままでは数で押し切られてしまいそうだ……。

 

『偉大なる精霊たちよ──!』

 

 リウィアと彼女の部下たちは四方から私たちに斬りかかる。

 斬りかかる瞬間に魔力装甲を解いて、攻撃に集中しているようなのだが、肉薄されるとこちらも防御に専念しなければならないため、反撃できない。

 このままでは私かソフィアの魔力が先に切れて、やられる。

 

「そうだ……!」

 

 私の頭の中にあるアイディアが閃いた。

 

「師匠、防御を極限まで高めておいて。敵が肉薄したら反撃する」

 

「分かった。任せたぞ」

 

 そうやって私は準備を整えた。

 私はこれまで形成していた魔力の矢を形成するのをやめ、魔力装甲を展開したまま事態を見守る。

 

「相手は攻撃をやめたぞ」

 

「チャンスだ!」

 

 再び敵が私たちに迫る。

 敵はぎりぎりまで魔力装甲を展開しており、解かれるは刃を振りかざす瞬間。

 だが、それで十分。

 

『偉大なる精霊たちよ! 願い奉る──』

 

 敵が魔力の刃を形成し、それを振り下ろした瞬間──。

 

 炸裂。

 

 爆発が生じ、敵が爆発に呑まれて砕け散った。

 手足が千切れた敵の死体が、驚愕の表情のまま海上に落下していく。

 

「なるほど。爆発で敵を迎え撃ったか。考えたな、リンクス」

 

 ソフィアは私が敵の攻撃を撃退したのにそう誉めてくれる。

 これは一種の爆発反応装甲(ERA)だ。

 敵が攻撃に注力している隙にカウンターとして指向性の爆発魔法を叩き込む。

 指向性と言っても完全に私たち側への爆風が防げるわけではないので、ソフィアには全力で防御を高めておいてもらったのだ。

 

「こんなのどうすれば……!」

 

「詠唱せずあの魔法だと……!?」

 

 敵魔法使いたちの動揺は広がっている。

 その動揺を見て私が勝利を確信したとき──。

 

「油断するな、リンクス! 太陽を背にして突っ込んできている!」

 

 ソフィアがそう警告を発し、私は太陽の方に目を向けた。

 眩しくてよく分からないが、確かに太陽の方角から青白い光が僅かに見える。

 

『偉大なる精霊たちよ! 願い奉る! 繰り返し願い奉る! 我に憎き仇敵を討ち取る力を与えたまえ──!』

 

 リウィアだ。リウィアが太陽を背に、私たちに突っ込んでくる。

 もうすでに近く、彼女は最初から魔力装甲を展開せず、魔力の矢を叩き込みながら、青白く光る軍刀を手に突撃してきた。

 さっきの爆発反応装甲まがいなカウンターをするには間に合わない……!

 

「えい!」

 

 私は魔力の矢を辛うじて展開し、リウィアに向けて放つがそれらを全て回避してリウィアは私たちに肉薄し──。

 

『偉大なる精霊たちよ。願い奉る。繰り返し願い奉る。我らの身を悪意ある敵の刃から守る力を与えたまえ──』

 

 ソフィアの魔力装甲がリウィアの攻撃を間一髪で阻止した。

 ぎりぎりと魔力装甲が歪む音がし、リウィアの刃はソフィアの魔力装甲を貫きそうだったけれども、辛うじて魔力装甲は抜けなかった。

 

「おのれぇ!」

 

 リウィアの殺意満ちた鬼のような形相はすぐそこだ。

 

「やれ、リンクス!」

 

「了解!」

 

 私は無防備なリウィアに向けて回避されないように爆轟魔法を放つ。

 小規模な爆発が至近距離に生じ、リウィアは弾き飛ばされた。

 

「かはっ……!」

 

 血を吐いて海上に向けて落下していくリウィア。

 

「た、隊長!?」

 

「おい!? 大変だ! 艦隊が撤退してるぞ!」

 

 リウィアが落ち始めるのと同時に他の魔法使いたちが声を上げる。

 海上では帝国軍の攻撃を受けつつある西部連合の艦隊が西に向けて引きつつあった。

 

「撤退だ! 我々も撤退する!」

 

 指揮を代わった他の魔法使いがそう叫び、彼らは撤退を始めた。

 艦隊も魔法使いも西部連合はアンドロポリスを捨てて逃げていく。

 

「……辛うじてどうにかなったな……。……リンクス?」

 

 ソフィアは深くそう息をして呟く。

 私はルフスに続いて向けられた明確な殺意を前にして僅かに震えていた。

 リウィアは私たちが戦場の敵だから殺しに来たんじゃない。

 彼女の大事な人を私たちが奪ったから殺しに来たんだ。

 そう思うと僅かにだが、まだ手が震える。

 

「大丈夫だ。終わったんだ。さあ、帰投しよう」

 

「……はい」

 

 ソフィアはそんな震える私の手をそっと握り、私はその手を握り返した。

 

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