TS魔法使いさんは師匠のために今日も戦う 作:第616特別情報大隊
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──解囲//衝撃と畏怖
それから私たちは帝国軍と合同で西部連合魔法使い部隊の排除に乗り出した。
「いつも通りにやるぞ、リンクス」
「了解、師匠」
私たちはいつものようにフォーメーションを組む。
防御を担当するソフィア、攻撃を担当する私のコンビネーションだ。
「帝国の正規魔法使いも作戦には参加する。やつらを待つか」
私たちは後方から進出してくる予定の魔法使いたちを待つ。
それから暫くして6名の魔法使いが前線の方にやってきた。
「来たな。では、早速かかるとしよう」
「ええ」
ソフィアが指示を出し、私たちは帝国正規魔法使いを連れて敵の魔法使い陣地へ。
数で優勢ではなく、さらには攻城戦で疲弊している西部連合の魔法使いは積極的には動かないだろうとの考えからだったが……。
「不味い。敵の魔法使いが要撃に上がってきている。何が攻城戦で疲弊しているだ。ガイウスのやつめ、いい加減なことを言って……」
敵の魔法使いたちは普通に私たちを攻撃しに来た。
どうやらガイウス将軍の読みは外れたらしい。
「高度を上げるぞ、リンクス。先に上空を押さえる」
「師匠、帝国の魔法使いたちは……」
「……彼らも覚悟があってここに来たんだ。心配する必要はない。今は自分の心配だけをするんだ。生き残れなくなるぞ」
「分かった」
ソフィアはそう言い、私たちは高度を思いっきり引き上げる。
呼吸できるぎりぎりの高度を保ち、私たちは低空で迫る敵魔法使い部隊を見る。
数は6名。西部連合の正規魔法使いでもなく、確かに今回は数では私たちは劣っていない。
その6名の魔法使いたちは、帝国軍の正規魔法使いと交戦に突入した。
お互いに魔力装甲を展開し、魔力の矢を叩き込む。
そんな攻防の中で押されているのは帝国軍の側だ。
何が違うのか、魔力装甲が何度も破壊されそうになっており、さらに帝国軍側の攻撃が通っているようには見えない。
「……新兵を投入するとこうなる。練度に差がありすぎたな……」
ソフィアは同情しまいと努めるかのように無表情に言ったが、彼女の声色は明らかに新兵のまま投入された帝国軍の魔法使いに憐みを見せていた。
「私たちはこのまま上空から奇襲する。やるぞ」
「はい」
そんな戦況を見ながらソフィアはそう言い、私は上空から魔力の矢を降り注がせる。
「上だ!」
「クソ、もう一組魔法使いがいるぞ!」
上空からの奇襲に西部連合の魔法使いは素早く反応。
攻撃を中止し、魔力装甲を強く展開する。
私は防御をソフィアに一任しているので全力で攻撃しているが、敵の練度が高いのだろう、なかなか魔力装甲を抜くことはできない。
「師匠、どうする?」
戦況は膠着している。
亀の子のように防御で身を固めた敵に対して私の攻撃も、新兵である帝国正規魔法使いの攻撃も通っていない。
「……長期戦になると敵の野戦軍が痺れを切らしかねない。早急に魔法使いを排除する必要がある。リンクス、前の白兵戦をまたやれるか?」
「やれるよ」
「……分かった。では、それでいこう」
ソフィアは少し苦しげだった。
私に無理をさせていると思っているのだろうか。
ソフィアのためならばどんなことでもするのに。
「急降下してかかるぞ。私が魔力装甲を展開して先行するから、白兵戦を仕掛ける瞬間に私を追い抜け。いいな?」
「了解」
「では、始める」
ソフィアがそう言い、私たちは一斉に降下を開始。
ソフィアは私の前を降下し、前方に魔力装甲を集中させる。
「接近してくる……!?」
「まさか……白兵戦に挑むつもりか!」
相手側に動揺が広がるのが分かった。
私も初めてリウィアに白兵戦を挑まれたときには動揺した。
そして、その隙を突かれたことから学んだのだ。
魔法使いの白兵戦には衝撃力があると。
物理的な威力だけではなく人の精神を掻き乱し、揺さぶる力があると。
「師匠。仕掛けるよ」
「ああ」
私は敵魔法使いに肉薄するとソフィアを追い抜く。
そして、一瞬だけ彼女が展開している魔力装甲の外に出た。
「偉大なる精霊たちよ」
詠唱を形だけ行って、私はまだあの赤い刃を形成。
憎悪と怒りの象徴みたいな真っ赤で巨大な刃が魔力によって形成され、私はその刃を思いっきり振り回す。
私は前世でも今世でも剣術は習っていないので、どう振るのが正しいか分からない。
だが、それはさしたる問題ではないのだ。
私の間合いに入っている時点でほぼ勝負は決しているのだから。
私の振るった刃は敵の魔力装甲を粉砕し、その向こうにいる相手を叩き切った。
相手の魔法使いが苦悶と驚愕に表情を歪めるのが見えたが、私は何も動じていない。
「敵魔法使い、1名撃破」
「次だ、リンクス。敵は動揺している。そのまま畳みかけろ」
「了解」
ソフィアの指示に私は頷き、再びソフィアの援護を得ながら次の敵に向かう。
『い、偉大なる精霊たちよ──』
敵は慌てて防御を捨てて攻撃に切り替えようとするが、間に合っていない。
私は魔力の刃で次の魔法使いも斬り倒し、撃墜した。
「敵魔法使い、さらに1名撃破」
「……順調だ。そのまま殲滅しろ」
ソフィアは少し心配しているのか、声がちょっと暗い。
でも、大丈夫だ。私ならやれる。
「散開! やつの間合いに入るな! 魔力装甲ごとやられるぞ!」
「クソ! 攻撃に切り替えろ! あれは我々の魔力装甲では防げん!」
敵魔法使いたちは一斉に魔力装甲を解除し、魔力の矢を形成した。
そして、それを私に向けて叩き込んでくる。
「やらせはせん。『偉大なる精霊たちよ──』」
青白く光る魔力の矢が次々に私に向けて飛来するが、それらは全てソフィアが防いでくれた。
彼女の展開している青緑色の魔力装甲はかすかに表面に波紋を浮かべるのみで、敵の攻撃ではびくともしなかった。
そんなソフィアの支援を受けながら、私は次の敵に肉薄。
「畜生──」
「敵魔法使い、さらに1名撃破」
敵は防御を捨てていたため、私の振るった刃は彼らに直撃した。
魔力の矢による攻撃が大口径ライフル弾の威力ならば、魔力の刃はそれより威力の高い榴弾にそれに匹敵するだろう。
まともに食らった敵は肉体の一部が蒸発し、消滅していた。
「敵魔法使い──残り1名」
残った敵魔法使いはひとりだけ。
攻撃しても防御しても無意味な状態に混乱し、詠唱することも忘れている。
私はそんな敵に向けて刃を振るった。
敵の身体が砕け、鮮血がまき散らされ、僅かにだが私の頬に散った。
赤い血が頬をつうっと滴り落ちていき、私は安堵の笑みを浮かべる。
「師匠、全部倒したよ」
私は西部連合の魔法使いを壊滅させた。
この成果をソフィアも誇ってくれるはずだ。
「……ああ。よくやった、リンクス。私たちの仕事はこれで終わりだ。あとは帝国の連中に任せるとしよう」
ソフィアは疲れた笑みを浮かべながらも私を褒めてくれた。
彼女に認めてもらえて私は嬉しさで心が満ちていた。
しかし、ソフィアの方は……どこか物憂げな瞳をしたままであった。
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