TS魔法使いさんは師匠のために今日も戦う 作:第616特別情報大隊
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──護衛//狙撃手
潜む敵からの長距離射撃。
敵の姿は見えないのに敵からの狙いはどこまでも精密だ。
確実に私の魔力装甲に命中し、衝撃が走る。
「またひとりやられた……!」
コルネリアが背後で叫ぶのが聞こえた。
新兵に近い帝国の魔法使い側は損害を出し続けている。
すでに2名が撃破されてしまい、残りは4名。
西部連合の正規魔法使いは強いのにどうしてこっちの魔法使いは弱いんだろう。
ソフィアが言うには正規魔法使いは強いはずなのに。
「次の攻撃が来る。射撃間隔が徐々に短くなっているが、攻撃の威力は落ちていない。用心しろ、リンクス」
「了解、師匠」
私はソフィアとともに射撃を繰り返す敵魔法使いに向けて迫る。
後ろは、コルネリアたちの方は振り返らない。
今はソフィアが言っていたように1秒でも早く敵の下へ急ぐんだ。
「もう少しだ……!」
ソフィアがそう言う。
私たちは確実に敵魔法使いのいる方向に迫っていた。
魔力の矢がまさに形成され始めている様子が見える位置まで迫ったのだ。
「よし。私たちの間合いに入ったぞ。リンクス、攻撃はお前に任せる」
「はい、師匠」
私の目にも敵が見える距離。
敵の魔法使いはひとり森の木々に紛れて低空を飛行している。
白髪交じりの老人だ。
ローブの色は灰色。西部連合の正規魔法使いではない。
しかし、妙なところがある。
その魔法使いは目が見えていないのか、包帯のような布で目を覆っているのだ。
これまでの射撃の正確さからすると、それは異常なように思えた。
「おや。ここまで近づかれてしまったか……」
老人はしゃがれた声でそう言い、口元をにやりと歪めた。
「腕のいい魔法使いだな。若いのにいい才能だ。だが、負けはせん──」
老人はそう言いながら、詠唱して新しい魔力の矢を形成。
それをすぐさま私たちに向けて放ってくる。
「防御は私に任せておけ。お前は攻撃を急げ」
「了解」
私はカウンターを放つように魔力の矢を生成して敵に向けて放つ。
しかし、敵の魔力の矢は軌道を変更して、私が放った魔力の矢を迎撃。
魔力の矢同士がぶつかってその場で弾け飛んだ。
「偉大なる精霊たちよ──」
『偉大なる精霊たちよ──』
私は再攻撃を試み、後方から追いついたコルネリアたちも魔力の矢を生成して放つ。
しかし、相手の射撃能力は異常だった。
魔力の矢を魔力の矢で次々に迎撃していくのだ。
これは弾丸で弾丸を落としているようなもので、弾道ミサイルを迎撃する迎撃ミサイル並みの精度だ。
しかも私の放つ攻撃だけならばともかくコルネリアたちの攻撃も弾いている。
相手とまともに射撃戦をしていたら、数で優ってるにもかかわらずこちらが負けるかもしれない……。
「若いが優れた魔法使いだ。名は何という?」
そこで老人がそう尋ねてくる。
「リンクス」
私は迷わず名乗った。
しかし、私が若いと言うことが分かっているということは、老人には私が見えているのだろうか……?
「リンクスか。よい名だ。私はニケフォロス。傭兵だ。見ての通り目は見えない」
「なら、どうして私が若いと分かったの?」
私が疑問に思ってそう尋ねた。
「魔力から若さを感じただけだ。それと迷いのない真っすぐな攻撃からな。力強い魔力だ。そしてお前こそが──例の詠唱しない魔法使いなのだろう?」
そう言われて私はびくりとした。
老人は、ニケフォロス見抜いていた。私の詠唱が形だけのものであることを。
「歴史が節目を迎えるときに、お前のような魔法使いが生まれる。既存の秩序を破壊して新しい世界を切り開く存在か、あるいはただひたすらに世界を破壊し尽くす存在として、イレギュラーは生まれる」
ニケフォロスは笑いながらそう言い、魔力の矢を形成。」
「そのようなイレギュラーを相手にできるとは傭兵として光栄だ。さあ、殺し合おう、若きイレギュラー。その真の実力を私に見せてみろ……!」
それからニケフォロスは詠唱し、私たちに向けて魔力の矢を放つ。
狙いは私とソフィア。コルネリアたちは無視されているかのように狙われていない。
機関銃のようには放たれる魔力の矢は私たちの攻撃を迎撃し、同時にソフィアの展開している魔力装甲を揺さぶる。
しかも相手は魔力の矢で攻撃を迎撃しているから魔力装甲を展開しておらず、そのせいで攻撃は全力の威力のそれだ。
このままだと……不味い。
「リンクス。射撃戦は不利だ。別の方法を試せ」
「了解、師匠。爆轟魔法を試す」
私はニケフォロスを狙って爆轟魔法を放つことを決意した。
「偉大なる精霊たちよ──」
私の意味のない詠唱に続いて静寂が訪れた。
その場が静まりかえったかのような空気の中で炎がニケフォロスのそばに生じる。
ニケフォロスは本能からか咄嗟に魔力装甲を展開する。
だが、その前に炎は一気に広がって爆轟となった。
「……なるほど……これがイレギュラーか……──!」
ニケフォロスはそう言い残し、爆発の中に消えた。
私は爆発に包まれたニケフォロスを見つめたのちにソフィアの方を見る。
彼女はずっと強力なニケフォロスの射撃から私を守っていたせいか額に汗を滲ませ、肩で息をしていた。
「よくやったな、リンクス。流石だ」
それでもソフィアは微笑んで私を誉めてくれる。
「ソフィアさん、リンクスさん。さっき敵の魔法使いが言っていたことって……」
ここでコルネリアが私たちにそう尋ねてきた。
「……ただの妄言だ。相手にするな。こちらを混乱させようとしただけにすぎない。詠唱を必要しない魔法使いが、いるはずがないだろう?」
「そ、そうですねよね。そうですよね……?」
ソフィアはそうはぐらかしたが、コルネリアは疑りの目で私を見る。
詠唱も魔法陣も必要としない魔法使いであると、今は知られるわけにはいかない。
ただでさえガイウス将軍にそれを知られて脅迫を受けているのだから。
「さあ、帰投しよう。敵魔法使いは排除された」
ソフィアはそんな視線を振り払うようにそう言い、私を連れて帝国軍の隊列へ戻る。
戦争が続く中で、敵の魔法使いにも強力な人間が増え始めている。
これから私たちは生き延びることができるのだろうか……?
* * * *
私たちが帝国軍の隊列に戻り、馬車に乗り込んで移動しているときだ。
「失礼」
私たちの馬車に知らない男性がやってきた。
帝国軍の黒い正規魔法使いのローブを纏った、まだ若い男性だ。
濃ゆい眉ながら精悍な顔つきをし、鍛えられた細身の肉体をしたその男性が馬車に乗り込んでくる。
「……誰だ?」
ソフィアはそんな男性を警戒するように見る。
「私は第2軍でティベリウス将軍の副官をしている魔法使いのベリサリウスです。先の戦い、お見事でした」
その男性はべリサリウスと名乗った。
そして私たちに丁寧に会釈する。
「ティベリウス将軍の副官か……。それが傭兵なんぞに何の用事だ?」
ソフィアはやはり警戒したままだ。
「単刀直入に申し上げます。第3軍を離れて第2軍に雇われるつもりはありませんか?」
べリサリウスの求めは引き抜きであった。
ついにティベリウス将軍が私たちをガイウスから引き抜こうとしたのだ。
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