TS魔法使いさんは師匠のために今日も戦う   作:第616特別情報大隊

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海賊行為//通商路

……………………

 

 ──海賊行為//通商路

 

 

 私の不注意でべリサリウスに誘拐されてからのこと。

 ソフィアは常に私のそばにいるようになった。

 いつも手を握り、そうでない場合は目の届く場所にいるように私に求めた。

 少し過保護なようにも思えるけれど、もうソフィアを心配させたくないので彼女の求めるようにした。

 

 ティベリウス将軍はあれからは私たちに接触してこず、不気味な沈黙を貫いている。

 第2軍そのものの再編成は行われているようだが……。

 

 それからコルネリアたちに仲間ができた。

 帝国本土から派遣されて来た帝国の正規魔法使いたちだ。

 ……とは言っても、全員が魔法学校を卒業したばかりの若い魔法使い。

 実戦のことなど知らないし、魔法も初歩的なものしか使えない。

 

「ガイウスはこれを実戦に出すつもりか……」

 

 ソフィアの表情もそれを見て曇っていた。

 私からも彼らは数合わせのために集められたようにしか見えない。

 

「可能な限り、訓練しておくしかないな……。リンクス、もうひと頑張りだ」

 

「はい、師匠」

 

 私とソフィアは今も帝国の魔法使いを育成する仕事を引き受けている。

 コルネリアたちはもうフォーメーションにも慣れているが、まだ不慣れな新入りのために訓練教官を継続だ。

 

 

 * * * *

 

 

 そんな日々が10日ぐらい過ぎたとき、第2軍が出撃していった。

 ガイウス将軍は笑顔で出撃するティベリウス将軍の第2軍を見送り、私たちはティベリウス将軍が去ったことに少し安堵した。

 

「さて……囮が動き出したうちに私たちの仕事を進めましょう」

 

 ガイウス将軍はティベリウス将軍たちが出撃したのを完全に見送ると、司令部である市庁舎に私たちを集めてそういう。

 この場には私とソフィアの他にコルネリアたち帝国の正規魔法使いが8名いる。

 

「我々がこれから行うのは海賊行為です」

 

 ガイウス将軍はそう言ってテーブルの上に地図を広げる。

 それは海図のようであり、いくつものマーカーがすでにおかれていた。

 しかし、そのマーカーが何を意味するのかは不明だ。

 

「我々は西部連合の船を1隻、拿捕します。なぜならばこれからの作戦に必要だからです。それ以上の理由は軍機ですのでお教えできません」

 

 ガイウス将軍は何を企んでいるのだろう?

 船を1隻拿捕したくらいじゃ、戦争は終わらないと思うのだが。

 

「狙うのはアンタキア号という商船です。これは西部連合の有する交易船で、貴重な品を運んでいます。南方への交易で入手した金塊などを、ですね」

 

「金塊を奪うためにわざわざ襲撃を?」

 

「船いっぱいの金塊が手に入れば、帝国はまだ戦うことができます」

 

「船いっぱいの金塊、ね……」

 

 ソフィアはガイウス将軍の言葉にどこか不満げだ。

 確かに船いっぱいの金塊が手に入っても、この戦争の戦費をほんのちょっとしか補えないと思うのだが……。

 

「まあ、今はそういうことだと思っておいてください。それ以上は軍機です」

 

 ガイウス将軍は笑みを浮かべてソフィアの不満を打ち切った。

 それから彼は海図を指さす。

 

「目標は今まさに南方から戻り、西部連合の港を目指しています。我々はこの船が西部連合の港に入る前に拿捕し、船ごとこのアンドロポリスに連れてきます」

 

「制圧に使うのは魔法使いだけか?」

 

 ソフィアは険しい表情でガイウス将軍に尋ねる。

 

「はい。帝国海軍はあなた方に万が一のことがあった場合に備えて後方に待機するのみです。基本的にはあなた方に作戦は遂行していただきます」

 

「船はガレー船だそうだが船員はどうする?」

 

「抵抗すれば殺害しても構いませんが、船長だけは生かしたまま捕らえてください」

 

「なぜだ?」

 

「軍機ですので明かせません」

 

 ガイウス将軍はさっきから軍機、軍機と何も明かさない。

 

「もし、金塊が鹵獲できたら皆さんにも特別手当があります。頑張ってください」

 

 最後にそう言ってガイウス将軍はは私たちを送り出したのだった。

 

 それから市庁舎を出たソフィアは見るからに不満そうに鼻を鳴らす。

 

「気に入らないな。こちらは命を懸けているというのに仕事は秘密だらけとは……」

 

「危険な仕事だと思う?」

 

「……それは間違いないだろう。わざわざこれだけの準備期間を置いたのだから」

 

 私の問いにソフィアは考え込んだ末にそう答える。

 

「しかし、私たちならばやり遂げられるはずだ。やるぞ、リンクス」

 

「了解、師匠」

 

 そうして私たちは問題のアンタキア号を襲撃すべく、港の方に向かう。

 アンタキア号の航行する西部連合の通商路付近までは帝国海軍のバックアップの船で向かうのだ。

 

 

 * * * *

 

 

 さて、西部連合はアンドロポリスでの艦隊決戦に敗れたのちも、有力な海上戦力を保有している。

 しかし、彼らの海上戦力は今は通商路の護衛のみに当たっており、アンドロポリスを奪還するような動きはない。

 

 そう、通商路は西部連合海軍が護衛している。

 バリスタを積んだガレー船が定期的に海賊が出そうな沖合をパトロールし、自分たちの貴重な商品を乗せた輸送船が襲われることがないようにしている。

 私たちはそんな通商路を相手に攻撃を仕掛けるのだ。

 

「可能な限り近づくが、あまり近づきすぎると敵のパトロールに探知される。最終的な接近は自分たちで飛行してくれ」

 

 帝国海軍の艦船を指揮する船長はそう言う。

 敵に気づかれないこともガイウス将軍が求めていることだった。

 だから、通商路に帝国海軍の船で乗り付けるわけにはいかない。

 通商路を守る敵のパトロールを避ける必要があった。

 

「分かった。あとはこっちでどうにかする」

 

 ソフィアはそんな船長の言葉にそう言い、海図を改めて確認。

 私たちはこのまま西に向けて真っすぐ飛べば、問題のアンタキア号を襲撃できる。

 もちろんガイウス将軍の情報が正しければ、だが。

 

「行くぞ、リンクス。作戦開始だ」

 

「了解」

 

 それからソフィアが指示を出し、私たちはコルネリアたちとともに船を飛び立つ。

 西に向けて私たちは飛び、アンタキア号を目指す。

 飛行する中でも私たちは可能な限り海岸線は避けた。

 海岸線には西部連合のパトロールが航行している可能性があり、それに探知されないようにするためだ。

 

 しかし、海岸線を離れているということは不時着する土地がないということ。

 海に落ちたら魔法使いと言えど、助けがなければ溺れ死ぬだろう。

 それはちょっと怖かった。

 

「あれか……」

 

 私たちの目にガイウス将軍が事前に集めたアンタキア号のシルエットに類似する船が映った。

 しかし、予定と違って相手は1隻ではない。3隻だ。

 

「予定と違うぞ。ガイウスめ、ぬかったな……」

 

「どうする、師匠?」

 

「……今さら引き返すのは距離的に難しい。やるしかない」

 

「了解、任せて」

 

 ソフィアはそう指示を出し、私たちはアンタキア号とそれに随伴する2隻の船に襲い掛かった。

 

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