TS魔法使いさんは師匠のために今日も戦う   作:第616特別情報大隊

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海賊行為//金塊

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 ──海賊行為//金塊

 

 

 私とソフィアが上空で再びデメトリオスが襲ってこないかを警戒する中、コルネリアたちが再びフォーメーションを組んでアンタキア号とその随伴艦を制圧する。

 バリスタは完全に破壊され、抵抗する船員は容赦なく排除され、アンタキア号の船長は捕虜となった。

 

「金塊はあったか、コルネリア」

 

『ありましたよ! ガイウス将軍が言っていた通り、船いっぱいの金塊です!』

 

 念話でソフィアが尋ねるのにコルネリアからは喜びの報告。

 

「そうか。こちらは撃墜された魔法使いを拾って合流する」

 

『了解です、ソフィアさん』

 

 デメトリオスに撃墜された魔法使いの中にはまだ生きている人もいる。

 私たちは戦闘状態が解除されたとして彼らの救出を開始。

 

「しかし、本当に金塊が狙いだったのか……?」

 

 ソフィアは飛行魔法で魔法使いたちを救助しながらそう呟く。

 情報とは異なる状況だったけれど、金塊は確かに存在した。

 それも船いっぱいの金塊だそうだ。

 だが、それが本当にガイウス将軍の狙いなのかは分からない。

 

「……今考えても仕方ないな……」

 

 ソフィアはそう言い、私たちはアンタキア号へ救助した魔法使いたちを運んでいく。

 アンタキア号では戦闘で死亡した船員が海に放り捨てられているところだ。

 またコルネリアたちが吐きそうな顔をして魔力の矢で撃ち抜かれた死体を海にどぼん、どぼんと捨てている。

 

「コルネリア。制圧は終わったか?」

 

「何とか終わりました。船員のうち何人かが抵抗しましたが、船長は無事に捕虜に」

 

「そうか。では、アンドロポリスを目指すことにしよう」

 

 ガレー船なので漕ぎ手である船員が減ると速力が落ちる。

 しかし、帆を張って航行するならば魔力で生み出した風で船を進めることはできる。

 私たちはそうやって後方で待機している帝国海軍の艦船への合流を目指した。

 

 その間に私は金塊の山というのを見ておくことにした。

 

「おお。確かにこれは金塊の山だ……」

 

 そこに積み上げられていたのはまさしく金塊の山。

 インゴットに加工された金が積み上げられ、きらきらと光っている。

 ひとつぐらい盗んでもばれなさそうだが、あとでボーナスをくれると言う話だったのでそちらに期待することにした。

 

 それから私たちは後方の帝国海軍の艦船に合流。

 そこで船員を総入れ替えし、私たちは改めてアンドロポリスを目指した。

 

 

 * * * *

 

 

 アンドロポリスに向けた航海は無事に進み、私たちは目的地に到着した。

 アンドロポリスに到着したときには時間は太陽が沈むころで、水平線に向けて太陽がゆっくりと落ちていっていた。

 

「皆さん、ご苦労様でした。無事にアンタキア号を拿捕できたようで何より」

 

 ガイウス将軍はにこにこの笑みで私たちを埠頭で出迎えた。

 

「情報と違っていたぞ。船は3隻だったし、西部連合の正規魔法使いの護衛付きだった」

 

 到着するなり早速ソフィアが不満を呈する。

 

「想定の範囲内でしょう? 魔法使いは殺害を?」

 

「逃げた。我々の想定外だったからな」

 

「それは残念ですが、今のところ西部連合はアンタキア号が拿捕されたことを知りません。恐らく事実の把握には数日かかるでしょう。それだけあれば、私の考えていることを成し遂げるには十分」

 

 ガイウス将軍は西部連合のかなり深くまで間諜の類を忍び込ませているようだ。

 彼はリウィアの生存も把握していたし、今回も西部連合がアンタキア号が拿捕されたことを把握していないと知っている。

 

「さて、金塊を運び出しましょう。作戦に参加した皆さんにはボーナスとしてあとで分け前を与えますよ。今の我々はまさに海賊です」

 

 ガイウス将軍はそう言って悪者のように邪悪に笑うと、それからアンタキア号の金塊を港に降ろし、運んでいった。

 

「……海賊行為でボーナスとはな。まさにならず者だ。いっそ我々は海賊に転職すべきかもしれない」

 

 ソフィアはそう自嘲するように言い、私たちはアンドロポリス市内の宿に戻る。

 今日は疲れていたが潮風でべたついた髪はちゃんと洗い、それからベットに就いた。

 

「ねえ、師匠。ボーナスをもらったら稼ぎは十分?」

 

「ボーナスの額によるが、もう十分な働きはした。あとはガイウスの言うやつの戦争を終わらせるための仕事をするだけだな……」

 

「そっか……」

 

 ガイウスにとっての戦争が終われば、私たちにとっての戦争も終わる。

 私はまたソフィアとともに山小屋で暮らせるという喜びを感じる反面、自分が役立たずになるのではないかという心配を胸に感じた。

 

「心配はするな、リンクス。私に任せておけ」

 

 ソフィアはそう言い、私を抱きしめてくれる。

 その温かさに包まれると不思議とそのような心配は消えていった。

 ソフィアはどうあれ私を捨てないでくれるだろうと。

 しかし、それではやはりソフィアから与えられているばかりだ……。

 ソフィアは私に、意味のない人生を送っていた私に意味を与えてくれた。

 だから私はそれに報いたい。

 

 

 * * * *

 

 

 翌日、ガイウス将軍の呼び出しを受け、司令部となっている市庁舎に向かった。

 

「さあ、皆さん。お待ちかねのボーナスです」

 

 そういうと彼はどさりと金貨の詰まった袋を並べる。

 

「これはソフィアとリンクスに。残りは魔法使いの面々に」

 

「やったー!」

 

 重みを感じる金貨の袋にコルネリアたちは大喜び。

 

「私、金貨なんて初めて見た……」

 

「こんなにたくさん! もう一生働かなくていいかも!」

 

「飲みに行こう! お祝い、お祝い!」

 

 コルネリアたちは口々に喜びの声を口にして、司令部から出ていく。

 残ったのは私とソフィア、そしてガイウス将軍。

 

「ガイウス。気前がいいのがいいことだが、狙いは何だ?」

 

 ソフィアは鋭くそう尋ねる。

 

「はて? あなた方の働きに相応しい報酬を与えただけですが……」

 

「ボーナスを配りたくてアンタキア号を襲わせたわけではないだろう。アンタキア号を何に利用するつもりだ? お前の狙いは積み荷であった金塊ではなく、アンタキア号の船の方だろう」

 

「……流石はベテランの傭兵だ。鋭い方ですね」

 

 ソフィアの指摘にガイウス将軍が降参したというように両手を上げる。

 

「そう、狙いは船の方です。私の作戦に必要だから手に入れました。作戦内容は軍機ですので申し上げられませんが、私の目的については僅かながらお教えできます」

 

「……聞こうか」

 

 ガイウス将軍があっさりとそう認めるのにソフィアはそう返した。

 

「我々魔法使いはこれまで世界を変えるような力を持っているのに、政治家や軍人にいいように使われてきました。魔法の使えないものたちが、私たち魔法使いを奴隷のように使役してきたのです」

 

 ガイウス将軍は語る。

 

「我々はそろそろ地位向上を求めてもいいでしょう。もはや魔法は戦場での勝敗を決するまでのものとなりました。それなのにクイントゥス将軍やティベリウス将軍のような無能が魔法使いを道具にするのにはいい加減辟易です」

 

 彼がそう語る意味は……つまり……。

 

「魔法使いの価値を帝国中央に明確に示し、魔法使いは魔法使いで団結する。それが私の狙いです。皇帝派閥、軍閥、元老院派閥に続く魔法派閥を拡大することが、私の狙いなのですよ」

 

 ガイウス将軍はそう目的を示した。

 彼は以前私たちに語った元老院でも、軍部でも、皇帝でもなく、第4の派閥に所属していたのだ。

 

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