TS魔法使いさんは師匠のために今日も戦う 作:第616特別情報大隊
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──ロンディウス強襲//攻撃開始
私たちを乗せたアンタキア号はアンドロポリスを出航。
西部連合の首都であり反乱の拠点であるロンディウスを目指す。
「師匠、上手く行くと思う?」
「分からん。こればかりは蓋を開けて見なければ……」
私の問いにソフィアは首を横に振ってそう応じる。
彼女は私を不安にさせまいとしているのか、気丈に振舞っていた。
だが、それでもソフィアの不安は私に伝わってくる。
「……相手は西部連合の首都だ。いくらティベリウス将軍が囮になっているとしても、安心はできない。それこそ首都の守りのために正規魔法使いを取っておいているはず。しかし、ガイウスにはそれを撃破する自信があるのだろうな」
そうでなければガイウス将軍が自らこの危険な作戦の指揮を執ることはない。
ソフィアは彼の行動からこの作戦が全くの無謀ではないと判断していたようだ。
確かにガイウス将軍は保身的な人物だ。
そんな人物が片道切符となるような作戦の現場にでるはずがない。
「しかし、最悪には備えておこう。何かあった場合は作戦の成否にかかわらず、私たちは逃げる。ガイウス将軍もコルネリアたちも無視して離脱だ」
「分かった」
私たちは所詮は傭兵だ。
帝国が勝っても、西部連合が勝っても構わない。
最後に生き残っていることが必要なのだ。
「やあやあ、おふた方」
と、ここでガイウス将軍が甲板に姿を見せた。
「そろそろ西部連合の通商路に入ります。パトロールの船に怪しまれないように中へ」
「了解」
私たちはこれからロンディウスに到着するまでの間、船内に籠ることになる。
船長は金に靡いてすでに帝国側についてるが、安心できないので帝国海軍の将校が見張っている。
ガイウス将軍の作戦が上手く行けば、戦闘なしで哨戒ラインは突破できるはずだ。
「西部連合の軍旗を掲げた船が接近!」
その見張りの声に私たちはびくりとする。
ここで気づかれてしまえばお終いだ。
それからざあざあと波の音がし、私たちは船内で息を呑む。
コルネリアたちは表情を死人のようにこわばらせ緊張している。
「西部連合の軍船が通過!」
それから西部連合の船は私たちの船を改めることもなく通過させた。
あとでソフィアに聞いた話だが、この時代の船は潮の流れや風の動きに左右されやすく、決まった時間に決まった場所に到着することはないらしい。
そのおかげでアンタキア号が拿捕されたことも西部連合にはまだ伝わっていなかったのだ。
「今のところ、作戦は順調だな……」
ソフィアは西部連合海軍が私たちを撃沈するような様子もないことにそう呟く。
アンタキア号は進み続け、船体は波に揺れ、男たちがオールを漕ぐ。
「間もなくロンディウスだぞー!」
そう船長が声を上げる。
見張りは異常を報告しておらず、私たちは無事にロンディウスに入港できる距離まで迫ったようだ。
「西部連合海軍艦船に動きなし!」
見張り員が続いて報告。
西部連合は私たちが近づいていることに気づいていない。
船内のガイウス将軍は勝利を確信したかのように笑みを浮かべた。
「これよりロンディウス港に入港する! 総員備えろ!」
これが合図だ。
ロンディウスへの入港を知らせる合図とともに私たちは一斉に甲板に駆け上がる。
甲板からロンディウスの、その大きな港湾都市の光景が見えた。
アンドロポリス同様に白亜の建物が並ぶ街並みで、いくつもの桟橋が港からは突き出し、信じられない数の船が停泊している。
その経済規模の大きさを証明するかのような巨大な灯台は巨人の像となっており、右手に松明を掲げた巨人がロンディウスを睥睨していた。
「ここがロンディウス……!」
私が見たことがある中でもっとも大きな都市だ。
「無事に到着しましたね。では、攻撃を開始しましょう。彼らが対応する前に」
ガイウス将軍はそう言い指示を出す。
「灯台、桟橋、倉庫。港湾施設は全て破壊しなさい。この都市の価値は港湾機能にあります。それを失えば西部連合が軍を維持するための資金も調達できなくなる」
ガイウスがまず指示したのは港湾施設の破壊。
「次に市街地にある市庁舎、軍司令部、連合本部です。政治中枢を確実に潰し、西部連合が立ち直れないようにするのです」
次に狙うのは政治中枢。
「以上です。作戦開始!」
私たちはガイウス将軍の命令を受けて一斉にアンタキア号を飛び立つ。
私たち魔法使いが突然港の上空に現れたのに、港にいた船員や水兵たちが呆然として空を見上げていた。
「爆轟魔法を使う。師匠、コルネリアたちを上空に上げて」
「コルネリア。爆轟魔法を使う。上空に退避しろ。巻き込まれるぞ」
ソフィアが念話で指示を出し、コルネリアたちは私たちより高度を取って退避。
コルネリアたちが退避したのを確認してから私は地上の桟橋と倉庫が集まる港湾部を狙った。
「えい」
静寂。ただひたすらな静寂。
ざあざあという波の音も突然現れた私たちに驚く人々のざわめきも、何もかもが消えたかのような感触をまた感じる。
その直後に炎が生じた。
炎は一瞬で拡大。
木製の桟橋が船ごと炎に飲まれ、倉庫が衝撃波で藁の小屋のように吹き飛び、人も船も建物も全てが蹂躙される。
それから炎と煙が地上を覆って何が起きているのかが上空から分からなくなる。
「……攻撃は成功だな」
ソフィアが煙が晴れてきた地上を見てそう呟く。
桟橋は粉々に砕け、船は燃え、倉庫はもう存在しない。
水面には人間や人間だったものが漂っている。
『ソフィアさん、リンクスさん。灯台は私たちが叩きます。そちらは軍司令部の攻撃をとガイウス将軍からの指示です!』
「了解。任せたぞ、コルネリア」
『ええ。お任せあれ!』
そしてコルネリアたちは灯台の攻撃に向かった。
コルネリアたちを迎撃するために地上から魔法使いたちが上がってくる。
それらは西部連合の正規魔法使いではなく、傭兵のようだった。
『みんな! 教えられた通りにやるよ!』
『了解!』
コルネリアたちはフォーメーションを組んでそれらの魔法使いたちに立ち向かう。
彼女たちが放つ青白い魔力の矢と展開する青緑色の魔力装甲が、攻撃と防御の応酬を繰り広げ始めた。
「リンクス。私たちは軍司令部を叩くぞ。こっちだ」
ソフィアの指示で私たちは西部連合の軍司令部を目指す。
緊急事態を知らせる警鐘が打ち鳴らされ、甲高い金属音が町中に響いている。
地上では人々が逃げまどい、街は怪獣でも上陸したかのような完全な混乱状態だ。
子供を抱えて逃げる女性。
頑丈な建物に入ろうと押し合いになっている男性たち。
この世の終わりだと言うように泣き叫ぶ人々。
「このまま敵の対応も遅れればいいのだが……」
私たちのアドバンテージは奇襲という要素に限定される。
奇襲の効果が薄れれば戦力差で押し負ける可能性もあった。
何せ私たちは敵地のど真ん中にいるのだ。
「師匠。こっちにも要撃が上がってきた。あれは……白ローブだ……!」
「そのようだな。やるぞ、リンクス!」
私とソフィアは要撃に上がってきた西部連合の正規魔法使い部隊との交戦を開始。
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