TS魔法使いさんは師匠のために今日も戦う 作:第616特別情報大隊
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──ロンディウス強襲//アンドロポリスの災厄
上がってきた敵の白ローブ──西部連合の正規魔法使い部隊。
敵の数は12名。全員が軍刀で武装している。
「クソ。奇襲とは卑怯な……! 恥を知らぬ傭兵め……!」
西部連合側の指揮官らしき白ローブの上から金の飾緒を縫い付けた男性が吐き捨てるように言う。
「ふ、副隊長! あ、相手は銀髪の少女です! あれはもしかして……!」
「アンドロポリスの災厄か……!」
相手はすでに私たちのことを知っているようだ。
生き残ったリウィアが報告したのだろう。
そうデメトリオスも言っていたから間違いはない。
敵は私のことをアンドロポリスの災厄として認識している。
それが私の二つ名ということだろうか……。
「ヨアニス副隊長! リウィア隊長は!?」
「退院が許可されなかった! あの頑固者の軍医めが!」
「では、我々だけですか!? あの悪魔を相手に!?」
西部連合の魔法使いからは戦う前から恐怖の感情が見て取れた。
今ならばまだ奇襲の効果で勝てるかもしれない……!
「現在、ヴォルフ傭兵隊が急行中だ! それまで持たせるぞ! 数が揃えばいくら無詠唱の魔法使いが相手とは言えど勝てるはず……!」
「了解です!」
それから彼らはさあっと素早く散開した。
恐怖の感情が消え、敵はあっという間に戦闘の姿勢に切り替えたのだ。
「リンクス。爆轟魔法を使うには市街地が近すぎる。魔力の矢か剣で仕留めていけ」
「了解、師匠。まずは魔力の矢を試す」
私はそう言うと魔力の矢を形成し、散開した敵魔法使いたちを狙う。
思い切り魔力を注ぎ、形成した魔力の矢を敵の魔法使いに追尾させる。
ぐんぐんと加速し、後方から追尾してくる魔力の矢を敵の魔法使いは魔力装甲で防ごうとする。
敵の魔法使いは流石は正規魔法使いだ。
私の魔力の矢は敵の魔力装甲を貫けず、魔法使いを衝撃で弾き飛ばしただけだった。
それから相手の魔力の矢を叩き込んでくるが、ソフィアの魔力装甲は抜けない。
お互いに膠着状態になったが、長期戦になると不利なのは私たちだ。
敵の拠点を襲撃しているのだ。
時間が経てば経つほど敵の数は増えるが、こっちは疲弊するだけ。
「師匠、白兵戦で仕留めていく」
「……分かった。援護は任せておけ」
「うん」
私は防御をソフィアに任せ、敵の魔法使いに白兵戦を挑む。
飛行魔法で加速し、散開しながら魔力の矢を叩き込んでくる敵に肉薄。
この世の全てを憎んでいるような真っ赤な刃を形成し、相手に向けて振るう。
「まさか……! 我々の魔法を……!?」
相手も軍刀を抜き、その刃に魔力を纏わせて私の斬撃を受け止めようとしたが、私の方が早かった。
当然だろう。私には攻撃と防御を切り分ける必要も詠唱も必要ないのだ。
私の振るった刃は敵魔法使いを撃破し、上半身と下半身を斬り裂かれたその亡骸が地上に落下していく。
混乱が広がっているロンディウスの市街地へと。
「まずは1名」
「いいぞ、リンクス。そのまま仕留めて行け……!」
私は次の目標に向けてソフィアとともに飛行する。
次の相手が眼前に迫ったとき、金の飾緒を付けた魔法使いが横から割り入り、私たちを迎え撃った。
「お前たちの相手は私だ……!」
ヨアニスと呼ばれていた若い男性は私の赤い刃を、自分の握る青白い刃で受け止め、そのまま弾き飛ばした。
私は衝撃に思わずよろめく。
「その程度か、アンドロポリスの災厄! リウィア隊長を破ったのはまぐれだな!」
私が姿勢を崩す中、ヨアニスが容赦なく追撃してくる。
「リンクス! 『偉大なる精霊たちよ──』」
ソフィアがすかさず新しい魔力装甲を展開して私を守る。
ヨアニスに刃はぎりぎりとソフィアの魔力装甲を抉ったが、ついには貫けずに彼は一度後退した。
「大丈夫か、リンクス?」
「大丈夫。でも、相手は……強い……!」
ヨアニスは強い。
リウィアと同じくらい強いかもしれない。
だけど、あまり彼らを相手に時間を割けない。
「師匠。先に敵の指揮官を落とす。それから目標を攻撃して、逃げよう」
「ああ。分かった。そうしよう」
私は狙いをヨアニスひとりに定め、赤い刃を握りなおす。
彼を撃ち破れば、あとはどうにかなる。
楽観的な憶測にすぎないけど、そんな気がしていた。
「行くぞ、アンドロポリスの災厄──!」
ヨアニスは剣を構えて私たちに突撃してくる。
チャンスだ。
私は
彼が魔力装甲を解き、斬りかかればそれを発動させ、吹き飛ばす……!
そう考えてヨアニスが私に肉薄するのを私は待ち構える。
「はあっ!」
そしてヨアニスが刃を振るったと同時に起爆。
爆発が彼を包み、仕留めたと私は思った。
しかし──。
「それはすでに報告を受けている! 私には通用せん!」
爆炎の中から魔力装甲に守られたヨアニスが現れて、刃を振るった。
魔力を帯びた軍刀がソフィアの魔力装甲をついに貫き、刃が私の眼前に迫る。
「くうっ!」
私はそれを真っ赤な剣で受け止め、何とか防ぎ切った。
だが、手札が次々に失われてゆくのに私は焦り始めていた。
爆轟魔法は使えず、魔力の矢と
ならば、どうやれば……!?
「リンクス。よく聞け」
そこでソフィアが告げる。
「相手の攻撃と防御の切り替えは恐ろしく早い。だが、白兵戦を挑んだということは遠隔攻撃は不得手と言うことだ。ならば、相手の間合いで戦うな。自分の得意な間合いに引き寄せるんだ」
「……爆轟魔法、何とか使えれば……」
「なら、高度だ。高度を取るんだ。相手は追ってくるはずだ。そうなれば地上の市街地からは距離が生じる」
「そうか。分かった、師匠!」
私はソフィアの助言を受けて、一気に高度を引き上げ始めた。
「逃げるか、卑怯者!」
そして地上の方を見るとヨアニスが私たちを追ってくる。
憎しみの籠った目を私に向け、猛追してくるヨアニス。
地上との距離がどんどんと開け、私たちは呼吸するのがやっとの高度まで到達。
「……やれるな?」
「ええ」
私は地上から迫るヨアニスを狙う。
「えい」
そして、今日二度目の爆轟魔法が放たれた。
手加減抜きの、本気の威力の爆轟魔法。
「何だ……これは……!? こんなことがあり得るとでもいうのか……──!」
ヨアニスがそう叫ぶのが最後に聞こえ、彼の身体は爆轟魔法の直撃を受けた。
彼は魔力装甲ごと炎と衝撃波に飲み込まれ、魔力装甲が決壊してくのが見えた。
彼の身体は炎の中に消え、再び現れることもなかった。
「やった……!」
私は勝った。
強敵であったヨアニスに勝ったんだ。
だが、その僅かな勝利が油断を生んだ。
「リンクスッ!」
ソフィアが叫ぶのが聞こえたと同時に魔力装甲が貫かれる甲高い音がした。
彼女が咄嗟に私に覆いかぶさるのが見え、それから私の頬に温かい何かが滴った。
「え……?」
ソフィアの血だ。
ソフィアが血を流していて、それで──。
考える暇も与えられず魔力装甲にさらに衝撃が走り、私はソフィアを必死に抱きかかえるも衝撃によって姿勢を崩す。
「悪く思うなよ」
そう男の言葉が聞こえたのちに、私の全身に衝撃が走り、私は意識を失った。
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