TS魔法使いさんは師匠のために今日も戦う   作:第616特別情報大隊

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南方に向かって//夜襲

……………………

 

 ──南方に向かって//夜襲

 

 

 私たちはミュロンの合図で一斉に飛行魔法で飛び、集落を目指す。

 未だに黒い太陽の軍旗が掲げられているそこに向けて私たちは接近。

 集落には神々の神殿の付近を中心に、鎧で武装した兵士たちがいる。

 黒い太陽の紋章が描かれた鎧を着た兵士たちだ。

 そして敵の魔法使いは……未だ見えない。

 

「武装している人間に対してのみ攻撃を許可する。やれ!」

 

 ミュロンが攻撃命令を下し、四方から迫った魔法使いたちが攻撃を開始。

 

「えい!」

 

 私も民家の付近にいた兵士たちに向けて魔力の矢を叩き込む。

 魔力の矢は大口径ライフル弾が命中したように人体を粉砕する。

 しかし、金属の鎧を纏っていたそれを貫通した際には大きな音を立てた。

 

「敵襲、敵襲!」

 

 三月教徒たちは攻撃に気づき、警報を鳴らす。

 

「ここからは時間との勝負だ。可能な限り速やかに集落を制圧するぞ」

 

「了解」

 

 ミュロンが命じ、私は頷く。

 私たちは私が攻撃を受け持ち、ミュロンが防御を受け持って集落を制圧していった。

 私は武装している兵士たちに向けて次々に魔力の矢を叩き込み、兵士たちの抵抗を粉砕していく。

 

「撃て、撃て!」

 

 地上から弓矢が射かけられるが、それはミュロンの魔力装甲が弾く。

 幸い、敵は弓矢以上の遠距離火力を有しておらず、大した問題はない。

 そう思われた。

 

「地上から魔力の矢だ! 友軍ではない……!」

 

 ミュロンが警告を発し、私とミュロンは回避行動を取る。

 それからすぐに魔力の矢が私たちに飛来した。

 地上から放たれた魔力の矢は私たちを掠めて飛び去り、地上で青白い光が再び瞬く。

 

「クソが。やはり敵にも魔法使いがいたか。やつらを叩くぞ。続け、リンクス!」

 

「了解!」

 

 ミュロンは悪態を吐き、それから青白い光の光源に向けて加速する。

 地上から複数の魔力の矢が飛来し、それらがミュロンの魔力装甲を掠める。

 それでも私たちは加速を続け、敵魔法使いへの接近を目指す。

 

「見えた……!」

 

 敵魔法使いは屋内から射撃している。

 石造りの民家の窓から青白い光が瞬いているのを私は視認した。

 

「ミュロン隊長! 撃っていい!?」

 

「室内に民間人がいるかもしれない。用心して撃て!」

 

「分かった!」

 

 私はミュロンの許可を得て、小規模な魔力の矢を形成して民家の窓に叩き込む。

 しかし、攻撃は敵の魔力装甲によって阻まれてしまった。

 青緑色の魔力装甲が、私たちの攻撃を遮断している。

 

「畜生。リンクス、お前は白兵戦ができたな?」

 

「うん。一応は」

 

「なら、肉薄して仕留めるぞ。民間人の有無が分からない以上、民家ごと吹き飛ばすわけにはいかない」

 

「そうだね。いつでもいけるよ」

 

「よろしい。やるぞ……!」

 

 私はミュロンとともに加速し、民家に向けて肉薄する。

 窓にいる敵の姿がはっきりと見えてきた。

 それは赤いローブ姿の老齢の男性で、この砂漠で暮らして長いのかよく焼けた肌をしている。

 そんな男性は私たちが肉薄してきたのに明らかに動揺していた。

 

「はあっ!」

 

 私は魔法で赤い刃を形成し、それで男性を貫く。

 男性はげほげぼと気泡の混じった血を口から漏らし、床に倒れた。

 

「よし。まずはひとりだ。次を狙うぞ」

 

 ミュロンはそう言い、別の場所から魔力の矢を形成している魔法使いたちを探す。

 青白い魔力の矢を形成する光はまだひとつの場所で瞬いている。

 友軍ではないそれに向けて、私たちは加速する。

 

「来たぞ、敵だ!」

 

「『唯一なる我らの神よ! 我らが敵を討つ力を──!』」

 

 矢を射かけてくる兵士の隣で赤いローブの魔法使いが詠唱する。

 しかし、その詠唱は私が知っている詠唱とは異なっていた。

 それでも魔法は発動し、魔力の矢が私たちに迫る。

 

「その程度!」

 

 ミュロンは自らの魔力装甲でそれを弾き、私たちは敵に迫る。

 

「えい!」

 

 それから周辺に民間人や捕虜がいないのを確認して、私は魔力の矢を放つ。

 魔力の矢は敵を貫き、ばらばらに引き裂いた。

 

「……練度は大したことはなかったな。しかし、あの詠唱は……」

 

 ミュロンもさっきの詠唱が気がかりらしい。

 私たちの詠唱とは異なるが、発動した魔法。

 三月教徒たちは独自の魔法体系を有しているのだろうか……?

 

「ミュロン隊長! 敵の掃討が完了しました!」

 

「よろしい。集落を捜索して、俺たちの仲間を探す。もし、生きている敵がいたら捕虜にして尋問しろ」

 

「了解」

 

 部下が報告するのにミュロンがさらに指示を出す。

 それから私たちは連れいかれた可能性のある仲間たちを、ソフィアたちを探した。

 

「これは……」

 

 その中で私たちは異常かつ陰惨な光景を見つけた。

 

 それは殺されただろう村人の死体の山だ。

 掘られた穴に放り込まれた数多の村人の死体。

 死んでからさほど時間は経っていないだろうが、すでに濃い死臭がする死体である。

 それを前にして私たちは言葉を失う。

 

「外道どもめ……」

 

 ミュロンはそう呟き、私は焦った。

 もしかしたら、ソフィアもすでに……。

 

「ミュロン隊長! こっちへ! 生存者です!」

 

 そこで捜索を続けていたミュロンの部下が報告する。

 私たちは大急ぎでそちらへと向かう。

 生存者が発見されたのは、集落の中心部にある神々の神殿だった。

 私はソフィアがそこで見つかったと祈って駆ける。

 

 神々の神殿は神々を形どった石像が全て破壊され、あたかも強盗に入られたかのように荒らされていた。

 破壊された石像は首がなかったり、腕がへし折られたり、悲惨だ。

 そんな光景が広がるのは不気味な雰囲気であった。

 

「生存者は?」

 

「こっちです」

 

 そんな中でもミュロンは冷静にしていた。

 

「ミュロン隊長……」

 

 生存者はミュロンの部下のひとりであり、その白いローブには黒い血痕が滲み、身体には拷問された形跡があった。

 

「もう安心しろ。助けに来たぞ」

 

 ミュロンは優しげにそう言い、部下を落ち着かせる。

 

「他にここに囚われた捕虜はいたか?」

 

「はい……。私以外にも3名……」

 

「そいつらは今はどこに?」

 

「連れていかれました……。人質にして身代金を要求すると……」

 

 肩で息をしながら、部下はミュロンに告げる。

 私はその様子を心配しながらも不安を抑えきれずに尋ねた。

 

「ソフィアは? ソフィアはここにいた?」

 

「ああ……。右足を悪くしている魔法使いか……。彼女も連れていかれた……」

 

 ソフィアも捕虜になっている。

 だが、死んではいない。

 それだけで私の中に希望が溢れてきた。

 

「お前は後方に下がって休め。我々はこれから連れ去られた捕虜を追う」

 

「はい、隊長……」

 

 ミュロンは捕虜になっていた部下にそう言い、彼の部下たちが彼を抱えて安全な港湾都市まで連れていく。

 

「身代金を要求する、か。それならば殺すことはないだろう……」

 

 ミュロンはそう呟く。

 

「ミュロン隊長。捕虜が3名ほど生きています。どうしますか?」

 

「尋問する。容赦はするな。敵は我々の同胞を拷問している。思い知らせてやれ」

 

「了解」

 

 それから私たちは捕虜にした三月教徒を神々の神殿に連行した。

 彼らは武装解除され、ほぼ半裸の状態で縛られて神殿の床に放り出される。

 彼らを見るミュロンに部下たちの目は殺意が籠っていた。

 

「お前たちは我々の仲間を攫い、どこかに連れ去ったそうだな。どこだ?」

 

「クソくらえだ。異教徒め!」

 

 ミュロンが問うのに唾を吐く三月教徒のひとり。

 それに対してミュロンは忌々しいという表情を浮かべ、それから私の方を向いた。

 

「リンクス。お前は出ていろ。これから少しばかり荒っぽくなる。子供には向かん」

 

「……分かった」

 

 ミュロンの言葉に私は頷いた。

 彼はこれからこの三月教徒たちを拷問するつもりなのだろう。

 私はソフィアがどこに連れ去られたか知りたかったが、拷問には協力できない。

 

 私が神々の神殿を出ると、中から悲鳴が聞こえてきた。

 彼らが痛めつけられているのを知っていたが、不思議と同情はしない。

 彼らはソフィアを傷つけたかもしれないのだから。

 

 私はソフィアの無事だけをただひたすらに祈った……。

 

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